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第52話

マヤが弓弦を引いた。


セラは剣を低く構えた。


リナは鈍器を握り直し、膝を曲げた。


ヘレナはクロスボウを構えた。


リリアは運搬台の前にぴたりと張りついた。


辺境伯はよろめきながらも短剣を一本受け取った。


そしてレオンは、扉のすぐ横にある低い石の縁に足を乗せた。


濡れている。


滑る。


よくない。


なのに不思議と、今ではこんな状況で心臓がかえってはっきりするようになった。


怖い。


それでも行く。


怖いものを怖いと言ったままでも、次の一マスへ足を踏み出せるのだと、彼はもう知っている。


鉄扉が最後に鳴った。


ぎしり。


錆びた鉄が悲鳴を上げた。


隙間が開いた。


そしてその隙間から、黒いマントと槍先と獣のような息が、一斉に押し込まれ始めた。


レオンの目の前に文言が浮かんだ。


【狭い入口での防衛戦開始】


【地形条件:よくありません】


【味方状態:疲労蓄積】


【敵状態:数で押し切る予定】


【個人感想:はい、また私の番ですね】


レオンは声もなく笑った。


「はい」


「わかっています」


そして排水室の闇は、再び人々の息と金属音と悲鳴の熱で煮え立ち始めた。


鉄扉が開いていく音は、墓が歯ぎしりしながら口を開ける音に似ていた。


ぎしり、と裂けた隙間から最初に入ってきたのは、人の顔ではなかった。


槍先だった。


錆びた鉄の匂いと濡れた革の匂いをまとったまま、あまりに急で、あまりにまっすぐな殺意が先に排水室へ突き込まれた。


その後ろから、黒いマント、荒い息、濡れた軍靴の底が押し寄せてきた。


狭い入口ひとつに人の数が多いほど、かえって刃になることがある。


今のあの鉄扉が、まさにそうだった。


そしてその刃の先端の正面に、レオンがいた。


彼は扉の横の石の縁に足を乗せたまま、自分の判断より先に体が強張るのを感じた。


怖い。


当然だった。


あんな狭い隙間から刃物が一斉に飛び出してくるのに怖くないなら、それは勇敢なのではなく無知だ。


だから今の彼は知っている。


怖いままでも体は動かせる。


だからレオンはまず、扉ではなく床を見た。


濡れた氷。


エリンが薄く敷いておいた冷たい膜。


隙間から入ってくる敵は、まだそれを見ていない。


彼は短く息を吸い込んだ。


「いいでしょう」


リナが後ろから叫んだ。


「今度は何が!」


「私にもわかりませんが、とりあえず行きます!」


最初の敵が槍を突き出した。


レオンはそれを避けようと体をひねった。


体はひねったが、濡れた石で足が先に滑った。


「あ」


体が横へ低く落ちた。


槍先は彼の肋骨の上の空を裂いて通り過ぎた。


【転倒判定】


【初動突撃の回避成功】


レオンは怒る暇もほとんどなく、滑った姿勢のまま敵の脛を蹴り払った。


自分の力で強く蹴ったわけではなかった。


氷の上での滑りが、脚を連れていった結果だった。


だがそのぎこちない脚が、よりによって敵の足首の後ろを正確に払った。


男の均衡が崩れた。


そしてその瞬間、エリンの氷が役目を果たした。


敵は踏ん張れず、そのまま排水室の内側へ滑り込んできた。


後ろから押し込んできた二人目と絡まった。


三人目はその二人の背に槍を突き立てそうになり、慌てて手をひねった。


一瞬で入口が三人の体でふさがった。


レオンが叫んだ。


「今です!」


リナはその言葉が落ちる前から動いていた。


彼女は鈍器を大きく振り回さなかった。


その必要もなかった。


狭い入口で重なった三つの体は、すでにひとつの標的だった。


どん。


鈍器ではなく、扉を閉めるような音がした。


前で滑った敵二人は、そのまま鉄の扉枠に叩きつけられた。


後ろの三人目はその反動で、顔から扉の柱に出会った。


ヘレナのクロスボウがその隙間を飛び、最奥の男の肩を貫いた。


マヤはそれより高い角度を狙った。


鉄扉の上側に開いた隙間の向こう、外側からちょうど身を屈めて入ろうとしていた敵の手首に矢が刺さった。


「並んで」


マヤが笑いのない声で言った。


「ひとりずつ当たって」


セラはさらに短かった。


彼女の剣は最初に滑った男の槍の柄を斬り、戻る剣先はそのまま二人目の襟元の内側を打った。


深く斬って殺す代わりに、呼吸と動きを断つ位置。


この狭い場所では、死体ひとつがかえって障害物になる。


セラはいつもそういうことをわかっている。


だから余計に怖い。


排水室の入口はすぐにめちゃくちゃになった。


転んだ奴。


押された奴。


叩きつけられた奴。


その上からまた入ってきて詰まる奴。


エリンはその隙間の下へ、氷をさらに一層足した。


水と血痕が混じり、床は滑る鏡のようにぬらついた。


誰が足を置いても、自分の思いどおりには立てない表面。


これは剣術ではなく悪意ある床工事だったが、今はそれで正しかった。


レオンはもう一度体を起こした。


痛い。


肋骨が特に痛かった。


だが排水室の扉前では、痛みも少し順番を待たなければならなかった。


鉄扉の外で誰かが怒鳴った。


「押せ!」


「中へ押し込め!」


その言葉どおりだった。


奴らはきれいに入ってくることを諦め、人の数で押し切り始めた。


扉枠の外で前の者の背を押し、中で倒れた奴らを足場のように踏み、どうにか槍先と剣先を内側へ押し込もうとするやり方。


よくなかった。


こうなると、結局一度は弾ける。


セラもそれを悟った顔だった。


彼女が低く言った。


「右」

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