第172話
まだ幼さが残っていたが、足はなかなか軽い子だった。
「はい、支部長。」
「この屋根から正門までで、一番見通しのいい場所を三つだけ絞れ。」
「はい。」
「それからその三つのうち、今日の昼に誰も視線を向けなかった場所から見る。」
見習いが目を瞬かせた。
「向けなかった場所からですか?」
アデリアは振り向かないまま言った。
「ブリクセンで隠れたい奴は、人のいない場所には隠れない。」
「人目が集まり過ぎる場所の隣、ちょうど一つ外れた場所に隠れる。」
「皆、肝心なそこは見ないからな。」
見習いは息を飲み、すぐ飛び降りるように隣の屋根へ身を投げた。
動きはまだ荒い。
それでも速い。
使える。
アデリアはそういうものを見る目も早かった。
彼女は再び正門前を見下ろした。
今は人々が散り、真昼ほどの賑わいはなかった。
だが賑わいが消えたからといって、視線まで消えたわけではない。
都市は夜が来ると、よりよく見る。
昼には言い訳が多く、夜には理由が多い。
ブラムはギルドの裏門を出ると、そのまま馬小屋へ向かった。
ブリクセンギルドの馬小屋は、いつも匂いが先に迎える。
干し草の匂い。
馬の汗の匂い。
古く積もった革の匂い。
そしてそれを管理する人間たち特有の、自分の仕事以外の他人事は半分ほど知ったふりをする匂い。
馬小屋番の老人はブラムの顔を見るなり顔をしかめた。
「また何事だ。」
ブラムは答える代わりに床を見た。
藁。
足跡。
蹄の跡。
荷車の車輪跡。
そして馬小屋の裏手の壁を伝って上がった、ごく細い土の擦れ跡。
「屋根に上った奴がいるな。」
老人は罵りを飲み込んだ。
「昼に一人見た気はした。」
ブラムがゆっくり顔を上げた。
老人はすでに、自分が口を開くのが遅かったと分かっていた。
だから余計に苛立った顔をしていた。
「なぜ今言う。」
「ギルドの出陣を見物しに上った商人の若造かと思ったんだよ。」
「ブリクセンで屋根に上る奴なんて、どこに一人や二人だ。」
それも正しい言葉だった。
この都市では子供も屋根に上り、使い走りも屋根に上り、盗人も屋根に上る。
問題は、今日が今日だという点だ。
ブラムは手を差し出した。
「どっちだ。」
老人はぶつぶつ言いながら裏壁を指した。
「干物倉庫のほうだ。」
「灰色のマントにも見えたし、ただ汚れたマントにも見えた。」
「顔は見てない。」
「鳥の声が少しうるさくはあったな。」
ブラムの目が細くなった。
「鳥の声。」
「カラスか何かだ。」
だんだん匂ってきた。
ブラムは振り返りもせず、ギルド員二人を呼んだ。
「お前たち二人。」
「干物倉庫の屋根からひっくり返せ。」
「はい。」
「逃げた痕跡が残っていたら隠さずすぐ上げろ。」
ブラムは少し止まり、付け加えた。
「それから屋根の上に餌を撒いた痕跡があったら、削って持ってこい。」
「鳥を呼んだのかもしれんからな。」
ギルド員二人が同時に顔をこわばらせた。
その表情が気に入った。
ようやく状況の匂いを嗅いだ顔だったからだ。
ブリクセンギルド一階、食堂兼休憩室。
夜食の準備が半分ほど始まった時間で、人はほどよくいて、騒音もほどよく広がっていた。
スープ鍋が煮える音、杯のぶつかる音、低く敷かれるささやき声。
その騒音の真ん中に、アデリアはわざと平凡な顔で現れた。
隠す時は、むしろ隠し過ぎないほうがいい。
彼女はそれをよく知っていた。
「マロ。」
名前を呼ばれたのは、皿を拭いていた若い給仕だった。
茶色の髪、痩せた体格、視線の速い子。
今日の昼、正門の近くに立っていた顔でもあった。
少年がびくりと顔を上げた。
「はい、支部長。」
「正門側の窓辺を拭いたな。」
「はい。」
「鳥の糞は多かったか。」
少年は少し止まった。
その停止は長くはなかった。
だがアデリアが見逃すほど短くもなかった。
「少し……」
「ありました。」
「少し?」
「いえ、普段より……」
「ええ、多かったです。」
いい。
ようやく出てくる。
アデリアは平然と隣の椅子に座った。
「どの窓枠だ。」
「正門左上です。」
「色は?」
少年は何度か目を瞬かせた。
「はい?」
「鳥の糞じゃない。」
少年の喉仏が一度大きく動いた。
「その……」
「灰色の粉が少し混じっていました。」
アデリアはうなずいた。
「なぜすぐ上げなかった。」
少年は唇を噛んだ。
「ただの埃だと思いました。」
「嘘だ。」
アデリアの声は低く平らだった。
だがその低さが、かえって冷たい。
少年は結局、視線を落とした。
「変だとは思いました。」
「だろうな。」
「でも……」
「今日は出陣の日で、皆忙しくて、僕が余計に騒がせたら怒られそうで……」
アデリアはその言葉を最後まで聞いた。
そしてごく短く言った。
「次は上げろ。」
少年が慌てて顔を上げた。
叱られると思っていた顔。
だが今必要なのは、恐怖より再教育だ。
アデリアは卓の上を指で一度叩いた。
「ブリクセンで生き残る一番愚かなやり方が何か分かるか。」
少年は凍りついたまま口をつぐんだ。
「変なものを見ても、どうせ自分の仕事じゃないだろうと流すことだ。」
彼女は食堂内の低い騒音を一度見渡した。
「この都市はそれを、あまりにも長く、うまくやってきた。」
少年の顔が赤くなった。
「申し訳ありません。」
「謝罪はいい。覚えておけ。」
アデリアは席を立ちながら言った。
「今日の昼、正門左側の屋根のほうを見た者を全員、名前で書き出せ。」




