第114話
「取り戻した後で消すか、その場で口を塞ぐほうだ」
「あの組織は、人を惜しむ類いではない」
彼女は紙の上に指を置いたまま付け足した。
「私たちが今まで削り取ったものを合わせると、灰色眼球会は一つの塊で動いてはいない。外を探る奴ら、手を汚す奴ら、それに噂と文書を回す奴らが別にいる。名前は一つだが、実際には目と手と舌が別々に這い回る蜘蛛の巣に近い」
マヤが眉を上げた。
「だからあんなに匂いがしなかったんだ」
「一本を切っても、別の糸がすぐにつながる形」
「そうだ」
アデリアは短く受けた。
「北部封印庫襲撃、南門での追跡、橋の下に痕跡を残すこと、染色倉庫への潜伏」
「全部、やり方は同じだ」
「まず弱い奴を投げて位置を縛り、次に本隊が噛みつき、最後には痕跡と口をまとめて消す」
「物より流れを、人より沈黙を重く見る側だ」
エリンが頬杖をついた。
「つまりマルセラは仲間というより、知りすぎた指一本くらいってことだね」
「必要なら自分で切り落とす」
「まさにそれだ」
アデリアは少し言葉を止めてから、今度はさらに低い声で続けた。
「問題は、あいつらの目的がまだ一つに絞れないことだ」
「ただし小さく見るのは難しい」
「封印物だけを狙っているように見えても、流れを見ると必ずしもそれだけではない」
「北部辺境伯家の文書と金庫、南門とギルドの伝令筋、誘拐と誘引にまで手を伸ばしているのを見ると、あいつらは街一つを揺らすだけで満足する類いではない」
マヤが目を細めた。
「じゃあ何なの」
「王を一人すげ替えるクーデターみたいなもの?」
「その程度なら、むしろ軽いほうだろう」
アデリアは紙の上に描いてあったいくつかの線を爪で押さえた。
「封印物を集めて、より大きな儀式を一つ開くつもりかもしれない」
「記録と印章、血筋と境界を順に汚し、今の世界を支えている秩序を脆くするつもりかもしれない」
「あるいは遠い昔に封じられた『夜』のようなものを再び引きずり上げ、この世界の上に別の法則を重ねようとしているのかもしれない」
リナが目を見開いた。
「別の法則?」
エリンが低く受けた。
「死んだものが死なず、呪いが大地みたいにこびりついて、人が暮らす場所が少しずつ減っていく方向だろうね」
アデリアがうなずいた。
「そうだ」
「私もまだ断定はしない」
「だが奴らの狙いが本当にそこまでなら、結局は世界の形そのものをねじ曲げるという意味になる」
「王国一つを食うというのではなく、人々が当たり前だと思っている昼と夜、生と死、内と外の境界から崩そうとしているんだ」
レオンは少し言葉を失った。
それはあまりに大きすぎて、かえって実感の湧かない種類の話だった。
だが今まで奴らがしたことを思い出すと、まったく笑い飛ばすこともできなかった。
封印庫を裂き、辺境伯家を内側から腐らせ、ギルドと街の伝令の流れに手を出し、一人を誘拐してパーティー全体を引き込み、最後には自分たちの口まで自ら消そうとする。
小さく終わらせる奴らには見えなかった。
アデリアの視線が卓上をゆっくりなぞった。
「だから今の段階では、こうだけ覚えておけばいい」
「奴らは目的が何であれ、最後には世界をより暗く、よりねじれた形に変えようとしている」
「そしてそこに至りさえすればいいと考えている」
エリンが頬杖をついた。
「手段を選ばないってことだね」
「そうだ」
アデリアは少しも揺らがなかった。
「封印庫では、警備、封印師、記録官を問わず斬り捨てた」
「南門では人の多い広場の真ん中でも追跡を止めず、橋の下では自分たちの手先を餌として投げ、私たちの足を縛った」
「染色倉庫ではレオン一人を捕まえて、セラたちまでまとめて引きずり込もうとした」
「人の命も、場所も、自分の手足も、全部材料として見る側だ」
リナの顔がぴたりと固まった。
「本当に嫌」
「だからこそ危険だ」
アデリアが切って言った。
「残酷な奴は多い。だがあいつらは残酷なうえに先まで見る。目の前で一人を殺して終わらせず、その死の後に残る恐怖と沈黙まで一緒に使う類いだ」
レオンは静かにその言葉を聞いた。
そうだ。
灰色手袋は人について話すときでさえ、人のようには話さなかった。
封印庫の死者たちは目的ではなく費用だと言い、伏せていた部下たちは餌のように投げ、最後の瞬間にも自分を先に逃がした。
そういう奴らなら、マルセラのために盛大な救出劇を演じるより、舌が長くなる前に切り捨てるほうを選ぶだろう。
レオンはゆっくり言った。
「毒」
アデリアの視線が彼に向いた。
レオンは指で卓を軽く叩いた。
「毒か、呪術か、遠距離からの狙撃、あるいは脱獄未遂のように見せかけた事故」
「そういう方向でしょう」
マヤがふっと笑った。
「敵の立場で考えるのがうますぎるんだけど」
「嫌ですね」
「ですが、私も嫌がりながら正しいと思います」
エリンが頬杖をついた。
「門番の買収もあり得る」
「拘留室の内側の道具のすり替え、水桶、食事、包帯、尋問官の格好」
「やり方はいくらでもある」
セラはごく低く言った。
「その前に喋らせる」
アデリアがうなずいた。
「そうだ」
「だから余計に問題だ」




