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第54話

三人目の腰を鞘で押した。


入ってくる方向と入ってくる人数が、かえって毒になった。


三人は互いにぶつかり合い、右の廊下側へ流された。


セラが叫んだ。


「今」


リナが笑った。


本当に、とても楽しそうに見えた。


彼女は石床を蹴って走り出し、排水室右側のアーチ柱の横の壁へ向かって鈍器を叩きつけた。


どがん!


最初の一撃で石粉が雨のように降った。


アーチは大きく鳴った。


外の敵たちが狼狽した怒号を上げた。


エリンがすぐに氷で、その亀裂の隙間へ冷たい圧力を押し込んだ。


石は冷たく収縮した。


セラが二度目に、今度は剣ではなく踵で同じ場所を蹴った。


そしてリナの二度目の打撃。


めきめきっ。


石が割れた。


廊下の天井が片側へ傾いた。


外の敵の目が見開かれた。


「下がれ!」


遅すぎた。


崩れるものは、いつも警告より速い。


石と水垢と古い土くれが一斉に落ちてきた。


鉄扉の外の廊下の半分が、そのまま陥没した。


悲鳴とともに黒いマントの二人が石の山の下敷きになり、後ろにいた者たちも慌てて退きながら足をもつれさせた。


排水室の入口は完全にはふさがらなかったが、今では人ひとりがかろうじて這い込める程度の隙間しか残っていなかった。


石粉が散った。


マヤが咳をこらえて笑った。


「いいね」


「会話が減りそう」


ヘレナもごく短く息を吐いた。


「数分は稼げました」


セラはすぐに振り返った。


「移動」


もう本当に、ためらう余裕はなかった。


排水室の半ば開いた鉄扉の内側、厨房の貯蔵庫へ続くという通路には、上へ伸びる狭い階段があった。


空気の匂いも少し違った。


地下水の匂いの間に、かすかに小麦粉と燻製肉、乾いたハーブの匂いが混じっていた。


人が食べて暮らす空間へ続く道の匂いだった。


そういう匂いは、いつも少しだけ人を安心させる。


すぐ上で誰かが首を狙っているかもしれなくても、だ。


ヘレナが先頭を務めると申し出た。


「厨房の貯蔵庫の構造は、私のほうがよく知っています」


セラがうなずいた。


「私がすぐ後ろ」


辺境伯が短く言った。


「厨房側の人間で、まだ信用できるのは四人」


「総料理長、補助二人、それに倉庫番ひとりだ」


「だが顔を確認するまでは全員を警戒しろ」


レオンは小さくつぶやいた。


「料理長まで疑わなければならないのですね。食事というものは本当に遠い」


リリアが運搬台の横で答えた。


「……終わったら、私が温かいスープを差し上げます」


レオンは少しの間、動きを止めた。


こんな状況でそんな約束が出てくるというのは、人がまだ完全には壊れていないという意味だ。


彼は笑った。


「いいですね」


「では、必ず生きる理由がひとつ増えました」


エリンが冷たく割り込んだ。


「あなたの理由は、もともと十分多いわ」


それはぶっきらぼうだったが、どこか柔らかかった。


彼らは階段を上った。


狭く、湿って、曲がった階段。


エリンの光が壁に揺れるたび、曲線の階段の影は、まるで誰かの喉の奥のようにうねった。


上の扉の隙間からは、かすかな橙色の光が漏れていた。


地上の灯りだ。


おそらく厨房側のランプだろう。


その扉の前に着いたとき、ヘレナは手を上げて全員を止めた。


彼女は扉に耳を当てた。


一瞬。


そしてごく小さく囁いた。


「人が二人」


「ひとりは泣いていて、ひとりはなだめている」


リナは少しの間、口だけを開けた。


「今?」


ヘレナがうなずいた。


「恐怖に怯えた使用人なら、むしろ正常だ」


セラが扉の取っ手を握った。


「開ける」


扉は上へ押し上げる形式だった。


ほんの少し開けると、小麦粉の匂いと玉ねぎ、乾いた月桂樹の葉、冷めた油の匂いが下へ流れ込んだ。


馴染みのある厨房の匂いだった。


だがその匂いの上に薄く重なった血なまぐささと不安の体温が、今、上が決して平穏ではないと告げていた。


ヘレナが先に上がり、セラが後に続いた。


すぐに短く息を呑む音がした。


「閣下?」


女の声だった。


年上のほう。


そしてすぐに、嗚咽をこらえきれず漏らす若い女の声。


「本当に……」


「ご無事で……」


レオンと残りも順に上へ上がった。


厨房の貯蔵庫は思ったより広かった。


小麦粉の袋と干し肉、丸ごとの玉ねぎ、ハーブの束、塩袋、ワイン瓶の箱が幾重にも積まれていた。


そしてその間に、厨房のエプロンの上から急いで革のベストを羽織った中年の女ひとりと、若い使用人二人が隠れていた。


中年の女はリリアと辺境伯を見るなり、目元を一気に赤くした。


だがすぐに泣くより先に、手の甲で目元を荒く拭った。


「総料理長のブリダです」


彼女がセラたちへ向けて、非常に慌ただしく腰を折った。


「説明は短くします」


「上はすでに半分ほど落ちており、南の回廊と文書庫の側は敵が掌握しています」


「ただし西の厨房階段と宴会準備室の廊下は、まだこちら側が息をつけます」


辺境伯が短く尋ねた。


「裏切り者は」


ブリダが歯を食いしばった。


「会計官は確実です」


「それから……」


彼女は少しだけためらった。


リリアが先に尋ねた。


「それから誰ですか」


ブリダは結局、答えた。


「奥方様の侍女長、マルセラが灰色眼球会につきました」


リリアの顔が強張った。


マルセラ。


名前が落ちた瞬間、空気の温度が変わった。


単なる家臣や会計官ではなく、家の内側の空気と人々の暮らしと秘密を、最も近くで扱う者。

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