第19話
「報酬は一次契約金、運送成功時の本報酬、追加危険発生時の特殊手当に分ける。今回の件は危険度と非公開性のため、通常の護衛依頼の三倍以上に設定できる。」
リナが息を吸い込んだ。
「三倍。」
マヤが素早く付け加えた。
「そこに情報隠匿手当も付けないとね。ギルドじゃなくて相手勢力が私たちの口を塞ぎに来るかもしれないんだから。」
エリンもすぐに割り込んだ。
「仮封印維持費、専門封印師の呼び出し費、夜間移動回避による迂回費まで。」
セラは非常に淡々と一言添えた。
「リリア保護費も。」
リリアが目を丸くした。
「わ、私の保護費というものが別にあるんですか?」
レオンがベッドに横になったまま、誠実に説明した。
「はい。」
「今からお嬢さんは、かなり高価な貴重品です。」
「箱込みで。」
リリアの耳がぴんと上がった。
「貴重品扱いはちょっと……」
マヤがふっと笑った。
「心配しないで。」
「小包みたいに運んだりはしないから。」
アデルは素早く計算した。
筆先が紙の上をこすっていくたびに数字が増えた。
契約金の額だけを見ても、宿を半分ほど買えそうだった。
レオンはそれをちらりと見て、本気でつぶやいた。
「わあ。」
「今、私は金の匂いを嗅いでいます。」
エリンがすぐさま言い返した。
「血の匂いでも嗅いでなさい。」
「あなたのものでしょ。」
「両方混じっています。」
「複合的です。」
アデルは計算を終えると結論を出した。
「よし。」
「一次契約金は現金とギルド保証書で半々。」
「本報酬は北部本部承認後に精算。」
「ただし、ここには条件が付く。」
セラが見た。
「何だ。」
「この件は、これでギルド上層部への報告対象だ。」
「つまり、お前たちは個人パーティーであると同時に、ギルド代理人として動くことになる。」
「勝手に箱を開けたり、別途交渉したり、外部勢力へ情報を渡した場合、契約は即時破棄。」
「ひどければ逮捕協力まで付く。」
リナがすぐに手を挙げた。
「私たちは開けないよ。」
レオンも続けて手を挙げた。
「はい。」
「私は特に開けません。」
「名前からして嫌です。」
マヤは笑い、アデルは紙を整理した。
しかしその直後、彼女の視線がごくわずかに鋭くなった。
「問題は内部だ。」
部屋の空気がもう一度静かになった。
セラが先に尋ねた。
「ギルド内にいるのか。」
アデルは即答しなかった。
その沈黙が、むしろ答えだった。
「いる可能性が高い。」
彼女は低く言った。
「広場襲撃が早すぎた。」
「リリアが南門から入った時点、追っ手が途切れずすぐに付いた時点、そして衛兵隊より先にお前たちの位置を特定した方法。」
「外部情報だけでは説明できない部分がある。」
「誰かが都市内で道を開いたか、少なくとも監視網を共有されたと見るのが妥当だ。」
リリアの顔が真っ白になった。
「それじゃ……」
「ギルドも安全ではないということですか?」
アデルは断固として言った。
「支部全体を信じるな。」
「私と、私が直接選んだ数人だけを信じろ。」
マヤが低く笑った。
「いいね。」
「こういう方がむしろ信用できる。」
エリンは箱をにらみながらつぶやいた。
「予想はしていたけど、面倒になったわね。」
レオンは指でベッドのシーツを叩きながら言った。
「正式依頼になると安全装置ができて、同時に正式ルートの中の穴にも気を配らなければならない……」
「これはかなり典型的な苦労の予約ではありませんか?」
アデルが彼を見た。
「理解が早いな。」
「私はいつもそういう流れを踏むのが得意です。」
「自慢ではないだろうな。」
「まったく。」
そこで追加措置が決まった。
第一に、依頼登録は正式に行うが、全面公開はしない。
一般掲示板には載せない。
内部コードだけで処理する。
第二に、箱の運送は昼ではなく明け方前後に始める。
人が最も少なく、監視網が緩む時間だ。
第三に、移動ルートは三つ同時に用意する。
本物は一つ、偽物が二つ。
マヤが偽の痕跡を流し、リナが囮の荷車を担当し、セラとエリンが本隊を守る。
第四に、リリアの身分は当分完全には公開しない。
ギルド内部文書にも略記で残す。
正式な貴族身分が明らかになれば、かえってさらに多くの手がまとわりつく。
第五に、レオンは……
アデルが紙の上を見てから顔を上げた。
「お前は本隊。」
レオンがぴたりと止まった。
「なぜですか?」
セラが先に答えた。
「お前のスキルは、箱を狙う奴らが私たちを見くびるほど強くなる。」
マヤが笑いながら付け加えた。
「正直、こういう状況で一番よく発動するんだよね。」
リナもうなずいた。
「うん。」
「それに箱の方で問題が起きたら、君が一番先に身を投げそうだし。」
エリンは冷たく整理した。
「それが一番不安だから、近くに置いておく必要があるの。」
レオンは長いあいだ黙り込んでいた。
それは予想外の配置だった。
自分はまだ負傷者で、一番不安定な人間だと思っていたのに。
それでも彼女たちは彼を後ろへ下げなかった。
むしろ一番危険なものの近くに置くと言っている。
荷物ではなく戦力として、それも計算された戦力として。
その事実が妙に胸を打った。
だから彼はわざとさらに軽く言った。
「いいですね。」
「やはり私は貴重品の横の緩衝材ですね。」
セラがすぐに訂正した。
「違う。」
レオンが目を上げた。
セラはとても短く、とてもはっきりと言った。
「中核戦力だ。」




