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第176話

誰がギルド裏門で言葉を拾い、酒場へ流す手なのか。


都市は広いように見えるが、噂はいつもいくつかの喉を通って流れる。


彼女はその喉を探していた。


扉が三度、短く叩かれた。


アデリアは顔も上げなかった。


「入れ。」


入ってきたのはタレンだった。


帳簿担当らしく足取りは速くなかったが、息は少し上がっていた。


すでにどこかで一度走ってきた顔だ。


「支部長。」


「話せ。」


「食堂で水を汲む子が一人、少し前に急いで外へ出ました。」


「ただの使いだと言い繕っていましたが……」


「よりによって川辺のほうへ。」


アデリアの指が地図上の川辺の船着き場付近で止まった。


いい。


やはりこちらが先に食いついた。


タレンが付け加えた。


「それから倉庫の事務補助は何の反応もありませんでした。少なくとも表向きには。」


「そうか。」


「はい。」


アデリアは窓のない部屋の空気を一度長く吸い込んだ。


インクの匂い。


蝋の匂い。


そしてごくかすかに残る灰色の羽根の冷たい匂い。


この部屋は静かなのに、思考はさらに速くなる。


彼女はタレンを見た。


「よし。」


「お前はここまでだ。」


「はい。」


「それから今聞いた話は、誰にも二度と言うな。」


タレンは頭を下げた。


「もちろんです。」


アデリアは彼が出ていくまで何も言わなかった。


扉が閉まってから、ようやく小さくつぶやいた。


「川辺が先か。」


それは単なる方角ではない。


川辺は商団、運び手、夜間荷役、船着き場の雑役、酒場の裏口、流れ者の宿が一つに絡み合う場所だ。


つまり、最も多くの情報が最も簡単に洗い流される場所。


誰かがそこに耳を突っ込んでいるなら、今夜のような餌一つくらいは一瞬で食いつかざるを得ない。


問題は、その耳がギルドの中から直接出ていったのか、それとも食堂の床に落ちた言葉を川辺で拾う奴が別にいるのか。


それを見分けなければならない。


アデリアは地図を畳まなかった。


代わりに指で、正門左手の宿屋裏の排水路部分をもう一度押さえた。


まだほかの二つは動いていない。


あるいは、動いていないふりをしている最中だ。




ブリクセンでは無反応も反応だ。


川辺の倉庫地帯。


夜風が川の匂いを押し上げていた。


水が腐っているわけではない。


だが綺麗でもない。


昼の間に漂った魚の鱗、荷役の途中でこぼれた油、縄に染みついた濡れた匂い、人の足に踏まれた泥。


川辺の夜はいつもそういう匂いを持っていた。


黒い水ではなく、黒い生活。


見知らぬ男はその生活の間を、ごく自然に歩いた。


焦っていない。


走りもしない。


誰かが見れば、夜の使い走り程度に見える。


だがブラムの目には、もう違って見えた。


ああいう奴らはいつも、どこかへ向かう。


そしてそのどこかはたいてい、人より隙間が多い場所だ。


男は船着き場のすぐ前までは行かなかった。


代わりに一つ外れた塩漬け倉庫の裏へ回った。


そこには壊れた木箱の山があり、濡れた縄が掛かった杭が二本あり、昔使いかけでやめた船をつなぎ留めていた石柱が、影の中に半分沈んでいた。


警備の一人が左の影で止まり、もう一人は後ろの路地入口を塞いだ。


ブラムは正面から入らなかった。


正面は相手が備えやすい方向だ。


彼は倉庫の壁に沿って横へ回り、男の手が見える角度だけを選んだ。


そしてついに見えた。


男の右手。


指の間に挟まれた小さな硬貨一枚。


それを石柱の下の隙間へ押し込もうとした刹那。


ブラムが低く言った。


「手を離せ。」


男が固まった。


たった一拍。


その一拍が勝負だった。


奴はすぐには逃げなかった。


代わりに硬貨を押し込もうとしていた手を反対へひねり、内側から針のようなものを取り出した。


毒針だ。


ブラムは舌打ちした。


「やはりそうか。」


警備二人が同時に跳んだ。


男は素早く毒針を後ろへ投げ、身を低くして箱の山の下へ潜り込んだ。


動きがごく短く低い。


逃走そのものより、まず視界を切って角度を変えることに慣れた奴の動き。


ブラムはすぐ箱の上を蹴った。


ばきり。


腐った板が割れ、隙間が崩れた。


男が横へ飛び出した瞬間、左の警備が鞘の端で手首を打ち据えた。


毒針が床に落ちた。


男は吐息すら漏らさなかった。


代わりにすぐ体をひねり、川辺の下へ飛び降りようとした。


ブラムがその背中へそのまま体を叩きつけた。


どん。


二人が土の床を転がった。


ブラムは立ち上がるのに時間のかかる体ではなかった。


ついさっきまではインクの匂いの染みた手で帳簿でもめくっていそうな老人の姿勢だったのに、相手に覆いかぶさる瞬間、その気配はきれいに消えた。


老人の関節ならここで一拍ほど遅れるのが自然だ。


ところが彼は年に似合わず、ほとんど転がる途中で相手の胸倉を先にねじり掴み、もう片方の手では腰の剣を抜く前に奴の肘を床へ叩きつけて押さえた。


若い頃、盛んに名を上げていた時代の癖が、まだ体のどこかにそのまま残っている動きだった。


ごきり。


関節のずれる音がした。


そこでようやく男の口から短いうめきが漏れた。


「静かにしろ。」


ブラムが言った。


「お前の声など聞きたくない。」


警備二人が遅れて追いつき、脚を押さえた。


男はもがかなかった。


代わりにごく短く笑った。


その笑いがブラムの気に入らなかった。


短すぎて、慣れすぎている笑い。

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