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第180話

命を捨てる覚悟はあっても、目的を取り逃がしたくはない。


その短い揺れだけで十分だった。


レオンは血まみれの手で短剣を握り直した。


肋骨は痛み、息は焼け、部屋の中には灰色の霧が薄く敷かれていた。


本当に最悪だ。


それでも彼は笑った。


「よし。」


灰色手袋を見ながら、ごく低く言った。


「今度は本当に、私を殺しに来たんですね。」


灰色手袋が初めて、ごく浅くあざ笑った。


「最初からそれだった。」


短く乾いた答え。


「灰色眼球会の大きな脅威になる芽は、命を替えてでも刈り取る。」


「俺の命まで含めてな。」


その言葉と同時に、灰色手袋の左手が扉のほうへ短く弾かれた。


そこでようやくレオンは見た。


扉枠の下。


窓の掛け金の横。


そして天井の梁の陰。


さっきばら撒いたと思っていた灰色の欠片三つが、細い線で互いにつながっていた。


記号でもなく、正式な陣法のように派手なものでもない。


ただ誰かが見れば、砕けた水晶粉か釘跡程度で流すようなもの。


だがその三つが一度に光を食うと、医務室の空気がごく微かに押しつぶされた。


部屋の中の音が急に薄くなった。


廊下の先の灯火の擦れる音も、下の階の小さな人の気配も、外の風の音も、すべて一枚遠くへ押しやられた。


レオンの表情が固まった。


「あ。」


灰色手袋は答える代わりに、再び踏み込んだ。


今度はさらに露骨だった。


信号石が砕けても構わないという動き。


誰かが聞いていたとしても、すぐには入ってこられないという確信を持つ奴の刃。


レオンは後ろへ一歩下がった。


鉄線がまた飛んできた。


短い刃が追いついた。


麻痺の霧は床近くに敷かれたまま、足首とふくらはぎを鈍らせた。


灰色手袋は焦っていなかった。


一度に殺そうとはしない。


動きを断ち。


方向を追い込み。


呼吸を短くさせ。


相手が自分で失敗するのを待つ側。


そのほうが余計にたちが悪かった。


レオンは鉄線の一本を短剣で払い、横へ転がるように動いた。


肋骨が悲鳴を上げた。


いい。


痛い。


頭はさらに冴える。


灰色手袋の刃先がまた入ってきた。


今度は手ではなく太腿だ。


動きを確実に殺す角度。


レオンはベッドの柱を足で蹴り、体をひねった。


刃はズボンの裾だけを裂いて通り過ぎた。


その隙に短剣を下から振り上げた。


かん。


短い金属音。


灰色手袋の手首がごく微かに揺れた。


小さい。


だが十分だ。


こいつも完全ではない。


レオンは息を荒げながら、扉のほうをちらりと見た。


青い信号石が砕けた場所には、まだ残光が残っていた。


だが誰も来なかった。


廊下の外から足音もない。


いや。


聞こえない。


灰色手袋が低く言った。


「音も道も、すべて断ってある。」


その一言がさらに冷たかった。


扉の外に誰もいないのではない。


いても入れないという意味だからだ。


レオンは歯を食いしばって笑った。


「本当に真面目ですね。」


「今回は確実に準備してきたんですか。」


灰色手袋はその冗談にもまったく揺れなかった。


むしろさらに冷たく、レオンの足、肩、手首の順に視線を走らせた。


どこから斬ればこの戦いが最も早く終わるのか量る目だ。


レオンはその目が嫌いだった。


そして同時に、少しありがたかった。


こういう目はいつも本性を早くさらす。


自分を人として見ていない。


だからむしろ読みやすい。


ノアの文言がぱっと浮かんだ。


【推奨:空間利用】


【正面対峙非効率】


「分かっています。」


レオンはすぐ卓を蹴りつけた。


どん。


小さな卓が横へひっくり返り、灰色の霧を一度大きく散らした。


同時に割れたガラス瓶と水桶が滑り、床を濡らした。


灰色手袋のつま先がほんの一瞬滑った。


その一拍。


レオンは逃さなかった。


彼は正面ではなく、ベッドの反対側へ潜り込んだ。


狭い部屋をさらに狭く使う。


ベッド枠。


倒れた卓。


割れたガラス。


水気。


今の医務室は、灰色手袋にとっても完璧な狩り場ではない。


レオンは短剣を短く投げるふりをし、手首だけを返してガラス片を先に飛ばした。


灰色手袋が本能的に顔を避けた瞬間、レオンが低く身を沈め、脇腹のほうへ突き込んだ。


今度は浅くなかった。


短剣の先が布地と肉を同時に裂いた。


灰色手袋の息が初めて、ごく短く乱れた。


血の匂い。


薄いが確かだ。


レオンの口元が上がった。


「よし。」


灰色手袋は一歩退いた。


今度はただ退いたのではない。


部屋の配置を読み直す後退。


扉。


窓。


レオン。


そして自分が敷いておいた灰色の装置たち。


そのわずかな静寂の中で、扉の外から何かが強くぶつかる音が一度響いた。


どん。


誰かが来た。


そして入れなかった。


レオンはそれを聞いて目を細めた。


灰色手袋の準備は本物だ。


アデリアであれブラムであれ、少なくともすぐにこの扉を壊して入ってくることはできない。


灰色手袋が低く言った。


「これで分かったか。」


レオンは血のついた手で短剣を握り直した。


「ええ。」


彼の息は短く、肋骨はずっと疼いていた。


霧はまだ残っており、指先も完全には無事ではなかった。


それでも目は笑っていた。


「今回は本当に一対一ですね。」


そしてすぐ、歯をむき出すように付け加えた。


「マルセラに何をしたんですか。」


灰色手袋の視線がごく微かに止まった。


レオンは逃さず押し込んだ。

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