第53話
レオンは反射的に動いた。
右へ動こうとして、また濡れた床を踏み、少し滑った。
だがその滑りのおかげで、外から突き込まれた短剣は彼の耳元をかすめて通り過ぎた。
【転倒判定】
【反応遅延がかえって回避へ転換】
レオンは、ほとんど悔しくて笑いが出た。
「本当に、今や私の日常が私を嘲笑していますね!」
それでも床に転がり落ちていた敵の槍をひっつかみ、鉄扉の下へ差し込んだ。
棒のように。
てこのように。
完全に閉めることはできなくても、さらに大きく開くのを遅らせることはできる。
セラがそれを見て短く言った。
「いい」
その二文字が、不思議と力になった。
リナはすでに扉の横に張りついていた。
入ってくる敵が滑って内側へ半歩でも足を踏み入れた瞬間、鈍器の柄の先や肩からの体当たりで、すぐに顎や腹部を打った。
狭い空間用のリナだった。
爽快さは減ったが、効率は上がった。
ヘレナの動きもよかった。
彼女はクロスボウを一度撃つと、すぐに短剣へ持ち替えた。
排水室の扉枠の横、ちょうど一歩横で待ち、内側へ腕を入れる者の手首だけを斬った。
手の甲だけを打った。
剣を落とさせた。
無駄な過激さはなかった。
長く持ちこたえてきた警備隊長の動きだった。
辺境伯も結局、剣を持って立った。
状態はよくなかった。
片脇腹から血がにじんでおり、息も長く続かなかった。
それでも彼は自分の体を壁にもたせたまま、扉から斜めに入ってくる剣先をひとつ弾いた。
動作は重く古びていたが、かえってそのために重みがあった。
かつて間違いなく剣を持って生きた者の線。
リリアは運搬台の前で手を震わせていた。
だが震えているだけではなかった。
誰が入ってきても、あるいは誰が倒れても、運搬台が滑らないよう取っ手を握り直していた。
箱の表面の赤い線は、断続的に暗く脈打った。
戦いと血の匂いに、ごく弱く反応していた。
リリアはそのたびに歯を食いしばり、手のひらをさらに強く押しつけた。
その姿が、不思議なほどにしっかりして見えた。
マヤが矢をもう一本放ちながら叫んだ。
「レオン!」
「下!」
下。
その一言で、レオンは床を見た。
鉄扉の下の隙間から、鉤のついた短い鉄鎖が一本滑り込んできていた。
床を這って。
実に巧妙に。
人の脚か、運搬台の脚を狙う角度だった。
彼は本能的に足を引こうとした。
だが、すでに遅かった。
鉄の鉤が足首の近くに触れた。
「ああっ」
レオンはほとんど反射的に体を縮め、その反動でまた転んだ。
今度は背中から床に打ちつけられた。
痛かった。
ものすごく。
だがそのおかげで、鉄の鉤は足首ではなくブーツの先だけを掠めて通った。
【転倒判定】
【捕縛失敗を誘導】
レオンは本気で叫んだ。
「これはもう祝福ではなく嫌がらせです!」
それでも両手で鉄鎖をつかんで引いた。
外の誰かも引いていた。
一瞬、鎖がぴんと張った。
レオンは歯を食いしばって耐えた。
もちろん力では押し負けた。
だが彼がよりによって床に背をつけていたため、足は排水室の壁にぴたりと引っかかった。
押されても完全には引きずり出されない角度。
その間にリナが気づいて走ってきた。
「放して!」
鈍器の柄が鉄鎖を打ち下ろした。
ぎん。
マヤの矢がすぐ後を追い、同じ鎖の扉の外側を射た。
鎖が一瞬ねじれた。
エリンが氷でそのよじれた部分をそのまま凍らせて固めた。
鉄鎖が扉枠の間に食い込んだ。
外で引いていた敵が、一瞬力の入れ方を誤った。
かえって自分の腕がねじれる音が聞こえた。
悲鳴。
レオンは床に仰向けのまま息を荒げ、それから言った。
「いいでしょう」
「今回は私が囮ではなく栓だったわけですね」
エリンが苛立たしげに返した。
「黙って起きなさい」
「それは少し難しいですが、努力します」
しかしその何度かの攻防の末、はっきりしたことがあった。
この入口は長く持たない。
敵もそれを知っており、こちらも知っている。
数で押し続けられれば、結局鉄扉は引き剥がされ、その瞬間、排水室全体が乱戦になる。
そうなれば運搬台を守ることも、辺境伯を連れて動くことも、厨房の貯蔵庫へ抜けることも、すべて難しくなる。
セラはそれを誰より早く結論づけた。
彼女が短く言った。
「切って行く」
マヤがすぐに理解した。
「入口を捨てる?」
「いや」
「崩す」
ヘレナが目を細めた。
「鉄扉の外の廊下ですか」
辺境伯がごく短く息をのんだ。
「排水室右側のアーチ」
エリンが顔を上げた。
「崩せるの?」
辺境伯が壁の古い亀裂を指した。
「あそこだ」
「昔、水路を変えたときに弱くなった場所だ」
「強い衝撃が二度あれば割れる」
リナがとても明るく言った。
「いいね」
「それ、私の担当でしょ?」
セラがうなずいた。
「私が開ける。お前が打つ」
ごく短い作戦だった。
しかし十分だった。
セラは扉枠の正面へもう一歩出た。
外から押し込んでくる敵が、彼女を見て歯をむいた。
隙間さえ広がれば水路の廊下まで押し込むつもりだと、顔に書いてあった。
その瞬間、セラが剣をひねった。
鉄扉の下に差し込んでいた槍の柄が折れ、扉が半拍ぶんさらに開いた。
敵三人が同時に、あふれるように入ってきた。
まさにそれを待っていたように、セラが身を低くした。
最初の奴の膝裏を打った。
二人目の足首を引っかけた。




