第173話
「それから厨房の連中にも聞け。」
「鳥が妙に集まった時間帯があったかどうか。」
少年はほとんど跳ね上がるように答えた。
「はい。」
いい。
これで都市が少しずつ口を開き始める。
アデリアはそう判断した。
ブラムが再びギルドに戻ってきた時には、夜が完全に降りる直前だった。
彼のブーツの裏には、屋根の埃と馬小屋の藁が一緒に付いていた。
アデリアは廊下の突き当たりの窓辺に立っていた。
窓の外では、ブリクセンの明かりが一つ、また一つと生き返っていた。
灯火と窓明かりと酒場の看板灯が路地ごとにまばらにぶら下がり、都市全体が大きな黒い布の上で針穴のように光っている格好だった。
ブラムが先に言った。
「干物倉庫の屋根から痕跡が出た。」
アデリアは顔だけを向けた。
「話せ。」
「瓦が一枚浮いていて、その下に干し肉の欠片が少し。」
「鳥を引き留めようとした痕跡に見える。」
「鳥類型の使役でも、ただのカラス誘引でも、どちらもあり得るな。」
「それと。」
ブラムは懐から小さな布切れを取り出した。
灰色だった。
長く着て色の抜けた灰色。
端には黒い糸が混じっていた。
アデリアの目つきが少し沈んだ。
ブラムが付け加えた。
「マントの裾が裂けたものらしい。急いで逃げる時に引っかけたんだろう。」
アデリアはその布を受け取り、少しの間、指先でこすった。
普通の布だ。
普通すぎて、余計に腹が立つ。
ブリクセンにはこんな灰色があふれている。
倉庫番も着るし、馬丁も着るし、流れ者も着るし、盗人も着る。
隠れるには一番いい色。
「よし。」
彼女が言った。
「なら、これではっきりしたな。」
ブラムが顎を上げた。
「内側に誰かがいる?」
「いや。」
アデリアは窓の外の明かりを見ながら答えた。
「少なくとも、ブリクセンの内側をよく知る奴がいる。」
二つは似ているが、まったく同じではない。
ギルド内部に手が入っているのか。
あるいは都市の習性と屋根と視線の流れを知り過ぎている誰かが、外から張りついたのか。
それはまだ分からない。
だが少なくとも一つは明らかだった。
これは偶然ではない。
ブリクセンの夜は昼より静かなのに、より多くを語る。
昼には人々の顔の上に表情が多い。
商人の笑み。
ギルド員の苛立ち。
客の値引き交渉。
酔っぱらいの虚勢。
そうしたものが互いにぶつかり合い、音を作る。
だが夜になると正反対になる。
顔は減り、足音が残る。
言葉は減り、ためらいが残る。
ブリクセンのような都市では、そのためらいこそが本当の言葉だった。
アデリアとブラムは廊下の突き当たりの窓辺で、しばし何も言わなかった。
ブリクセンの明かりは下の路地にだんだん深くなっていた。
酒場の看板灯が先に明るくなり、鍛冶場の火は遅く消え、裏路地の窓明かりはいつも中途半端に揺れる。
正直な光より、怪しい光のほうが長く残る都市。
アデリアはそれをとても長く見てきた。
ブラムが先に口を開いた。
「外部の手を借りるか。」
アデリアは窓の外を見たまま答えた。
「駄目だ。」
即答だった。
ブラムは目を細めた。
「早いな。」
「当然だろう。」
彼女はそこでようやく視線を向けた。
「今私たちが追っているのは魔物でも盗賊団でもない。誰がギルドの出陣動線を見ていたのか、誰がブリクセン内側の目線を知っているのか、それを分けているところだ。こんな盤面で外部冒険者を引き入れれば、数は増えるだろう。代わりに口も増える。」
ブラムは短く鼻で笑った。
「信じた奴が裏切ると厄介ということか。」
「厄介で済めばましだ。」
アデリアの声は低かった。
「下手をすれば、私たちが何に気づいたのかから丸ごと渡る。」
ブラムはそれ以上反論しなかった。
彼もまた分かっていた。
ブリクセンで一番危険なのは強い奴ではない。
信じて流した奴だ。
人は警戒している相手には、たいていそこまで騙されない。
問題は、「この程度なら大丈夫だろう」と安心した瞬間だ。
ブラムが尋ねた。
「なら内側だけを使う。内側も全員は信じない。」
アデリアが断ち切った。
「分ける。」
ブラムの口元がごくわずかに動いた。
いい。
ようやく話が通じる。
アデリアは窓辺の手すりを指先で二度叩いた。
「情報を一人の手に全部握らせない。」
「警備は裏門の十二分の空白だけを見る。」
「見習い追跡員は正門左手の屋根三つだけを探る。」
「食堂の給仕側には鳥が集まった時刻だけを聞かせ、馬小屋は灰色のマントの痕跡だけを掘らせる。」
ブラムが顎を撫でた。
「それぞれ自分のパズルだけを握らせるわけか。」
「そうだ。」
「それで?」
「それに一部は嘘も混ぜる。」
ブラムの視線が細くなった。
アデリアはそれを見て、ふっと笑った。
「何だ。」
「ようやく気に入ったか。」
「もともとこういうのは、お前のほうが得意だろう。」
彼女は答える代わりに書類綴じを開き、白紙を三枚取り出した。
一枚には短く書いた。
北門側倉庫の屋根。
別の一枚には。
川辺の船着き場付近の灰色のマント。
最後の一枚には。
正門左手の宿屋裏の排水路。
ブラムはそれを見て眉を上げた。
「一つは本物で、二つは餌か。」
「二つとも必ず偽物である必要はない。」
アデリアが淡々と言った。
「ブリクセンでは、嘘より半分当たっている話のほうがよく漏れる。人々は完全な真実より、『どこかで聞いたことのある話』を信じやすいからな。」
ブラムはそこで短く笑った。
痛いほど正確だ。
この都市の噂は、だいたいそういうふうに育つ。
完全な嘘は遠くまで行けない。
半分だけ当たった嘘だけが、よく回る。




