表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
129/132

第129話

「今回は……他人の力を借りなかったじゃない」


セラは一瞬答えなかった。


そしてとても低く言った。


「ああ」


その一言で十分だった。


マルセラはその言葉を聞いて、目を閉じてからまた開けた。


今度はレオンのほうへ。


「あなたも」


レオンが頭を下げた。


「はい」


「当てた」


彼女が荒く息をしながら、笑いに似たものを漏らした。


「本当に……」


「気持ち悪いくらい、よく当てるわね」


マルセラはごく一瞬目を閉じてから、また開けた。


「リリアお嬢様にも……」


「エドモンド様にも……」


息が一度つかえた。


レオンは彼女の手をさらに固く握った。


マルセラは途切れる息の合間に、やっと言葉を続けた。


「ごめんなさいと……」


「伝えて」


レオンは乾いた笑いを飲み込んだ。


今そんなことを言われると、奇妙に怒ることもできない。


よくない。


かなり。


マルセラの指がほんの少し動いた。


レオンは迷ってから、その手を握ってやった。


冷たくはなかった。


まだ。


だがすぐにそうなりそうで、余計に嫌だった。


彼女がとてもかすかに言った。


「放さないで」


レオンはすぐに答えた。


「放しません」


それはほとんど反射だった。


思考より先に出た。


マルセラはそれを聞き、初めて完全に嘲りのない顔をした。


ほんの一瞬、ただ疲れた人のようだった。


廊下ではなおも、遠くから戦闘音が続いていた。


だがこの場所だけは、奇妙に静かだった。


まるでたった今大きな波が一度押し寄せて去った場所で、水がごく一瞬息を整えるような静けさ。


アデリアが静かに尋ねた。


「エリン」


エリンは最後まで答えられなかった。


指先だけがさらに震えた。


それが答えだった。


リナは深くうなだれ、マヤは悪態を飲み込むように舌を噛んだ。


セラはなおもその場に立っていた。


剣先から黒い水が一滴ずつ落ちた。


マルセラはレオンの手を握ったまま、とてもゆっくり息を吐いた。


「レオン」


「聞いています」


「嫌だった」


彼女がつぶやいた。


「最後まで……」


「全部嫌だった」


レオンは静かに答えた。


「分かります」


「でも」


彼女の息が一度つかえた。


首の後ろの黒い痕が、もう少し広がった。


「これは……」


「嫌じゃない」


レオンはその言葉の意味を尋ねられなかった。


聞かなくても分かる気がして、かえって嫌だった。


よくない。


本当に。


だが彼は手を放さなかった。


マルセラは最後に、目を上げて天井を一度見た。


濡れた石。


濁った松明の光。


ひび割れていく影。


そしてまたレオンを見た。


「守って」


彼女がささやくように言った。


「最後まで……あなたの目の前で……あんなふうには死なないように……」


言葉が終わる前に、息が揺れた。


レオンはもう少し身をかがめた。


「はい」


だが、それだけでよかった。


マルセラの口元がほんの少し上がった。


達成感だった。


奇妙で、歪んでいて、血まみれの。


それでも確かな達成感。


最後の一歩を、ついに自分の手で越えたという満足。


その顔をしたまま、マルセラはレオンの腕の中でゆっくり冷えていった。




ギルド地下の廊下には、まだ黒い灰の匂いと血の匂いと濡れた石の匂いが絡み合っていた。


上階では誰かがまだ戦っていて、遠くからはマヤがまた悪態をつく声がした。


リナは鈍器を握ったまま顔を上げられず、エリンは最後まで手を引けなかった。


セラは沈黙したまま立っており、アデリアはマルセラの顔を一度、灰色手袋が消えた床を一度見た。


だが、そのすべての騒音と匂いの真ん中で、レオンだけは動かなかった。


彼は最後までその場に残り、マルセラのそばを守った。


彼女の手から完全に力が抜けるまで。


息がだんだん細くなり、ほとんど聞こえなくなるまで。


まぶたがもう上がらなくなるまで。


そしてそこでようやく、彼の目の前に文言が浮かんだ。


【状況更新】


【灰色手袋重傷と推定】


【マルセラ致命傷】


【個人的感想:……自分でやり遂げましたね】


レオンはその文言を長く見なかった。


ただごく小さく、誰かに聞かせるためでもない声で言った。


「はい」


「やり遂げました」


それは灰色手袋へでも、セラへでも、ギルドへでもなかった。


マルセラ一人にだけ届く言葉だった。


そしてギルドの夜は、一人の最後の息とともに、まだ終わらない復讐とさらに深まった闇を抱えたまま、少しずつ重く次の夜明けのほうへ傾き始めた。


ギルド地下の空気は、ついさっきまで人の命と悪意と決意が互いの首を絞め合っていた場所らしく、重く沈んでいた。


天井近くに浮かんでいた魔力灯はいくつか割れており、残った灯りでさえ濡れた芯のように危うく揺れていた。


石壁には黒く焼け焦げた跡と血が混ざっており、床には砕けた封印板の欠片と切れた縄、倒れた机の脚が絡み合っていた。


ついさっきまで怒号と金属音と呪文の声で震えていた通路は、今や静かすぎて、かえって耳が痛いほどだった。


その静けさの真ん中に、マルセラが横たわっていた。


横たわっているというより、最後にもう一度何かを掴もうとして、そのまま止まった人の姿勢だった。


指先は半ば固まっており、口元には血が乾いてこびりついていた。


死んだ後というより、死ぬ直前までついに諦めなかったというほうが、先に目に入る顔だった。


レオンはその場でしばし動けなかった。


膝がまだ床についていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ