第44話
「ここまで来ると、偶然があんたをえこひいきしているレベルだよ」
まさにその瞬間、岩の隙間の裏から黒いマントが二人飛び出した。
一人は短い槍、一人は鉤付きの縄を持っていた。
崖道で相手を引きずり落とすには、とても良い組み合わせだった。
奴らは最初から戦いよりも転落死を狙う顔をしていた。
短い槍を持った奴がリリアへ向かって突き込んできた。
リリアは避けなかった。
今回はむしろ体をひねり、運搬枠の前をさらに塞いだ。
恐怖で目は大きく見開かれていたが、足は退かなかった。
レオンはそれを見た瞬間に思った。
ああ、この人はもう本当に踏みとどまる側になったのだな。
だが感想に浸る余裕はなかった。
槍先がすぐ目の前まで来ていたからだ。
レオンは反射的に手を伸ばし、その槍の柄の横を押した。
深く入ってくる角度だけ変えればよかった。
彼の手のひらが槍の柄にぶつかり、肩の傷がずきりと疼き、肋骨が抗議した。
ものすごく痛かった。
それでも槍先はリリアの横をかすめて通り過ぎた。
その間にセラの剣が閃いた。
短く冷たい線が一つ。
槍の柄が真っ二つに切れた。
敵が目を見開いたその一瞬、リリアが運搬枠の横にあった補強用の短い鉄棒を持ち上げ、その男の手の甲に振り下ろした。
かつん。
「ぎゃあっ!」
レオンが叫んだ。
「いいですね!」
「武器の使い方がとてもよく熟練されていっています!」
「そんな熟練は望んでいません!」
その返事は震えていたが、はっきりしていた。
もう一人は鉤縄をレオンのほうへ投げた。
鉤が彼の腰や足首にかかっていたら、その時点で終わりだった。
崖の下へ引きずられていたかもしれない。
しかしレオンはその瞬間、また足を滑らせた。
今回は本当に悔しかった。
彼は心の中で叫んだ。
いや、ちょっと待て。
だがもう遅かった。
体が床に沈み込むように低くなり、鉤は彼の腰の上の空をかすめて通り過ぎた。
【転倒判定】
【落下誘導回避成功】
レオンはほとんど怒り出しそうだった。
「今度は私の体面を餌にして生きているのですね!」
リナが後ろから叫んだ。
「文句はあと!」
そして次の瞬間、リナが突進した。
狭い崖道で突進は、本来やってはいけない行動だ。
しかしリナは、本来やってはいけないことをよくやってきた。
そして時々、それが非常によく効いた。
彼女は体を半分ほど低くし、小さな体全体を鈍器のように使って、鉤縄を持った奴へぶつかった。
どん、という鈍い音とともに男は岩壁に叩きつけられた。
そのまま滑るように座り込んだ。
リナはにっと笑った。
「崖じゃ強く振れなくても、体当たりはできるね!」
マヤが上から声を上げた。
「それと、上も片づけたよ!」
彼女が上の岩壁の縁に姿を現した。
矢が一本、すでに別の待ち伏せの肩を貫いていた。
男は後ろに倒れ、半ばぶら下がったまま呻いていた。
セラが短く言った。
「終わらせる」
彼女は前方の敵の膝裏を蹴り、均衡を崩した体を崖の外ではなく岩壁のほうへ押しつけた。
その容赦のない正確さが、むしろさらに脅威だった。
男は岩に背を叩きつけ、息を吐いた。
続けてセラの柄が顎をかち上げた。
ごき。
短く乾いた音。
男はそのまま気絶した。
静寂が落ちた。
風だけが、相変わらず何も見ていなかったというように崖を舐めて通り過ぎた。
レオンは床からゆっくり立ち上がりながら呟いた。
「この道、本当に性格が悪いですね」
エリンがぴしゃりと言った。
「今わかったの?」
「いいえ」
「たった今、もう一度確信しました」
待ち伏せは短かったが、残したものがあった。
マヤが上から引きずり下ろした待ち伏せの腰元から、古い青銅のプレートが一つ出てきた。
灰色眼球会の目の紋様ではなかった。
代わりに、ベルハルト領の倉庫人夫たちが使う標識が刻まれていた。
かなり粗雑に偽造した跡があったが、その粗雑さがかえって意味深だった。
エリンがそれを指先で転がしながら言った。
「あからさまに結びつける気だね」
マヤがうなずいた。
「うん」
「あとで死体だけ見つかれば、『領内の人夫たちが道中で襲撃した』って形にできる」
リリアの表情が固まった。
「では……」
「最初から叔父様側の人たちに罪をかぶせるつもりもあったということですか?」
セラは短く答えた。
「可能性は高い」
レオンはため息のように笑った。
「いいですね」
「敵がだんだんわかりやすい形で汚くなっていきます」
リナが尋ねた。
「それって良いことなの?」
「気分は悪いですが、理解はしやすくなりますから」
「なるほど」
その短い納得が少しおかしかった。
だが笑いは長く続かなかった。
崖道の終わりが見えたからだ。
その向こうにベルハルト領の外側の城壁が姿を現した。
遠くから見れば、城はいつも美しい。
高い壁、幾重にもそびえる塔、風を受ける旗、日を抱く窓。
しかし近づけば近づくほど、その美しさはしばしば権力の顔へと変わる。
今、目の前のベルハルト城がまさにそうだった。
灰白色の城壁は曇った空を削り立てた崖のようで、城楼は互いを監視する無骨な獣の背骨のように連なっていた。
正門側は見えなかったが、裏手へ回り込んだこの位置からでも、すでに緊張感が感じられた。
倉庫の煙突から上がる煙の量があまりにも少なかった。
警備兵の影も少なかった。
城が静かなのではなく、誰かが静かにさせているという感じ。
リリアが息を呑んだ。
「あそこです……」
その声は懐かしさと恐怖が絡み合った音だった。




