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第145話

「なのにギルド側の記録がまったくなければ、後で何かが起きた時、むしろレオン側が説明する言葉を失う」


マヤがうなずいた。


「そうだね」


「隠すことは必要だけど、何の準備もなく隠すのは、裸で雨に打たれるのと変わらない」


アデリアが三枚目の紙を指した。


「三つ目、メインクラスとサブクラスを分けて使う」


リナが首を傾げた。


「それって何?」


アデリアの指が四枚目の紙、つまり調査結果の横に置かれた整理表を軽く叩いた。


「表に前面で出るメインクラスと、内側につくサブクラスを分けて書くということだ」


「この体系自体は特別なものじゃない」


ブラムが鼻で笑った。


「お前たち、金等級、銀等級の冒険者で合っておるのか」


「その程度の等級なら、サブクラスくらい覚えているはずだが?」


リナが目を丸くした。


「え?」


「私にもあったの?」


アデリアが淡々と付け加えた。


「原則として、メインクラスの下にサブクラスを置ける。ただ、皆がそうして生きているわけじゃない。長く使わなければ忘れることもあるし、そもそも必要がなくてメインだけで終わらせる場合も多い」


マヤが一瞬目を細めた。


「……あ」


「登録の初期に説明を聞いた覚えはある」


「その後は、あえて使うことがなかったね」


エリンも眉間をほんの少し押さえた。


「私は登録していない」


「メインだけで十分だったから」


リナは一拍遅れて口を開けた。


「待って、ぼんやり覚えてる」


「プレート鑑定が終わって、ブラム爺さんが『前に見えるものだけがお前の職ではない』みたいなことを言ってた」


「でも私、ただ忘れてたみたい」


ブラムは不満そうな顔で鼻を鳴らした。


「今さら思い出したか」


マヤがふっと笑った。


「そりゃあるでしょ」


「リナが自分のプレートを食器の台として使うことの方が多いのが問題なだけで」


アデリアが再び言葉を継いだ。


「レオンはすでに『生還者』というクラスを得ていて、その事実も知っている」


「だからその名前そのものを隠したり消したりする意味はない」


マヤが目を細めた。


「じゃあ変えるのは何?」


ブラムが先に答えた。


「表に掲げるメインを取り直す。生活記録、運搬記録、戦場補助記録まで鑑定室で合わせ直してみれば、『荷物持ち』の方が十分に出る。そして既存の『生還者』はサブクラスとして内側につける」


リナはしばし口だけを開けた。


「あ」


「クラスが消えるんじゃなくて、前後が入れ替わるってことだね?」


「そうだ」


アデリアは最後の書類をもう一枚引き寄せた。


「そしてもう一つ」


「等級は当分縛る」


リナがすぐ反応した。


「え?」


「なんで?」


アデリアは平然としていた。


「レオンは今、実績だけを見れば青銅からさらに上がってもおかしくない」


「問題は、それが目立つことだ」


「経歴、出自、戦闘様式が全部怪しいのに、昇級速度まで異常なら、必ず掘り始める者が出る」


エリンが低くつぶやいた。


「そうね」


「今は強くなることより、見えにくくすることが優先だわ」


セラが短く尋ねた。


「どれくらい」


アデリアが答えた。


「少なくとも今回の北部の件とギルド地下の件の痕跡が少し冷めるまで。公式には『功績累積審査保留』としておく。昇級させる程度の実績は積ませるが、帳簿上では緩やかに抑えておく」


マヤが目を細めた。


「抑えたせいで後で余計に変になるのは?」


「だから永遠にはしない」


アデリアの声は断固としていた。


「完全に隠すのではなく、時差を置くんだ」


「後で上げる時にも記録が途切れないように、実績と理由は全部残す」


「そうすれば後でレオン側が損をしない」


ブラムもゆっくりうなずいた。


「よい帳簿とは、嘘をつくものではなく、真実が飛び出す順番を調整するものだ」


リナがしばらく考え込んでからつぶやいた。


「うーん……」


「よくはわからないけど、とりあえずレオンが急にぴかぴかした冒険者みたいに見えちゃ駄目ってことだよね?」


マヤがふっと笑った。


「うん」


「今のあいつは、目立ちすぎちゃいけない」


セラが短くまとめた。


「等級は縛り、記録は残す」


アデリアがうなずいた。


「そうだ」


「完全には隠せない」


「代わりに、後で困らないよう残すべきものはすべて残す」


会議はそこで終わらなかった。


今、最も嫌な議題が残っていた。


アデリアは帳簿を閉じ、新しい紙を引き寄せた。


「次」


「生還者はなぜ治癒魔法なしで耐えるのか」


エリンが頬杖をついた。


「レオンが聞いていたわね」


セラの視線がごくわずかに動いた。


アデリアがうなずいた。


「ああ」


「そしてその質問は、私も予想していた」


マヤが窓際から身を離して言った。


「正直、私も気になってた」


「魔法はあって、呪術もあって、氷も火も幻影も全部あるのに、どうしてまともな治癒魔法だけないのかって」


エリンが指で卓を軽く叩いた。


「ないわけじゃない」


「ただ、あなたたちが考えている意味での『治癒』がないのよ」


リナが首を傾げた。


「それってどう違うの?」


エリンは面倒そうな顔をしながらも、説明は正確だった。


「今私たちが使うのは、止血、痛みの緩和、回復促進、浄化、腐敗抑制、毒の分解」


「全部合わせれば、おおよそ『治癒のようなもの』になる」

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