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第131話

ベルハルト側の控室の扉の前には、リリアとエドモンドが先に来ていた。


リリアは一晩中ひと息も眠れなかった顔をしていた。


ウサギの耳は力なく垂れ、組んだ手は白く血の気を失っていた。


エドモンドはまだ病の色を残していたが、背筋を伸ばして立っていた。


貴族らしい品位というより、崩れてはいけない人間が無理に骨を立てている姿勢だった。


彼らは担架が来る音を聞くと、同時に顔を上げた。


リリアの顔から、最後の希望のようなものがゆっくり消えていった。


彼女は口を開いたが、すぐに閉じた。


何も言葉が出てこない顔だった。


エドモンドが先に一歩前へ出た。


「……マルセラ君。」


アデリアが短く頭を下げた。


「はい。」


「最期はギルドの地下で迎えました。」


その直後、レオンが先に口を開いた。


喉が詰まっていて、最初の声が少し割れた。


「……その前に、お伝えしなければならない言葉があります。」


リリアとエドモンドの視線が同時に彼へ向いた。


レオンは少し唇を噛んだ。


ついさっきまでどうしても整理できなかった言葉を、今度は間違えずに口にしなければならなかった。


「マルセラが最後に……」


「リリアさんとエドモンド様に伝えてほしいと言っていました。」


一瞬、息が詰まった。


それでも彼は最後まで言った。


「すまない、と言っていました。」


レオンはそこで止まれなかった。


目の前に、最期の瞬間のマルセラの顔があまりにも鮮明に残っていたからだ。


「………笑うこともできず、言い訳もできませんでした。」


「ただ、すべてが終わりかけている顔で……」


「それでもその言葉だけは必ず伝えてほしいと。」


「必ず、と。」


その一言は剣よりも遅く入り込み、だからこそ深く突き刺さった。


リリアの目が大きく揺れた。


エドモンドの固い顔も、ほんの一瞬崩れた。


レオンは視線をそらせないまま、さらに低い声で付け加えた。


「言い訳のように聞こえるかと思って、それ以上は言えませんでした。」


「ただ……」


「必ず伝えてほしいと。」


「リリアさんにも、エドモンド様にも。」


エドモンドは白い布に覆われた形をしばらく見つめた。


彼の顔は驚くほど硬かった。


驚きも怒りも涙も、すぐには表に出なかった。


代わりに古い屋敷の扉のように、内側で何かが壊れる音だけが静かにしている顔だった。


リリアがゆっくり近づいた。


手が震えていた。


彼女はマルセラの顔を覆う布の端を、慎重にめくった。


そして、そのまま止まった。


「……あ。」


その短い息の音には、あまりにも多くのものが入っていた。


裏切られた思い。


怒り。


信じられないという思い。


それでも幼い頃から屋敷でずっと見てきた人を失ったという喪失。


リリアの肩が一度大きく震えた。


だが、彼女は泣き崩れなかった。


代わりに、ほとんど自分を説得するように、マルセラの髪を耳の後ろへとゆっくり流してやった。


生きていた時とまったく同じ手つきだった。


それがかえって痛かった。


エドモンドはしばらく何も言わなかった。


その沈黙のほうが、むしろ重かった。


軽々しく憎しみとも、許しとも呼べないものが、彼の顔の上をとてもゆっくり通り過ぎていった。


アデリアが静かに付け加えた。


「最後には、灰色手袋を押さえるほうを選びました。」


リリアの耳がかすかに震えた。


エドモンドは目を閉じ、それからとてもゆっくり開いた。


「……あの子らしくもなく、最後になってようやく素直になったのだな。」


その言葉のあと、誰も簡単には口を開けなかった。


正解でもなく、慰めでもなく、許しでもなかった。


ただ残された者たちがようやくつかめる、いちばん薄い結論だった。


リリアがついに頭を下げた。


「叔父様…」


「私、私、マルセラを憎んでいました。」


「本当に、たくさん。」


「でも……。」


言葉が途切れた。


エドモンドが静かに彼女の肩へ手を置いた。


「それでも、悲しいだろう。」


その一言で、リリアはとうとう泣いた。


声を上げて大きく泣くのではなく、息をこらえて、最後には崩れてしまった人のように。


肩が細かく震え、唇が歪み、涙が遅れて、遅れて落ちた。


ウサギの耳が力なく下がった。


レオンはその光景を見て、視線を下ろした。


そこまでは耐えられると思っていたわけでもなかった。


耐えるという感覚そのものが薄かった。


リリアが泣いていることも、エドモンドが静かに立っていることも、セラとアデリアが現実的な顔で次の仕事を支えていることも。


すべて目には入っていたのに、不思議とすべて薄い膜の向こう側の出来事のようだった。


音も少し遠かった。


人が泣いているのに、その泣き声が胸へまっすぐ来ず、どこかで一度ねじれて入ってくるような感じ。


そのとき、マルセラの手が見えた。


白い布の下から半ばのぞいた指先。


最後まで何かを握りしめようとしていた形のまま、少し曲がって止まった手。


その瞬間、レオンの内側が空っぽになる感覚がした。


何かが切れたというより、中に詰まっていたものが一瞬で全部抜けていったように。


たいした言葉でもなく、大げさな光景でもなかった。


ただ、指先ひとつを見た瞬間。


ああ、この人は本当に終わったんだ。


本当にもう二度と罵ることも、嘲ることも、怒ることも、崩れる機会さえもないんだ。


その事実だけがあまりにも鮮明に残り、ほかは全部空っぽになってしまった。


レオンは一歩後ろへ下がった。


息が詰まったわけでもなく、涙がすぐ出たわけでもなかった。


むしろ、何の感覚もないほうに近かった。


胸の中が、あまりにも静かだった。

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