第12話
彼女は笑っていたが、目は冷たかった。
リナは正反対だった。
彼女は嵐のように正面にいた。
鈍器が振るわれるたび、空気がへこむような感覚がした。
前腕で受ければ肩が痛み、武器で受ければ手首が痺れた。
一人の追っ手がリナの正面を受け止め、そのまま二歩後ずさって顔を歪めた。
「なんだ、この怪力」
「いっぱい食べてるから!」
まったく役に立たない答えとともに、鈍器がまた飛んだ。
エリンは後ろを守った。
彼女の魔法は、派手に空を覆う類のものではなく、必要な瞬間、必要な場所に正確に入る冷たい手のようだった。
地面を凍らせ、視界を濁し、突っ込んでくる者の足首だけを縛る。
彼女は決して過剰には使わなかった。
その代わり、一度使えば正確だった。
レオンは……
まっすぐ果物箱を蹴り飛ばした。
リンゴと梨が広場の床にどさどさとこぼれた。
その上を走っていた追っ手二人が同時に滑った。
一人は尻もちをつき、もう一人はさらに惨めなことに、前へ突っ込んでいた仲間の腰へ顔を突っ込んだ。
レオンが叫んだ。
「いいですね!」
「果物はやはり健康に悪い!」
マヤが叫んだ。
「その文章、どこか間違ってる気がするけど効果はあるね!」
次の瞬間、一本の鎖がレオンの方へ飛んできた。
レオンは避けようとして、足でリンゴを踏んだ。
滑った。
ひゅっ。
鎖が頭上をかすめた。
【転倒判定】 【回避成功率上昇結果の適用完了】
レオンは滑ったついでに蝶番をつかんで引き抜いた。
ずしりと重い鉄塊だった。
彼は身を起こしながらそれを投げた。
蝶番は回転しながら飛び、鎖を振るっていた男の額を打った。
こつん。
男はあまりにも呆然とした顔で後ろへ倒れた。
レオンも呆然とした。
「最近は、だんだんがらくた専門家になってきていますね。」
エリンは表情一つ変えずに言った。
「そもそも君の専門分野はそれだったよ。」
一方、リリアは箱を抱いたまま息を整えていた。
問題は、その箱そのものだった。
戦闘が激しくなるほど、黒い金属の表面に走る赤い線がより鮮明になっていった。
まるで生きた傷が、少しずつ開いていくようだった。
周囲の空気も少しずつ冷たくなった。
いや、冷たいというより空になっていく。
笑い声、悲鳴、足音が、箱の近くに来るとごくわずかに食われるような感覚。
エリンの顔色がさらに悪くなった。
「リリア。」
「それ、どうして反応してるの?」
リリアが震える声で答えた。
「わかりません……」
「さっきから、どんどん熱くなって……!」
「熱いって?」
エリンは悪態を飲み込んだ。
「よくない。」
「ものすごくよくない。」
男はその言葉を聞いて、むしろ口元を上げた。
「やはり封印の亀裂が早まっていますね。」
「血の匂いと衝撃のせいでしょうか。」
「興味深い。」
レオンが叫んだ。
「興味深がらないでください!」
「ここには当事者が多すぎます!」
男はついに初めて、レオンをまっすぐに見た。
「あなた、滑稽なだけかと思っていましたが、騒がしくもあるのですね。」
【「取るに足らない」判定を感知】 【補正上昇】 【蓄積値活用効率上昇】
レオンは一瞬、歯を見せて笑った。
「ありがとうございます。」
「私の長所はなかなか多彩なんです。」
男の手が上がった。
それと同時に、まだ後ろに残っていたマント二人がリリアへ一直線に入り込んだ。
速すぎた。
セラは正面、リナは右、マヤは遠距離の阻止中だった。
エリンが振り向くには、刹那が足りなかった。
つまりこれは、本来なら止める者がいない角度だった。
レオンは考えるより先に動いた。
いや、ほとんど考えていなかった。
彼はリリアへ向かって体を投げ出した。
本当に、文字どおり投げ出した。
二人を押し倒し、自分の背中が前に来るようにした。
一本の刃先が肩をかすめた。
もう一本は彼の脇腹を引っかいた。
痛かった。
ものすごく痛かった。
レオンは歯を食いしばった。
「あ、はい。」
「痛いです。」
「ものすごく痛いです。」
リリアが下で息を呑んだ。
「どうして……!」
レオンは顔をしかめたまま笑った。
「わかりません。」
「体が先に動きました。」
「たまにこうなります。」
その瞬間、スキルが反応した。
【味方保護行為を確認】 【被撃反映】 【蓄積値変換加速】
体の奥で熱が一気に沸き上がった。
さっきより鮮明で、さらにまっすぐだった。
レオンは自分を刺した男の腕をつかんだ。
相手が鼻で笑った。
「離せ。」
【「取るに足らない」判定を感知】 【累積補正重複】
「嫌です。」
レオンが放った頭突きは、ひどく不格好だった。
技術などなかった。
ただ近かったからぶつけた。
なのに、それが妙に強かった。
相手の鼻が潰れ、後ろへよろめいた。
レオンは自分の額も割れそうなほど痛かったが、その隙に地面に落ちた短剣を蹴った。
短剣は滑っていき、もう一人の足首に突き刺さった。
男が悲鳴を上げた。
セラがその刹那を逃すはずがなかった。
剣光が閃いた。
二人の武器が同時に床を転がった。
リナが遅れて振り返り、叫んだ。
「レオン!」
「生きています!」
「今のところは!」
マヤが矢を放ちながら、にっと歯を見せた。
「今のところって言うな!」
エリンはすでにリリアのそばに来ていた。
彼女は箱の上に手を置くこともできず、宙に広げたまま、とても速く何重もの封印式を重ね描いた。
青い光の線が箱の周囲を包んだ。
赤い線と青い線が、互いに噛み合うようにぶつかった。
「耐えて。」
「耐えて、耐えて……」
「ああ、本当に性格悪いわね。」
エルフらしい品はあったが、表現はかなり率直だった。




