第15話
「内側の警報扉が鳴ったんです。」
「本来なら絶対に開いてはいけない区域なんです。」
「一番危険な封印物がある階でした。」
部屋の空気が一度静かになった。
リリアの声はまだ震えていたが、内容は少しずつ整理されていた。
自分の中で崩れたものを、文章としてつなぎ止めようとする人の声だった。
「最初は内部事故だと思いました。」
「でも、すぐに血の匂いがしました。」
「それから……」
「人が倒れていました。」
「衛兵も、封印師も、記録官も。」
「全員。」
「生きている人はほとんどいませんでした。」
リナの口元から笑みが消えた。
マヤももう冗談めいた表情ではなかった。
「奴らの顔は見た?」
「黒い外套……」
「それから灰色の手袋をはめた男。」
「さっき広場にいたあの人です。」
「彼は私を見ても殺しませんでした。」
「代わりに……」
リリアは胸の箱をさらに強く抱いた。
「これを持っていけと言いました。」
「いえ、私が持っていくように放っておいたんです。」
セラの目が細くなった。
「餌だったわけだ。」
エリンが付け加えた。
「あるいは運搬体。」
リリアの顔が真っ白になった。
「……私もそう思います。」
レオンが静かに尋ねた。
「それでも持って逃げたんですか?」
リリアは長い間答えられなかった。
そしてやがて、崩れないよう歯を食いしばる者の表情で言った。
「誰かが言っていました。」
「あれが開けば終わりだと。」
「その言葉を聞きました。」
「それならなおさら、置いていくわけにはいかないと思ったんです。」
「せめて、奴らの望む場所へは行かせてはいけないと。」
「私は戦えないから……」
「抱えてでも逃げるしかありませんでした。」
その言葉には、英雄らしい荘厳さよりも、手遅れになる前に何かしなければならないという必死の切迫感があった。
だから余計に本物に思えた。
セラはごく短くうなずいた。
「怯えたまま、よくやった。」
リリアの目が大きく揺れた。
褒め言葉と呼ぶには短すぎたが、その短さがかえって本心のように刺さった。
彼女は唇を噛み、視線を落とした。
レオンはその横で心の中で思った。
セラは時々、言葉を惜しんでいるのではなく、言葉を硬く削って投げているようだと。
当たると長く残る種類に。
次の問題は箱だった。
エリンが席を立ち、テーブルの上に三本の蝋燭を三角形に立てた。
それから袋から銀粉と短い白筆を取り出した。
彼女は箱を中心に床へ円を描き、その周囲に小さな印を何重にも重ねて入れた。
線は細く複雑だったが、手つきに迷いはなかった。
青い瞳が次第に冷えていった。
「よし。」
「これで聞ける。」
リナがぱっと手を挙げた。
「怖い話?」
エリンは淡々と答えた。
「かなり。」
「お菓子ある?」
「どうして?」
「怖い話って、お腹が空いてるともっと怖いじゃん。」
マヤが壁に頭を預けて笑いを漏らした。
「この状況でそれが先か。」
レオンが横になったまま手を挙げた。
「私はパンがあるとうれしいです。」
「血を流すとお腹が空きます。」
「これは非常に人間的な現象です。」
セラが無表情に切った。
「我慢しろ。」
「はい。」
会話の温度は一瞬揺れたが、エリンが箱に視線を固定した瞬間、また冷たくなった。
「これはおそらく《亡者の書庫》系統の封印箱よ。」
「正確な製作系統までは分からないけど、少なくとも数百年は経っていて、もっと古い王朝時代の物である可能性が高い。」
「構造がおかしい。」
「単なる箱じゃない。」
「一種の扉であり、釘でもある。」
レオンは一拍遅れて目を瞬かせた。
「扉であり、釘?」
「何かを閉じ込める扉であると同時に、その扉を現実に打ちつけて固定する釘という意味よ。」
エリンは白筆の先で、箱の表面の赤い線を指した。
「中には亡霊、呪い、思念みたいな『死んだ後も死にきれなかったもの』が圧縮されている。」
「問題は、その量が多すぎること。」
「普通、この手のものには一つの怨霊、一つの災厄、一つの儀式が入っているものだけど……」
「これは違う。」
「雑多な悪意が層になって積み重なっている。」
「まるで数百の墓の夜を、一つの箱に押し込んだみたいに。」
リナがすぐに腕をさすった。
「うわっ。」
「たとえがすごく伝わる。」
マヤも顔をしかめた。
「つまり、開いたら?」
エリンは短く言った。
「近くが終わる。」
「どの程度?」
「人が先に狂う。」
「次に死ぬか、死ぬより悪い形で残る。」
宿の一階の蝋燭が、急にさらに小さくなったようだった。
外から聞こえていたざわめきも一瞬遠のいた。
まるで部屋の中の全員が、自分の息遣いだけを聞かされる種類の静寂。
リリアが小さく付け加えた。
「封印庫の記録には別名がありました。」
セラが見た。
「言え。」
リリアは唇を震わせ、ようやく声を出した。
「『夜を刻む棺』。」
その名は説明より先に肌へ触れた。
マヤが小さく悪態をついた。
リナはあからさまに身震いした。
レオンは天井を見上げてつぶやいた。
「名前もずいぶん親切ではありませんね。まったく開けたくない名前です。」
エリンがうなずいた。
「まともな感想で安心したわ。」
彼女は再び箱を見た。
「問題は、これがなぜ今反応しているかよ。」
「衝撃だけが原因じゃない。」
「血、恐怖、敵の術式、封印の緩み。」
「いくつもの条件が重なったんでしょうけど……」
「奴らの狙いは単なる奪取ではないのかもしれない。」




