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第142話

そしてそんな夜、ギルド三階の会議室には六人と一冊の古い帳簿が上がってきていた。


レオンはいなかった。


下の階の休憩室のベッドに放り出されていた。


エリンが直接飲ませた薬が効いていて、マヤが無理やり押し込んだパンも腹の中に入り、リナが持ってきた妙な人形が一つ枕元に置かれていた。


セラは確認までしてから上がってきた。


呼吸は安定。


熱もなし。


今すぐ死にそうな気配もなし。


それをすべて確認したのに、会議室に入った後のセラの表情はあまりよくならなかった。


アデリアはそれを見ても知らないふりをした。


彼女は会議室中央の長い卓の上に、古い帳簿といくつかの書類綴りを広げていた。


その手つきは相変わらず速く、相変わらず迷いがなかった。


灰色の髪の先が灯りを薄く含み、目の下の影は今日一日が長かったことを静かに証明していた。


マヤは窓際にもたれていた。


腕を組み、片足だけを引っ掛けた姿勢。


見た目は緩かったが、視線は一度も緩んでいなかった。


リナは椅子に座っては二度ほど立ち上がり、三度ほどまた座った。


じっとしている才能がない人間特有のそわそわだった。


エリンは椅子の背にもたれたまま、帳簿を睨んでいた。


まるでそのページたちが自分から口を開き、面倒な真実を吐き出すのを待っている顔だった。


そしてその横には、老人がもう一人いた。


ギルド鑑定室担当、ブラム。


乾いた胡桃のような顔は相変わらずで、眼鏡は今日も鼻先で危うく持ちこたえていた。


今日は背中に箱を背負ってはいなかったが、代わりに指先には古いインクの匂いと水晶粉の匂いが染みついていた。


のろく見える人間なのに、いざいるべき場所ではいつも先に来ている類い。


時間より古い埃と、より親しい顔だった。


ブラムは会議室の椅子に斜めに座り、無言で帳簿をめくっていた。


まぶたは半分ほど下りていたが、文字を読む速さは部屋の誰よりも速かった。


セラは一番端の席に座った。


座ったとはいっても、実質すぐに立ち上がれる姿勢だった。


アデリアが先に口を開いた。


「始めよう」


その一言で部屋の空気が変わった。


リナが勢いよく手を上げた。


「会議、長くかかる?」


マヤがすぐに突っ込んだ。


「始めた瞬間にその質問?」


「大事でしょ」


「お腹すいた」


エリンが無感情につぶやいた。


「あんた、一階でパン三つ食べたでしょ」


「それは下の階の私で、今の私は新しくお腹がすいてるの」


アデリアがこめかみを押さえた。


「いい」


「長引かせない」


「その代わり、大事なことだけ正確にやる」


その言葉に、リナは口をつぐんだ。


完全にではなく、半分だけ。


アデリアは帳簿を開いた。


埃がごくわずかに舞った。


その帳簿は妙な匂いがした。


古い紙の匂い、乾いた革の匂い、そして長く隠されすぎた話に特有のかび臭い匂い。


誰かがわざと忘れたがっていた記録の匂いだった。


「ギルド中央保管庫から引き出した非公開分類だ」


「等級は灰色封印」


「支部長以上のみ閲覧可能」


マヤが眉を上げた。


「今日みたいな日にこそ聞きたくない言い方だね」


「私も同感だ」


アデリアはページをめくった。


「項目名は『生還者』」


セラの視線がごくわずかに下がった。


エリンは片目を細めた。


リナは首を傾げた。


「それ、レオンのだよね?」


アデリアがうなずいた。


「そうだ」


そして付け加えた。


「正確に言えば、レオンが持つスキル名ではなく、レオンのような存在を呼ぶ古い分類名だ」


その時、初めてブラムが鼻で笑うような息を漏らした。


「わしが出した名だ」


リナはしばし口だけを開けた。


「あ」


「そうだ」


「最初にその帳簿を見つけたの、ブラム爺さんだったね」


ブラムは不満そうな顔でリナを睨んだ。


「爺さんと呼ぶな」


「まだ手は震えとらん」


「それがもっと爺さんっぽい台詞なんだけど」


マヤがつぶやいた。


アデリアはそこで、すぐ次のページへは進まなかった。


彼女は帳簿の横に別に積んでおいた書類綴りを、指先で押して見せた。


「以前、私が一度、調査中だとだけ言って切った部分があっただろう」


「それを今話す」


ブラムも低く付け加えた。


「鑑定記録の方はわしが漁った」


「アデリア一人でやったわけではない」


マヤが窓際から少し身を離した。


リナも今度はふざけなかった。


アデリアの声はさらに低くなった。


「ベルハルトの件以降、中央保管庫、北部戦争記録、閉鎖された封印事故報告書、そしてギルド内部の失踪者名簿まで調べた」


「生き残った者たちの共通点を探すために」


エリンが目を細めた。


「どこまで出たの」


「疑いのある事例は七つ」


アデリアが書類綴りを軽く叩いた。


「そのうち半分は記録が損壊し、二つは誰かが意図的に名前を消していた」


「まともに比較できるのは三つだ」


セラの視線がごくわずかに動いた。


アデリアは一枚ずつめくりながら言った。


「一つ目は北東部城塞崩落の生存者」


「救助当時十四歳」


「埋没と呪いの侵食、その両方に耐えた」


「その後、王室が回収」


「二つ目は西部岩塩坑埋没事故の生存者」


「三日間、毒霧と怨念の残滓にさらされたが死ななかった」


「その後、聖職勢力が保護名目で隔離」


「三つ目は旧国境戦争後の補給隊所属の生存者」

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