第34話
その小さなためらいが、かえって正直だった。
「はい。」
「信じたいです。」
「いえ……」
「少なくとも昔はそうでした。」
「でも今はよく分かりません。」
アデルはその言葉を聞き逃さなかった。
「理由は?」
リリアは息を整えて言った。
「封印庫襲撃の直前、叔父様は普段よりずっと多くの警備を内側へ回しました。なのに要だった担当二人は外郭監視へ外したんです。私はその配置が今でも理解できません。ミスだったのか、騙されたのか、それとも……」
彼女は言葉の続きを飲み込んだ。
誰も急かさなかった。
けれど誰もが次の言葉を聞いた。
あるいは叔父も関わっているのか。
その可能性は、部屋の中に薄く冷たい刃のように掛かった。
レオンは心の中で思った。
ああ。
これは本当に面倒になったな。
敵だけを叩き潰せばいい話ではない。
行くべき場所が答えかもしれず、罠かもしれない。
セラはとても淡々と結論を出した。
「直接見て判断する。」
リリアはゆっくりとうなずいた。
その短い結論が、かえってありがたいという表情だった。
そうだ。
結局は行って、見て、聞いて、確かめなければならない。
不安は座ったまま育てればだんだん怪物になるが、歩いて確かめれば少なくとも形は見える。
そのときアデルが指で街の方角を叩いた。
「だが私はここまでだ。」
リナが一番先に顔を上げた。
「え?」
「一緒に行かないの?」
アデルは無表情に答えた。
「行けない。」
「街の中にいる裏切り者どもを、ここで切らなきゃならないからな。」
「副支部長代理はもちろん、つながりがどこまで伸びているか確認しなければならない。」
「私が空ければ、支部が丸ごと灰色眼球会の手に落ちるかもしれない。」
マヤが腕を組んだ。
「予想はしてたけど、あまり嬉しくはないね。」
「私も同じだ。」
アデルは息を吐いた。
「だが長期戦になるなら、街側の安全装置も必要だ。」
「お前たちが北でどんな情報を得ようと、また降りてきてつなげる地盤が要るだろう。」
エリンがうなずいた。
「正しい話だね。」
セラも同意した。
「街は任せてもいいか。」
アデルはかすかに笑った。
「誰に聞いている?」
その笑みは自慢ではなく、長く持ちこたえてきた者特有の乾いた自信だった。
セラは短くうなずいた。
「よし。」
それで終わりだった。
このパーティーで信頼とは、長く説明する感情ではなかった。
短く、固く、必要な場所にだけ置かれる。
アデルはポケットから封印された書簡三通と小さな金属印を一つ取り出した。
「これは北の中継拠点用。」
「これは辺境警備線通過用。」
「そしてこの小さな印は、ベルハルト領内側の監視哨二つがまだギルド友好側かを確認するための標だ。」
「三つともなくすな。」
リナは即座に手を上げた。
「私は預からない。」
アデルがすぐに答えた。
「賢明だな。」
マヤがくすくす笑い、レオンも笑いをこらえられなかった。
「自己認識が見事ですね。」
リナは堂々としていた。
「うん。」
「壊すのは得意だけど、こういうのは苦手。」
それは全員がすでに知っている事実だった。
結局、書簡はセラとエリン、そしてレオンに一通ずつ分けられた。
レオンは自分の分を受け取り、一瞬目を瞬かせた。
「なぜ私なんですか?」
アデルがすぐに答えた。
「お前が一番なくしそうに見えるが、なぜか一番最後まで握っていそうだからだ。」
レオンは少し、感動するべきか侮辱を感じるべきか迷った。
「評価が微妙ですね。」
マヤが笑った。
「間違ってはいないね。」
エリンもさりげなく加勢した。
「そうだね。」
「転んでも手に持ったものは最後まで離さないでしょ。」
リナが明るく付け足した。
「うん。」
「本人が吹っ飛んでも、不思議と物は落とさないよね。」
レオンはしばらく何も言わなかった。
そして結局認めた。
「……考えてみれば、そうだった気もします。」
リリアはその短い騒ぎを静かに見守ってから、自分の膝の上に置いた手をぎゅっと握った。
この人たちは変だ。
今の状況はまったく笑えない。
自分の叔父が敵とつながっているかもしれず、箱の中には村一つくらい簡単に滅ぼせる災厄が入っていて、灰色眼球会は北の道筋ごとに手を伸ばしているはずだ。
それでもこの人たちは、まさにだからこそ笑う。
怖くないからではない。
どれほど怖くても笑う。
崩れるほど現実を知りながら、崩れる順番を一つずつ後ろへずらしている。
それがどれほど難しいことなのか、リリアは今、少し分かった気がした。
だからだろうか。
彼女はふと、箱より先に自分の口で言うべきことを思い出した。
「あの……」
全員の視線が彼女に向いた。
リリアは息を整えた。
「私が北の道を案内します。」
「地図だけではどうにもならない道があります。」
「監視哨を避ける抜け道、廃鉱の裏の古い巡礼路、春だけ渡れる浅い渡し場……」
「そういうものは私が知っています。」
アデルが目を細めた。
「状態は?」
リリアは自分の手を見下ろした。
まだ震えている。
怖い。
けれどさっき猟犬の鼻を殴った手も、礼拝堂で運搬台を最後まで離さなかった手も、結局は自分の手だった。
その事実が少しだけ支えになった。
「大丈夫だとは言えません。」
彼女は正直に言った。
「それでも、逃げてばかりいるのはもう嫌です。」
セラはとても短く言った。
「よし。」
マヤはにやりと笑った。
「その言葉だけでも十分だよ。」
エリンは無表情のまま付け足した。
「道だけ正確に案内して。残りは私たちがやる。」
リナは明るく笑った。
「うん!」




