第21話
アデルはすでに卓上に都市の地図を広げていた。
四本の蝋燭が四隅を押さえており、マヤが持ってきた墨線とセラの短剣が地図の端を押さえていた。
地図には城門、ギルド、倉庫、水路、外縁の墓地、東の塩倉、北門へ抜ける丘道、捨てられた製粉所、旧巡礼路までびっしりと記されていた。
都市が急に、生きた獣の内臓のように見えた。
路地は血管のようで、広場は心臓のようで、門は牙のように外へ向いていた。
アデルが言った。
「この脅迫には二つの意味がある」
「一つ、こちらが夜明け前に動くと敵も読んでいるということ」
「二つ、その予想ができるほど、こちらの情報が漏れているということ」
マヤが地図上の一点を指でとんと叩いた。
「なら、なおさら正面からは出られないね」
「南門、北門、東門、全部に監視が付いてる可能性が高い」
エリンが封印陣を補強しながら低く受けた。
「水路は?」
アデルはすぐ首を横に振った。
「勧めない」
「秘密通路みたいに見えるけど、密輸人と情報屋が一番早く匂いを嗅ぎつける場所だ」
「今日みたいな夜は、むしろもっと汚い」
レオンがベッドにもたれたまま手を上げた。
「質問があります」
アデルは目も上げずに言った。
「またいい質問なら受け付ける」
「水路の匂いはどの程度ですか?」
静寂。
マヤが笑いを飲み込み、リナは堂々とキッと声を漏らした。
アデルはとてもゆっくりレオンを見た。
「それが今、大事だと思うの?」
レオンは少し考えた。
「特に大事ではないようですね」
「すみません」
エリンが低くつぶやいた。
「こんな状況でも話をそらせるなんて、才能だよ」
けれどその一瞬のずれのおかげか、部屋の中に張り詰めていた緊張がほんの少しだけ緩んだ。
セラは地図の北東側、外縁を指した。
「本当のルートはここ」
彼女が示した場所は、城壁の外へまっすぐ出る正門ではなかった。
ギルド倉庫裏の路地を抜け、古い石造りの水路を通り、廃墟になった織物工房の裏口へ出る細い道。
そこからまた屠殺場裏手の斜面を回り、外縁の丘の巡礼路と合流する道だった。
人が少なく、匂いがきつく、道が荒い。
貴族が嫌う道で、正規軍はあまり通らず、暗殺者も好まない道だった。
汚くて不便だから。
レオンが感心した。
「ああ」
「実に見事に歩きたくない道ですね」
セラが短く答えた。
「だからいい」
マヤは偽のルートを二本引いた。
一つは東門側、一つは北門側だった。
どちらもわざとそれらしく組んだ。
東門側は裕福な商団の出入りが多い道なので、荷車が一台増えても目立たない。
北門側は巡礼者が多く通る時間帯を狙えば、人波に紛れられる。
リナが勢いよく手を上げた。
「囮の荷車は私がやるんだよね?」
「そう」
マヤが笑って言った。
「でも、ただ引いて出るだけじゃだめ」
「あなたが怒って、騒いで、わざと人目を引かなきゃいけない」
リナは胸を張った。
「それは得意!」
レオンが横になったままつぶやいた。
「わざわざ訓練しなくても完成している分野があるのですね」
リナは明るく笑って親指を立てた。
「うん!」
誰もそれを否定しなかった。
あまりにも事実だったから。
エリンは今度は本隊側を整理した。
「箱は私が直接安定させる」
「リリアがずっと抱えているやり方には限界がある」
「夜明け前の出発までに仮の運搬枠を作って、衝撃緩和用の内張りを二重に入れる」
「それからレオン」
「はい」
「あなたは箱から三歩以上離れないで」
レオンが目を瞬かせた。
「私を監視するんですか、箱を監視するんですか?」
エリンが無表情で答えた。
「両方」
マヤが笑い出した。
「正確だね」
セラはさらに具体的だった。
「箱への突進、奇襲、遠距離牽制」
「お前が一番先に体を入れる」
レオンは首を傾けた。
「主力の活用法が、あまりにも肉弾戦寄りではありませんか?」
セラが彼を見た。
「嫌か」
レオンはすぐに答えた。
「いいえ」
「聞こえはいいです」
アデルが低く鼻で笑った。
「そういう子たちほど、真っ先に怪我をするんだよ」
レオンが丁寧に言った。
「すでに怪我をしている状態です」
「効率的です」
「それは効率とは呼ばない」
しかし本当の問題は裏切り者だった。
道は三つに分けられる。
荷車も二つに割れる。
人も散らせる。
だが耳は散らない。
誰がどの時点で、どれほど知っていて、誰へ流しているのか分からなければ、作戦はいずれ破られる。
だからアデルは卓上から地図をどけ、その場所に新しい紙を一枚置いた。
彼女は名前を書き始めた。
支部補助書記。
夜間門番。
武器庫の鍵担当。
伝令担当二人。
会計担当一人。
副支部長代理。
マヤが眉を上げた。
「疑いリスト?」
「接触可能リストだ」
アデルが言った。
「疑いはその後に付く」
彼女はペン先でいくつかの名前に点を打った。
「この中で情報と動線を同時に扱える者は三人」
「伝令担当一人、門番一人、そして副支部長代理」
リナがすぐ顔をしかめた。
「副支部長代理って偉い人じゃないの?」
「偉いからって清いわけじゃない」
アデルの答えはきっぱりしていた。




