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第62話

遠くでマヤが叫んだ。


「その言葉、全然安心できない!」


エリンも苛立たしげに叫んだ。


「早くして!」


リリアは歯を食いしばった。


そして本当に、レオンの背中を踏んで跳び上がった。


「ぐえっ。」


レオンは人間らしい呻きを漏らした。


だが高さは出た。


リリアは金庫扉の枠をつかみ、反対の手で装飾用の槍を振るった。


バキッ。


黒い紋様にひびが入った。


もう一度。


バキィッ。


紋様が完全に砕けた。


瞬間、金庫扉の隙間から漏れていた黒いものが、悲鳴を上げるように収縮した。


応接室の中の蝋燭がいくつか同時に消えたり灯ったりした。


マルセラの眼差しが初めて大きく揺れた。


「な……?」


エリンが歯を剥いた。


「よし。」


「これで呪いの接続を一本切った!」


セラがその隙を逃すはずがなかった。


彼女はマルセラへ一直線に入った。


今度は両脇から駆け込んだ警備兵ふたりと短剣兵ひとりがセラの前に割り込んだが、リナが正面からひとりをつかまえて押さえ込み、マヤの矢がもうひとりの肩を貫いた。


「あなたたち、さっきから本当に気に入らない!」


リナの鈍器が警備兵の剣とぶつかった。


いや、ぶつかったというより、ただ押し潰した。


警備兵の足が絨毯をこすった。


マヤの矢がその隣の短剣兵の肩に突き刺さった。


「それに、うるさい。」


敵三人の呼吸が絡まる間に、セラはもうマルセラの前にいた。


マルセラは退かなかった。


彼女はドレスの裾の中から、とても細い短剣を取り出した。


優雅だった。


そして凄絶だった。


人を刺すために飾られた小さな芸術品のようだった。


セラが低く言った。


「終わりだ。」


マルセラも低く答えた。


「終わるのは、いつも弱いほうです。」


短剣と剣がぶつかった。


短い衝突。


マルセラは戦いそのものでは、セラよりはるかに下だった。


だが完全に弱いわけではなかった。


彼女はセラに勝とうとしたのではなく、ただ一度の隙を作ろうとしていた。


言葉を交わし、視線を揺らし、リリアのほうへ目を投げてセラの集中を分けるような戦い方。


しかしセラはそういう種類を嫌った。


だから、さらに斬った。


一つ目は短剣を持つ手首。


弾いた。


二つ目はドレスの裾の下に隠していた二本目の鞘紐。


断った。


三つ目は首ではなく、肩をかすめながら暖炉のほうへ押し込む角度。


マルセラの背が暖炉の装飾石にぶつかった。


短剣が手から落ちた。


セラは剣先を彼女の喉元のすぐ下で止めた。


同時に、灰色マントの男も完全には退けなかった。


応接室の右手へ回り込んで抜けようとした彼の道をリナが鈍器で塞ぎ、マヤの矢の一本が袖を壁に縫いとめるようにかすめた。


奴は結局、半歩退いたまま歯噛みするしかなかった。


その短い静寂が応接室全体を止めた。


レオンはその瞬間、はっきり見た。


マルセラは捕まった。


金庫の汚染は核をひとつ断たれた。


リリアは逃げる顔ではなかった。


なら、残るのはひとつだ。


本当にろくでもない奴がひとり。


応接室の交戦はまだ終わっていない。


廊下の足音は雨音とは違った。


雨音は降り注ぎながら広がる。


足音は一点へ向かって集まる。


とくに武装した人間たちの足音はなおさらだった。


石床を打つ規則的な衝撃が廊下の壁を伝って応接室へ押し寄せるたび、部屋の空気が一枚ずつさらに張り詰めた。


誰が来ているのかより、どれほど速く来ているのかが先に肌に触れた。


レオンは灰色マントの男と向き合ったまま、ごく短く息を整えた。


よし。


ここからはもっと単純だ。


マルセラはセラが押さえた。


金庫はリリアと辺境伯、エリンが押さえた。


なら、自分の分はひとつだ。


目の前に立つ、ろくでもない奴がひとり。


灰色マントの男もそれを知っていた。


彼はもう笑っていなかった。


口元から笑みが消えた顔は、意外なほど平凡だった。


だからこそ、なおさら気分が悪かった。


悪党らしい大げささもなく人を斬り、人を押しのけ、人を費用として扱う顔。


街のごろつきより質が悪いのは、いつもこういうほうだ。


彼の声が低く落ちた。


「道を開けろ。」


「そうすれば、お前の肋骨は今日はこれ以上折らずにいてやる。」


レオンはにっこり笑った。


「本当に素晴らしい交渉案ですね。」


「ただ、もう少し痛いので感動が薄いです。」


「最後まで口だけは達者な奴だな。」


【『取るに足らない』判定を感知】


【補正上昇】


よし。


本当に律儀だな。


灰色マントの男が先に低く構えた。


灰色の裾が床の近くで低く揺れた。


正面から押すタイプではなかった。


右足が半寸外へ開き、切っ先は胸ではなく肩と首の間の中途半端な高さに留まる。


突くより誘導。


斬るより崩し。


レオンのようなタイプを一番苛立たせる種類だった。


ああいう奴はうまい。


そして、うまいぶん卑怯だ。


セラがマルセラの喉元に剣を向けたまま、短く言った。


「レオン。」


「はい。」


「死ぬな。」


レオンは少し目を瞬かせた。


そして笑った。


「できる方向で努力します。」


灰色マントの男が床を蹴った。


最初の刃は速くなかった。


代わりに正確だった。


レオンの視線が追いやすい程度には見せ、体が反応してから本当の方向を変える。


刃が半円のように流れ、急に内側へ潜り込んだ。


レオンは避けようとして、わざと一拍遅らせた。


肋骨がうずいた。


肩が引きつった。


そのせいで動きがぎこちなくなった。


だが今は、それがむしろ必要だった。

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