第15話
リリアはその短いやり取りを見て、緊張が糸一本分だけほどけたように息を吐いた。
だが、すぐにまた表情が暗くなった。
「三日前の夜でした。」
「封印庫の地下で点検記録を照合していたら……」
「内側の警報扉が鳴ったんです。」
「本来なら、絶対に開いてはいけない区画なんです。」
「最も危険な封印物がある階でした。」
部屋の空気が一度静かになった。
リリアの声はまだ震えていたが、内容は少しずつ整理されていた。
自分の中で崩れたものを、文章で縛り留めようとする人の声だった。
「最初は内部事故だと思いました。」
「でも、すぐに血の匂いがしました。」
「それから……」
「人が倒れていました。」
「警備兵も、封印師も、記録官も。」
「全員。」
「生きている人は、ほとんどいませんでした。」
リナの口元から笑みが消えた。
マヤも、もうふざけた表情ではなかった。
「やつらの顔は見た?」
「黒いマント……」
「それと灰色の手袋をした男。」
「さっき広場にいた、あの人です。」
「彼は私を見ても殺しませんでした。」
「代わりに……」
リリアは胸の箱をさらに強く抱いた。
「これを持って行けと言いました。」
「いえ、正確には、私が持って行くように見逃したんです。」
セラの目が細くなった。
「餌だったか。」
エリンが付け加えた。
「あるいは運搬体。」
リリアは顔を真っ白にした。
「……私も、そう思います。」
レオンが静かに尋ねた。
「それでも、抱えて逃げたんですか?」
リリアはしばらく答えられなかった。
そしてやがて、崩れまいと歯を食いしばる人の顔で言った。
「誰かが言ったんです。」
「あれが開いたら終わりだって。」
「その言葉を聞きました。」
「だったら、なおさら放っておけないと思いました。」
「少なくとも、やつらが望む場所へは行かせてはいけないと。」
「私は戦えませんから……」
「抱えてでも逃げるしかありませんでした。」
その言葉には、英雄らしい荘厳さよりも、手遅れになる前に何かしなければならないという必死な切迫があった。
だからこそ、より本物らしかった。
セラはごく短くうなずいた。
「怯えながら、よくやった。」
リリアの目が大きく揺れた。
褒め言葉と呼ぶには短すぎる言葉だったが、その短さがかえって本心のように刺さった。
彼女は唇を噛み、視線を落とした。
レオンはその横で心の中で思った。
セラは時々、言葉を惜しむのではなく、言葉を硬く削って投げているのだと。
当たると長く残る種類に。
さて、問題は箱だった。
エリンが立ち上がり、卓の上にろうそくを三本、三角形に立てた。
それから袋から銀粉と短い白筆を取り出した。
彼女は箱を中心に床へ円を描き、その周囲に小さな印を何重にも重ね入れた。
線は細く複雑だったが、手つきに迷いはなかった。
青い瞳が少しずつ冷えていった。
「よし。」
「これで聞ける。」
リナが勢いよく手を上げた。
「怖い話?」
エリンは淡々と答えた。
「ものすごく。」
「おやつある?」
「どうして?」
「怖い話って、お腹が空いてるともっと怖いでしょ。」
マヤが壁に頭を預けて笑いを漏らした。
「この状況でそれが最初に来るのか。」
レオンが横になったまま手を上げた。
「私はパンがあると嬉しいです。」
「血を流すとお腹が空きます。」
「これは非常に人間的な現象です。」
セラが無表情で切った。
「我慢しろ。」
「はい。」
会話の温度は一瞬揺れたが、エリンが箱に視線を固定した瞬間、再び冷たくなった。
「これはおそらく《亡者の書庫》系統の封印箱よ。」
「正確な制作系統まではわからないけれど、少なくとも数百年は経っていて、帝国北部ではなく、もっと古い王朝時代の品である可能性が高い。」
「構造がおかしい。」
「ただの箱じゃない。」
「一種の門であり、釘でもある。」
レオンは半拍遅れて状況を受け止めた。
「門であり、釘?」
「何かを閉じ込める門であると同時に、その門を現実に打ちつけて固定する釘という意味よ。」
エリンは白筆の先で、箱の表面の赤い線を指した。
「中には亡霊、呪い、思念みたいな『死んだ後も死んでいないもの』が圧縮されている。」
「問題は、その量が多すぎること。」
「普通、この手のものには、一つの怨霊、一つの災厄、一つの儀式が入っているんだけど……」
「これは違う。」
「雑多な悪意が層になって積み上がっている。」
「まるで数百の墓の夜を、一つの箱に押し込めたみたいに。」
リナがすぐに腕をさすった。
「うわあ。」
「例えがすごく伝わる。」
マヤも顔をしかめた。
「つまり、開いたら?」
エリンは短く言った。
「近くが終わる。」
「どの程度?」
「人がまず狂う。」
「次に死ぬか、死ぬより悪い形で残る。」
沈黙。
宿屋一階のろうそくが、急にさらに小さくなったようだった。
外から聞こえていたざわめきも、一瞬遠のいた。
まるで部屋の中の全員が、自分の呼吸音だけを聞くようになる種類の沈黙。
リリアが小さく付け加えた。
「封印庫の記録には、別名がありました。」
セラが見た。
「言え。」
リリアは唇を動かし、ようやく声にした。
「『夜を刻む柩』。」
その名は、不思議なことに説明より先に肌へ触れた。
マヤが小さく悪態をついた。
リナはあからさまに身震いした。
レオンは天井を見ながらつぶやいた。
「名前も実に親切ではありませんね。」
「まったく開けたくない名前です。」
エリンがうなずいた。




