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第56話

「十分だ」


エリンはすでに運搬台の封印をもう一層巻いていた。


リリアは迷ったが、結局両手で箱の表面をもう一度押さえた。


まるで直接頼むかのように。


彼女の兎耳が、とてもゆっくり下がった。


レオンはその姿を見ながら、ごく小さく言った。


「すぐ戻ります」


リリアが顔を上げた。


レオンはにっと笑った。


「今回は名前がかかっていますから」


それは冗談のようだったが、軽く聞こえるだけではなかった。


辺境伯がレオンを一度見た。


その眼差しには、さっきよりはるかに少ない混乱と、少しだけ多い評価があった。


まだ完全に信頼しているわけではないが、少なくともこの奇妙な青年が決定的な瞬間ごとに自分の体を投げ出すという事実は認めた顔。


いい。


その程度で十分だった。


なぜなら次の瞬間から、彼らはまた走らなければならなかったから。


貯蔵庫の奥の秘密床が開き、箱が隠され、ブリダとヘレナがその前を守る準備をする間、セラとマヤ、リナ、エリン、レオン、辺境伯、リリアは西の応接室へ通じる多用途通路のほうへ体を向けた。


通路は低く狭かった。


厨房の暖炉の熱がかすかに染み込んでいて地下より少し暖かかったが、その温度はかえって嵐の前の厨房のようだった。


刃物と鍋とスープの匂いが生きている空間のすぐ横を、血と裏切りと刃先が通っていく。


レオンは走り出す直前、後ろを一度振り返った。


塩袋とワイン箱の間に、隠されていく箱の最後の黒い輪郭。


そしてその前に立つブリダとヘレナの後ろ姿。


その光景は美しくなかった。


それでも長く残りそうだった。


誰かは後ろに残って守り、誰かは前へ進んで奪われた名前を取り戻す。


物語というものは、いつも前だけで輝くわけではない。


ときには後ろに残った人の背中のほうが眩しい。


セラが前で低く言った。


「行く」


そしてその短い一言とともに、彼らは城のさらに奥へ走り始めた。


西の応接室。


貴賓室裏の秘密金庫。


そしてマルセラ。


次に向き合う顔は、おそらく本当にこの家を内側から蝕んできた中心だろう。


多用途通路は、城の外見に比べてあまりにもみすぼらしかった。


貴族の住む城というものは、普通、外から見ると一篇の虚勢のようだ。


高い塔、波のように曲がった屋根、陽光をつかまえておく窓、旗、広い階段、大理石、庭園。


だがその華やかな外殻の内側をめくると、いつもこういう道が出てくる。


使用人たちが身を屈めて通っていた低い廊下。


暖炉の熱が染み込んで暖かいが、その代わり煤と油の匂いが染みついた壁。


華やかな広間と応接室を支えるため、毎日物資と皿と炭と疲労を運んだであろう隠れた通路。


今レオンたちが走っている道が、まさにそれだった。


天井は低かった。


大人の男が少し腰をかがめなければならないほど。


壁は狭かった。


リナが鈍器を肩に担いで通るたび、何度も石壁にぶつけないよう気をつけなければならないほど。


床には古い車輪の跡と油染みが幾重にも残っており、ところどころに小麦粉の埃が薄い雪のように積もっていた。


換気窓はほとんどなかった。


代わりに上階の音がかすかに降りてきた。


足音、遠くで響く怒号、どこかで割れるガラス、そして時折混じる短い悲鳴。


城全体が今、一枚の薄い板の上できしんでいるという証拠だった。


ヘレナは後ろに残った。


ブリダとともに箱を守るために。


その事実が後頭部にずっと引っかかっていた。


だが、誰も長く後ろを振り返りはしなかった。


今は前へ向かって走るしかなかった。


セラが先頭で、通路の曲がり角を見渡した。


マヤは半歩後ろで、少し顔を上げて換気窓と天井の隙間を探った。


辺境伯はリリアとほぼ並んで歩いており、エリンは二人の少し後ろで魔力の流れと人の気配を同時に読んでいた。


リナは最後尾で後方を見ながらも、いつでも前へぶつかっていけるよう重心を低くした。


レオンはその間の中途半端な位置で息を整えた。


肋骨が痛かった。


脇腹もうずいた。


袖口の浅く切れた傷もひりついた。


それなのに不思議と、今はそのすべての痛みが一本の線で結ばれていた。


生きている。


動いている。


だから、まだできる。


その程度の感覚。


彼は走りながら、ごく小さくつぶやいた。


「いいですね」


マヤが横ですぐに受けた。


「今度はまた何が」


レオンは息を整えながら、にっと笑った。


「これで目的地がとてもはっきりしていますから」


エリンが冷たく付け加えた。


「そういうときほど、普通は途中がもっと汚いのよ」


「はい」


「それはもう十分に体験中です」


辺境伯が前を見ながら低く言った。


「西の応接室の前には、本来なら装飾廊下がある。広く、明るく、潜り込みにくい。だが使用人用のこの道は、応接室裏の暖炉管理室につながっている。そこから中をうかがえる」


リリアが尋ねた。


「マルセラは本当にそこにいるのでしょうか」


彼女の声には、怒りよりも、まだ理解できない側の揺れがあった。


無理もなかった。


侍女長は、ただ仕事を管理する人間ではない。


毎日目を合わせ、襟元を整え、予定と手紙を管理し、家の中の体温を最も近くで読む立場だ。


そんな者が背を向けたという事実は、刃より遅れて痛み、その代わりずっと深く入ってくる。


辺境伯が短く答えた。


「いる可能性が高い」


「なぜですか」

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