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第35話

まだ震えている。


怖い。


けれど、さっき猟犬の鼻を殴った手も、礼拝堂で運搬台を最後まで離さなかった手も、結局は自分の手だった。


その事実が、少しだけ支えになった。


「大丈夫です、とは言えません。」


彼女は正直に言った。


「でも、逃げるだけなのはもう嫌です。」


静寂。


セラはとても短く言った。


「いい。」


マヤはにこりと笑った。


「その言葉だけでも十分だよ。」


エリンは無表情のまま付け加えた。


「道だけ正確に案内して。」


「残りは私たちがやる。」


リナはぱっと明るく笑った。


「うん!」


「危なかったら一緒に殴ればいいよ!」


リリアはその言葉に、思わず笑い出しそうになった。


レオンはそんな彼女を見て、静かに一言添えた。


「歓迎します。」


「私たちは伝統的に、少し準備不足のまま前へ進みます。」


マヤがすぐ突っ込んだ。


「少しじゃないでしょ。」


エリンも冷たく訂正した。


「かなりね。」


リナが無邪気に付け加えた。


「でも何とかなるよ!」


セラはひどく短く締めた。


「なる。」


その一言が、不思議なほど強かった。


だからリリアも結局、小さいがはっきりと笑った。


「はい。」


準備は素早く終わった。


アデルは都市へ戻る前に、最後の点検をした。


外の痕跡をどう消すか、一日のうちに灰色眼球会がこの隠れ家を見つける可能性がどの程度あるか、北へ抜けるとき初日のうちに必ず越えなければならない峠はどこか。


彼女の言葉は乾いていて、正確で、無駄がなかった。


おかげで全員の頭の中も、複雑さではなく線として整理された。


初日の目標は二つだった。


一つは北東の低い尾根を越え、廃鉱村の入口まで到達すること。


もう一つは日が沈む前に、ベルハルト領の外側監視線近くにある古い哨所一つを確認すること。


その哨所がまだ友好側なら、道は開く。


逆に敵に食われているなら、北全体が思ったよりずっと早く汚染されたという意味だ。


良くなかった。


だが少なくとも明確だった。


アデルは出発直前、セラを別に呼んで一言言った。


「副支部長代理は私が処理する。」


セラは短く尋ねた。


「生かす方向で?」


アデルが少し笑った。


「可能なら。」


その短い答えに含まれた意味を、二人ともそれ以上解かなかった。


マヤはアデルと情報伝達の合図をもう一度合わせ、エリンは封印陣を携帯できる形に圧縮した。


リナは結局荷車を諦め、必要なものだけを選んで二つの背嚢に分けた。


そしてレオンは……


自分の分の書状を三回確認した。


胸の内ポケット。


紐付きボタンの留め具。


上着の内側の結び目。


そして最後に、書状がある部分を手でもう一度押さえる。


マヤがその様子を見て笑った。


「何それ、すごく気にしてるね。」


レオンは真剣に答えた。


「今や私の自尊心の問題です。」


エリンが淡々と言った。


「いいわ。」


「その勢いで死ななければいい。」


「難易度調整が荒すぎます。」


セラはすでに外で空を見ていた。


朝は完全に昇っていた。


森の間から差し込む光は、冷たい刃のようでありながら、地面の落ち葉の上では薄い金箔のように砕けた。


風は北から来ていた。


遠い石の匂い、湿った土、まだ溶けきらない水気、そしてごくかすかな雪の匂い。


季節は春へ傾いていたが、北はまだ冬の爪をすべて畳んではいないらしかった。


アデルが戸口に立った。


「よし。」


「では、ここからはそれぞれの仕事だ。」


リナが手を振った。


「都市、気をつけて!」


マヤも軽く笑った。


「裏切り者どもの首、あんまり早く刎ねないでよ。」


「こっちも一緒に刎ねたいから。」


アデルが鼻で笑った。


「参考にはしてみよう。」


リリアは少し迷ってから頭を下げた。


「助けてくださって、ありがとうございました。」


アデルはその言葉に、ごく一瞬だけ視線を柔らかくした。


「北へ行って生き残れ。」


「礼はその後で受け取る。」


それもまた、説明のない気遣いだった。


レオンは扉の横にもたれて言った。


「支部長。」


「何だ。」


「どうか扉を壊すほうは、最小限にしていただければ。」


アデルが眉を上げた。


「なぜ私が?」


レオンはリナをちらりと見た。


リナは知らないふりをした。


「ただ……」


「今日は妙に設備が心配でして。」


アデルはごく短く笑った。


「約束はできない。」


そう言って背を向けた。


彼女が森道の下へ消えると、家の中の空気も一緒に向きを変えた。


これで本当に、五人と一つの箱、そして一人の案内役だけが残った。


レオンは一度息を吸い込んだ。


肋骨は相変わらず痛かった。


肩も重かった。


未来はまったく明るく見えなかった。


だが不思議なことに、足は前に出る準備をしていた。


セラが言った。


「出発する。」


マヤはすでに先の道を見るため、森の端へ抜けていた。


エリンは箱を確認した。


リリアは北の尾根へ向かう細い抜け道を指した。


リナは背嚢二つをまとめて持ち上げ、にこにこしていた。


「今度は何が飛び出してくるかな。」


レオンがすぐ返した。


「その言葉は、できるだけ言わないでください。」


リナはさらに明るく笑った。


「なんで?」


「面白いじゃん!」


「私が主に、飛び出してくるものに真っ先に殴られる場合が多いからです。」


エリンが淡々と付け加えた。


「それはそう。」


「同意が早すぎますね。」


セラが一歩先に出ながら短く言った。


「雑談は終わり。」


「遅れるな。」


レオンはそれを聞いて、ふっと笑った。


「はい。」

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