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第175話

その男は灰色のマントでもなく、特に盗人のような見た目でもなかった。


そのほうが怪しい。


ブリクセンで本当に怪しい奴は、たいてい何の匂いも漂わせまいとする。


男が路地を一度見渡し、背を向けて別の道へ抜けようとした瞬間。


ブラムが低く言った。


「つけろ。」


警備二人が影から離れた。


静かだった。


静かすぎて、ブラムはかえって口元をほんの少し歪めた。


いい。


これで都市が反応し始める。


まだそれが正解かどうかは分からない。


だが少なくとも誰かが、誰かの言葉に耳を立てた。


それを確認するだけでも、一夜分の価値はある。


医務室。


レオンは結局、完全には眠れなかった。


ただ目は閉じていた。


人が眠ったふりを長くしていると、かえって耳がよくなることがある。


廊下の先から足音一つ。


窓の外の裏庭から小さな気配一つ。


そしてかなり遅く、誰かが扉の前まで来て、そのまま通り過ぎるためらい一つ。


それは暗殺者の足音でもなく、攻撃しようとする人間の気配でもなかった。


守る側だ。


あるいは、守るふりをして見る側。


レオンは目を閉じたまま、ごく小さく息を吐いた。


「よし。」


彼はほとんど寝言のようにつぶやいた。


「皆さん、忙しいですね。」


今度はノアも答えなかった。


たぶんこの夜は、頭の中の存在すら少し静かになったらしかった。


そのおかげか、あるいは廊下の外にいる誰かの気配のおかげか。


レオンは少し遅れて、ごく浅い眠りに落ちた。


一方、ブリクセンの別の路地では、餌のように流した言葉のいくつかが、誰かの足を動かしていた。


アデリアは外部冒険者を呼ばなかった。


ブラムも信頼できる外部の手を探さなかった。


今はそれでいい。


誰を信じ、誰を信じないかすら曇った夜には、剣より先に嘘を投げてみるべきだからだ。


ブリクセンの路地は、夜になると川のように流れる。


昼には人が道を選ぶが、夜には道が人を選ぶ。


酒場の明かりが明るいほうへは酔った足が集まり、市場倉庫の裏のような暗いほうへは急ぐ足が集まる。


そして本当に隠れたい奴らは、その二つの間にある半分見える道を選ぶ。


明るすぎもせず、深すぎもしない隙間。


人の視線はかすめるが、長くは留まらない場所。


ブラムが路地の壁にもたれて見ていたのも、まさにそういう隙間だった。


干物倉庫の脇。


酒場通りの端。


川辺へ抜けるには速く、人に紛れるには半端な位置。


餌に食いついた奴がいるなら、必ず一度はこれに近い質の道を通る。


そして今、一人が掛かった。


灰色のマントでもない。


表情も平板だ。


歩みも急いでいない。


だがそうやって何の特徴も残すまいとする態度そのものが、ブリクセンではかえって一番目につく。


ブラムは影の中で目だけを動かした。


見知らぬ男は路地を見渡し、干物の匂いにわざと鼻をしかめるふりをすると、ごく自然に体をひねった。


方向は川辺ではない。


川辺へ行くふりをして、二つ隣の路地へ滑り込む。


いい。


本物だ。


警備二人はすでに離れていた。


ブラムの言った通り、近づき過ぎず、離れ過ぎもしないように。


一人は後ろの影、一人は前の路地を回り込む。




ブリクセンの警備がいつも無能なわけではない。


ただ、たいていはわざわざそこまで動かないだけだ。


今日のようにどうしても必要な時には、まだ使える奴らがいた。


ブラムは三つ目の影だった。


見た目には、老いた老人が路地をゆっくり歩いているように見えた。


鼻先の眼鏡もそのままで、肩も普段のように少し曲がっていた。


だがその遅さは本当の遅さではなかった。


年に似合わず足の重さを消し、気配を押さえたことのある者だけが出せる、騙しのような歩み。


ゆっくり歩くふりをしながらも、視線は逃さなかった。


男は一度も後ろを振り返らなかった。


それがなお怪しかった。


尾けられていると知らない奴は後ろを見る。


尾けられているとよく知る奴は、後ろを見ない。


なぜなら後ろを向いた瞬間、視線が生まれ、視線が生まれれば確認になり、確認になれば行動が変わるからだ。


そういう奴ほど、ただ歩く。


普通の人間のように。


ブラムは口の中で短く悪態を噛んだ。


「くそ、当たりか。」


男は酒場通りの端の井戸端をかすめて通った。


その次は雑貨屋裏の狭い通路、そこからまた半分崩れた塀の脇、そして最後には川辺の倉庫地帯のほうへ折れた。


もう明確すぎた。


川辺の船着き場付近の灰色のマント。


流した餌の一つを正確に食った動線。


ブラムの目つきがごくわずかに冷えた。


いい。


一人掛かった。


まだあいつが本当の核心かどうかは分からない。


だが少なくとも、誰かがこの夜のうちにその言葉へ耳を立てたことは確定だ。


同じ時刻。


アデリアはギルド二階の小さな書庫部屋に一人で立っていた。


卓の上には蝋燭が三本。


封筒が三つ。


そしてブリクセンの地図が一枚広げられていた。


北門倉庫の屋根。


川辺の船着き場付近の灰色のマント。


正門左手の宿屋裏の排水路。


嘘であれ半分の真実であれ、今重要なのは内容そのものではない。


誰がどの言葉に反応するか。


その流れが、すなわち人を指し示す。


アデリアは地図の上に指を置いた。


ブリクセンは外から見ればもつれた都市だ。


だが長く見ていれば見えてくる。


誰が市場側の口で。


誰が川辺側の耳なのか。

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