表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/133

第118話

足音が何度かさらに行き交い、リナが低く荒い声で悪態をつく音が階段を伝って流れ落ちてきた。


その後になって、ようやく本当の静寂が降りた。


だがその静寂は終わった後のものではなく、全員が同じことを確認してしまった後の沈黙だった。


襲撃に来た信徒二人は、結局生きて捕まらなかった。


一人は手すりと自分の顔を何度も狂ったようにぶつけた末に頭蓋骨が割れ、もう一人は隠し持っていた黒い釘のようなものを口の内側に突き刺したまま笑い、喉の中を血と泡で満たしたまま死んだという。


捕まるくらいなら、自分で壊れるほうを選んだのだ。


その狂気が、かえって灰色眼球会の底がどれほど深いのかをよりはっきり見せていた。


だから今マヤが引きずってくる男は、さっき上階で捕まえた奴ではなかった。


そもそもギルドが別に縛っておいた、灰色眼球会の手先だった。


レオンの誘拐と染色倉庫側の件に手を出した実務担当。


今夜の件が起こる前から別の部屋に放り込んでおき、順番だけを後回しにしていた奴。


そのとき、マヤが廊下の端の角を先に曲がって入ってきた。


彼女は外套の端に埃をつけたまま、右手でその男の髪を乱暴につかんでいた。


男は半ばずるずると引きずられてきた。


顔はすでに半分ほど血まみれで、口元には血と唾が混じっていた。


片耳の下が裂け、右手の人差し指はどこかおかしく曲がっていた。


生きてはいた。


だがその生が、まったく長く続きそうにない種類のものだった。


リナはその後ろで、苛立ちと自慢が半分ずつ混ざった顔で言った。


「上にいた信徒たちは捕まえられなかった。捕まる前に自分たちで壊れた。代わりにこれは殺してない」


「本当に」


マヤがふっと笑った。


「うん」


「代わりにほとんど壊したけど」


「壊してないってば」


「指、どうしたの?」


「戸枠に挟まった」


レオンは男を見て、とても慎重に言った。


「その戸枠は、かなり荒い性格のようですね」


リナは堂々とうなずいた。


「うん」


「今日に限って特に」


まったく役に立たない答えだった。


だが重要なことは別にあった。


これは信徒ではない。


口の内側に狂気だけを詰めたかかしではなく、実際に手を汚し、内側の事情を拾い聞きした奴だ。


だから生きていれば価値があった。


アデリアがすぐ続いて現れた。


彼女は階段を下りながら、手についた埃を払った。


目の色はさっきよりさらに沈んでいた。


興奮が抜けた場所に計算だけが残った顔。


「生きているか」


マヤが男の首筋をもう一度ひねって立たせた。


「今は」


「よし」


「ここに置くな。隣の取調室へ」


エリンがすぐに首を横に振った。


「だめ」


「今動かすと、また何か仕掛ける」


「粉塵一つだけが来たとは限らない」


アデリアの眉間が狭まった。


「なら?」


「ここで見る」


エリンは拘留室の向かいの空いた壁のほうをあごで示した。


「床に結界を張って、椅子を固定して」


「動ける距離を減らす」


「通風口は私が塞いでおく」


セラが短く言った。


「やる」


彼女が自ら動いた。


廊下の真ん中に、古い木椅子が一つ引きずられてきた。


きしむ音が地下の湿った空気と噛み合い、妙に長く残った。


マヤとリナが男をその椅子に押し込むように座らせ、セラは先ほどマルセラに使ったものよりさらに荒く、さらに実用的な方法で奴の腕と胴体を縛った。


手首、肘、腰、膝、足首。


結び目は適度に見苦しく、だからこそいっそう頼もしかった。


エリンはその上に青い線を描き足し、呪術的な発動を抑える臨時封印式を重ねた。


男はそのすべての過程で二度吐き、三度悪態をつこうとして咳で終わり、四度目くらいにはがくりとうなだれた。


マルセラは拘留室の中からその光景を見ていた。


彼女は何も言わなかった。


だがレオンは感じた。


拘留室の中の空気が少し変わった。


ついさっきまでは


「それでもまだわからない」


という踏ん張りがあったとすれば、今は


「本当に来るんだ」


というほうへ傾いた。


人は自分の番がどれほど近いのか、他人を見て知ることがある。


特にこういう種類の夜には。


アデリアが生け捕りにされた手先の前に立った。


「名前」


男は血の混じった唾を床に吐いた。


「ふざけるな」


リナがすぐ一歩出た。


「あ、私、殴っていい?」


アデリアが手だけ上げて止めた。


「まだだ」


マヤが壁にもたれながらつぶやいた。


「ああいう奴って、必ず名前から言わないよね」


レオンは拘留室の扉の前でそれを見守りながら思った。


そうだ。


この段階の奴らは、いつも自分を大層な秘密のように思っている。


名前一つに品位を賭け、沈黙一つに忠誠を賭ける顔。


だがたいていは、肝心の組織のほうではその名前を覚えてさえいない。


アデリアは二つ目の質問へ移った。


「灰色眼球会での職責」


男は乾いた笑いを漏らした。


「職責?」


裂けた口元の隙間から血が流れ、笑いが漏れた。


「俺たちはそんな貴族遊びはしない」


「よし」


「なら役割」


「黙らせるほうだ」


その言葉が落ちた瞬間、廊下の空気がもう一度冷えた。


リナが顔をしかめた。


「本当に最悪」


アデリアは目一つ瞬かせなかった。


「誰が送った」


男は答えなかった。


代わりに、顔だけを少し上げて拘留室の中を見た。


マルセラ。


正確にそちらを。


その視線には妙なものがあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ