第45話
自分が育った家を前にしてもあんな声が出るということは、すでに家が家ではない可能性が高いという意味だった。
セラは城壁の裏手の下を指さした。
「薪小屋はあの下」
本当にその通りだった。
城壁外郭の斜面の下、大きな薪の山と半ば崩れた屋根を持つ小屋が一つくっついていた。
本来は使用人たちが冬の燃料を積んでおく場所なのだろうが、今は扉が一枚斜めに開いており、周囲には古い荷車の跡が染みのように残っていた。
カルデンのメモが正しければ、その小屋の床の下に、城の内側の第二水門へ続く通路がある。
問題は静かすぎることだった。
マヤが目を細めた。
「静かだから余計に嫌だ」
エリンも同意した。
「うん」
「中に誰もいないか、多すぎるか」
リナがとても明るく言った。
「どっちも嫌だね」
レオンは心からうなずいた。
「正確です」
セラは少し考えると、すぐに分けた。
「マヤ」
「上部を確認」
「うん」
「リナ」
「左の小屋壁」
「いいよ」
「エリン、リリアは運搬枠と待機」
エリンが短く答えた。
「わかった」
セラが最後にレオンを見た。
「私と」
レオンは少し目を瞬かせた。
そして笑った。
「はい」
「それはなかなか光栄ですね」
セラは何も言わず、先に動いた。
二人は低い薪の山の影を伝い、小屋のほうへ寄った。
近づくほど匂いが感じられた。
濡れた木の匂い、古い灰の匂い、カビ、そしてごくかすかな血の匂い。
レオンはその瞬間、少し表情を硬くした。
「良くありませんね」
セラが扉の横に立ったまま、ごく低く言った。
「開けたらすぐ入る」
「はい」
「転ぶな」
レオンは少し不満そうにした。
「その指示は今や私の自尊心を刺すための用途に聞こえますが」
セラが初めて、ごくわずかに彼を見た。
「なら耐えろ」
その言葉のほうが、むしろ良かった。
レオンは短く息を吸った。
「はい」
セラが爪先で扉を押した。
ぎいっ。
小屋の中は思ったより広かった。
天井は低く、四方に積まれた薪の山が闇を区画ごとに切り分けていた。
割れた採光窓から入る光が薄く埃を照らし、床にはおがくずと泥の跡が混ざっていた。
そしてその奥の柱に、一人の人間が縛られていた。
中年の男だった。
絹のシャツは破れ、外套は剥がされたまま、口元には血が乾いてこびりついていた。
髪は乱れ、片方の目元は青黒く腫れていた。
それでも座っている姿勢のどこかには、長く権力を握ってきた人間特有の意地が残っていた。
リリアが後ろで息を呑んだ。
「叔父様……」
ベルハルト辺境伯。
リリアの叔父だった。
彼は顔を上げた。
視線はかすんでいたが、リリアの顔を見た瞬間、はっきり揺れた。
「リリ……」
「ア?」
レオンは心の中で、とても静かに思った。
よし。
生きている。
だが、あまりにも簡単に生きている。
これはおかしい。
セラも同じことを考えた顔だった。
彼女は少しも警戒を解かないまま、小屋の中の影を見渡した。
マヤはすでに屋根の梁の上を探っており、エリンも運搬枠を持って入らず、扉の外で止まっていた。
リナは鈍器を持ったまま横の壁をつつき、空洞を確認していた。
リリアが前へ一歩出ようとすると、セラの腕が彼女を止めた。
「待て」
リリアが切迫した声で言った。
「でも、あの方は……」
「だからこそ」
セラの声は低く硬かった。
その瞬間、レオンの目の前に文字が浮かんだ。
【非常に怪しい再会判定】
【感想:はい、私もそう思います】
レオンは心の中で呟いた。
今日はやけに話が通じるな。
ベルハルト辺境伯は柱に縛られたまま顔を上げた。
「気をつけろ……」
「ここは……」
その言葉が終わる前だった。
床下から低い金属音が鳴った。
がちゃり。
セラの目が光った。
「後ろへ!」
次の瞬間、小屋の床板が何枚も一斉に抜け落ちるように開いた。
薪の山の下に隠されていた罠だった。
黒い穴の中から、鎖と鉤、そして短い槍の刃が一斉に跳ね上がった。
リリアが悲鳴を呑み込み、エリンは運搬枠を後ろへ引っ掴み、リナは反射的に一番前へ飛び込んだ。
レオンも身を投げた。
投げようとして、おがくずを踏み、足が滑った。
「あ」
彼は前へつんのめった。
しかしそのつんのめりのおかげで、本来首を狙っていた鉤が頭上をかすめて通り過ぎた。
【転倒判定】
【奇襲致命打回避】
レオンはほとんど怒るように叫んだ。
「本当にもう認めます!私の尊厳が私の命を食わせています!」
その叫びとともに、小屋の中は再び戦闘へとひっくり返った。
レオンは床に手をついて起き上がり、おがくずと汗と血の匂いが入り混じる小屋の中を睨んだ。
良くなかった。
だが今はわかる。
良くない場所ほど、自分の番が早く来るということを。
彼は口元を一度拭って笑った。
「いいですね」
リリアが震える声で尋ねた。
「また何がですか?」
レオンは開いてしまった床の罠と、縛られた叔父と、飛び出す鎖を見ながら答えた。
「今回は本当に、大事な人から助ければよさそうですね」
小屋の床は口を開けた獣のように、人の足下へ噛みつこうとしていた。
開いた板の下は、ただの穴ではなかった。




