第22話
エリンが静かに付け加えた。
「罠を張る」
アデルがうなずいた。
「そうだ」
「違う出発時刻、違う経路、違う囮信報を流す」
「誰がどの餌に食いついたか見ればいい」
マヤの口元がわずかに上がった。
「いいね」
「人釣りは私の専門でもあるし」
レオンが言った。
「その表現は味方の立場でも少し怖いです」
「褒め言葉として聞いとくよ」
彼女はとても軽く答えたが、目はもう狩る側へ行っていた。
計画はすぐに精密になった。
伝令には『北門出発』の情報を流す。
門番には『東門商団偽装』の情報を流す。
副支部長代理には『支部長直接護送、正門出発延期』の情報を流す。
本当のルートは誰にも言わない。
この部屋の中の六人、そしてアデルが直接呼ぶたった一人の御者だけが知る。
リナが指を折って数えながら尋ねた。
「ちょっと待って、六人?」
マヤがちらりと見た。
「セラ、私、リナ、エリン、レオン、リリア」
「六人」
リナはしばらく指を折ったり開いたりしてから、うなずいた。
「合ってるね」
「よかった」
「急に私が数字に弱いのかと思った」
レオンがベッドの上で言った。
「それは急にではないかもしれませんが」
リナが枕を投げた。
レオンの顔に正確に当たった。
ぼふっ。
【打撃判定】
【敵対ではありません。侮辱値低】
【補正なし】
レオンは枕を顔に乗せたままつぶやいた。
「親切ですね」
「システムもリナさんはもう諦めたようです」
その短い騒ぎでさえ、不思議と皆を少し生き返らせた。
計画が精密になるほど緊張は深くなる。
それに耐えさせてくれるのは、意外にもこういう無駄な言葉だ。
夜明けが近づくほど、宿はだんだん息を潜めた。
客は全員外へ出された。
警備兵数人は表向きだけ配置され、実際に重要な位置はアデルが別に回して立たせたギルド員二人が受け持った。
厨房の火は消され、蝋燭だけがところどころで生きていた。
階段には軋む音を殺すために布切れが当てられ、厩のほうはリナが急いで手を入れたせいで木釘がばらばらに突き出していた。
見た目はめちゃくちゃだが、夜の侵入者はこういう雑さに意外と足を取られる。
リリアは結局眠れなかった。
彼女は箱を胸に抱いたまま、宿の窓際の椅子に座り、夜が薄まっていくのを見ていた。
耳は何度もぴくりと動き、目は一度閉じられてもすぐにまた開いた。
その姿は逃げた果てにようやく身を隠した獣のようでもあり、泣かないように顎を上げた幼い貴族のようでもあった。
レオンも完全には眠れなかった。
傷がずきずきした。
肩は大きく息を吸うたびにかすかに引きつり、脇腹は体を動かすたびにちくりと痛んだ。
それでも彼は、なぜか眠ってはいけないような気がした。
だから結局ベッドの縁に腰掛け、リリアと窓の外を交互に見て尋ねた。
「怖いですか?」
リリアは少し驚いてから、小さく笑った。
「はい」
「まだ」
「いいですね」
リリアが目を丸くした。
「え?」
レオンは肩をすくめた。
「怖いものを怖いと言える、ということですから」
「私は昔、それもあまりできませんでした」
リリアは箱の表面を指先でなぞった。
黒い金属は冷たそうに見えたが、彼女の言うとおり、触れると妙に熱が巡るらしい。
生きているわけでも、死んでいるわけでもない体温。
「レオンさんは、どうしてそんなふうに笑うんですか?」
その質問は慎重だった。
非難ではなく、ただ疑問だけがある問い。
レオンは窓の外を見た。
夜の端にある都市は、大きな獣がようやく眠りについた顔のようだった。
屋根は黒い鱗のように重なり、路地はその間を流れる細い川のように曲がっていた。
遠く城壁の上で松明が一つ、二つ揺れ、煙突の煙は夜明けの青みと混ざって紙のように薄くなった。
彼は少し考えてから答えた。
「笑わないと、悪いものがあまりにも堂々として見えるからです」
リリアはしばらく何も言わなかった。
やがて、とてもゆっくりうなずいた。
「……その言葉、少し分かる気がします」
そのとき、窓の下の闇から小さな口笛が鳴った。
マヤだった。
短く三回、長く一回。
約束された合図だった。
レオンとリリアの表情が同時に固まった。
マヤが戻ってきたとき、彼女のマントの裾には夜明けの霧の匂いと屋根の埃の匂いが付いていた。
彼女は窓から滑り込むように入ってくるなり、指を三本立てて見せた。
「三つとも食いついた」
アデルの眼差しが冷えた。
「どういうふうに?」
「北門側はもう怪しい馬車が二台待ってる」
「東門側は倉庫前の屋根にクロスボウ兵が二人」
「それから……」
マヤは口元を下げた。
「正門延期の情報は、さっきギルドの副支部長代理が外へ流した」
「この目で見た」
リナがすぐに悪態をついた。
とても短く、とても率直に。
エリンは長く息を吐いた。
「うわ」
「ここまで堂々と腐ってるんだ」
セラは無言で剣の鞘に手を置いた。
アデルが先に切った。
「今は行かない」
セラの視線が彼女へ向いた。
アデルは断固としていた。
「捕まえるのは後だ」
「今日の優先順位は輸送」
一瞬、本当に一瞬だけ、セラの目つきが鋭く揺れた。
しかしすぐに沈んだ。
「……分かった」
その短い返事のほうが、かえって重かった。
レオンは心の中で思った。
副支部長代理は運が悪いな。




