第154話
「なぜ皆さん、それを前提に話すのですか」
「君だから」
「社会的信用が底ですね」
「その代わり期待値は高いよ」
マヤはにっと笑った。
「あたしたちが戻るまで医務室をちゃんと守って。あと誰か変な匂いがしたらすぐ隠れて、走らないで、窓を伝わないで、特に……」
彼女は目を細めた。
「面白いことが起きたからって先に首を突っ込まないで」
レオンは少し考えた。
「それはかなり難しい注文です」
マヤが彼の頭を一度くしゃりと撫でた。
「だから耐えな」
リナはもっと直球だった。
彼女はレオンの両肩をつかんで言った。
「私たち、今度こそ本当に金等級取ってくるから」
「はい」
「取ってこられるはずです」
「だから、君がいなくていいって意味じゃないよ」
レオンが目を瞬かせた。
リナは頬を膨らませた。
「変な顔しないで」
「ただ、今回は私たちがやってくるって意味」
「君は戻ってきた時に拍手する準備でもしてて」
レオンはその言葉にふっと笑った。
「いいですね」
「それなら自信があります」
「それと私の武器に触らないで」
「それをなぜ私が……」
リナは目を細めた。
「前に一回触ったじゃん」
「重さが気になっただけです」
「あの時、君の手首が砕けかけたじゃん」
「非常に深く反省しました」
リナは満足したようにうなずいて退いた。
エリンが最後だった。
彼女は薬瓶の包みを一つ、レオンの膝の上にとんと置いた。
「朝、昼、夜」
「薬ですね」
「毒よ」
レオンが固まった。
エリンが無表情で付け加えた。
「冗談」
「鎮痛剤と回復促進剤」
「その冗談はまったく嬉しくありません」
「あなたの顔を見ようと思った」
「よい趣味ではありません」
エリンは小さく鼻で笑った。
「それと、これ」
彼女はとても小さな水晶片を一つ、ベッドの枕元に置いた。
かすかな青い光を帯びた薄い欠片だった。
「非常信号石」
エリンが言った。
「割ればいい」
「遠くにいても、私が感知できるように合わせておいた」
レオンはそれを見て、一瞬言葉を失った。
エリンは視線をそらした。
「無駄に死にそうでも我慢して格好つけたりせず、すぐ割って」
「私をいったい何だと……」
「下手をすると格好つけて死ぬ人間」
今回は本当に反論を諦めた。
レオンは青い水晶片をそっと握り、静かに笑った。
「はい」
「わかりました」
エリンは一拍遅れて、とても小さく言った。
「ちゃんと休んで」
それはほとんど聞こえないほど低かったが、いちばん長く残った。
ついに出発の時間になった。
一行は医務室を出て、ギルドの前庭へ向かった。
レオンもついて出ようとして、アデリアに襟首をつかまれ、一度止められた。
「お前はゆっくり」
「私も見送りくらいはできるのではありませんか」
「それはいい」
ギルドの前はすでに遠征準備で慌ただしかった。
装備箱。
予備の矢。
馬二頭。
補給荷車一台。
槍を持った補助要員四人。
そして掲示板の前に集まってひそひそ話すギルド員たち。
陽はもうかなり高く昇っていた。
建物の屋根の暗い瓦が金色を薄くまとい、広場の石床は朝の冷たさを半分ほど脱ぎ捨てていた。
街はいま目覚めたばかりの獣のように、ゆっくりと体を伸ばしていた。
その中心で、アンブレイカブル・ローズは出陣直前の研ぎ澄まされた静けさをまとって立っていた。
セラ。
青眼の剣狼。
エリン。
氷藍の賢者。
マヤ。
紅尾の矢。
リナ。
破砕猫。
誰が先に囁いたのかはわからないが、ギルド員たちの間でそんな名が風のように広がった。
レオンはそれを聞きながら思った。
そうだ。
あれはもう、十分に強い人たちの名だ。
そして今日は、その名がさらに上へ行く日だ。
アデリアが最後の確認を終え、短く言った。
「出発する」
「目標は群れの上位個体討伐、残存群れの整理、開拓村復旧支援」
「不要な競争心は禁止」
「無理な突撃も禁止」
リナが手を上げた。
「質問」
「何だ」
「必要な競争心はいいよね?」
アデリアが少しの間目を閉じた。
「……ほどほどにしろ」
マヤが笑った。
「じゃあいいって意味だね」
「違う」
セラは短く息を吐き、鞘を持ち直した。
「行く」
そしてちょうどその時、レオンが口を開いた。
「セラ」
セラが振り返った。
レオンは青白い顔で立っていた。
包帯はまだはっきり残っており、姿勢も完全にまともとは言えなかった。
それでも彼は笑っていた。
いつものように。
少し無理をした顔で。
少し寂しそうな顔で。
それでも最後まで明るい顔で。
「金等級昇級」
彼が言った。
「必ず取ってきてください」
マヤが先に笑った。
「当然でしょ」
リナは拳を突き上げた。
「拍手の準備しといて」
エリンは小さくつぶやいた。
「帰ってきてあなたの状態がさらに悪くなっていたら、昇級だろうと何だろうと先に凍らせるから」
レオンはうなずいた。
「恐ろしいですね」
「よく休みます」
セラはレオンを少しの間見た。
そしてほんの少し、本当に目立たないほど口元を上げた。
「待っていろ」
その一言が、妙に深く刺さった。
レオンは答えた。
「はい」
遠征隊が動き始めた。
蹄の音。
荷車の車輪の音。
金属と革が擦れる音。
ギルド前庭の空気がゆっくりと割れた。
セラが最前列。
その後ろにマヤとリナ。
エリンは荷車のそば。
補助要員たちが後に続く。
陽光が彼女たちの背に長く落ちた。
まるで街がほんの一瞬、彼女たちを金色にめっきしてくれているようだった。




