第113話
そしてそうして、とても長く悪い夜の果てに、レオンは再び街の天井の下へ戻ってきた。
街の夜は昼よりも正直だった。
昼の街はいつも忙しさと取引と体面で顔を塗っておく。
血が路地をかすめても水を一杯まけば消えたふりができ、誰かが明け方に連れていかれても正午ごろにはパンを焼く匂いがその場所を覆う。
だが夜は違う。
明かりが減るほど、隠すために必要な飾りも減っていく。
石畳は昼のあいだ踏まれた足跡を冷えた鉄のように抱き、屋根は闇の下で口をつぐんだ証人のようにうずくまる。
窓の隙間から漏れる明かりの一つ一つが、まるで人の本音の欠片のようだった。
温かい家は温かく、不安な家は不安に、血の匂いがする家はその匂いが抜けきらないまま。
今夜のギルドの建物はまさにそうだった。
表向きは普段と変わらなかった。
玄関前の灯りが二つ。
固く閉じた窓。
鉄製の看板。
だが近づけばわかる。
人の数がいつもより多く、門番たちの足音がやけに短く、壁の内側の空気には薬草と濡れた包帯とインクの匂いが一緒に漂っている。
何かをたった今捕まえてきて、まだ終わらせられず、これからさらに大きなことが始まるという匂い。
レオンはそのギルドの内側の廊下を、足を引きずりながら歩いていた。
歩いているふりだった。
左の肋骨は相変わらず性悪くずきずき痛み、両手首は包帯で巻かれ、首には浅く切れた線がまだ熱を持っていた。
おまけにアデリアが無理やり流し込んだ回復薬が腹の中で妙に温かいのだが、その温かさがまるで人間的なものではない点が非常に気に入らなかった。
よくない。
とても。
それでも歩きはする。
レオンはその事実が少しおかしかった。
彼の目の前に文言が浮かんだ。
【廊下移動成功】
【使用者状態:負傷箇所多数】
【個人的感想:はい、歩くことも偉業です】
レオンは小さくつぶやいた。
「私も同じ考えです」
すぐ横を歩いていたエリンがちらりと見た。
「また出た?」
「はい」
「見てて楽しい?」
「あまりよくはありません」
「ですが正しいことなので否定しにくいですね」
エリンは疲れたため息をついた。
「その口がまだよく回るってことは、死にはしないね」
「幸いですね」
「全然幸いじゃない」
「今日は監視までしなきゃいけないんだから」
「監視ですか?」
レオンが目を瞬かせた。
エリンは答えの代わりに、廊下の先の扉をあごで示した。
会議室だった。
その中にはすでにセラ、マヤ、リナ、そしてアデリアが集まっていた。
アデリアは厚い紙束と地図を卓上に広げたまま、窓の光を背にして立っていた。
彼女の影が床の上へ長く伸びていた。
まるで誰かが剣を抜かずに、鞘ごと長く寝かせておいたかのようだった。
マヤは椅子の背もたれに腕を掛け、足を揺らしていた。
表情はいつものように軽いふりをしていたが、尾の先を見ればわかる。
苛立ちが残っている。
かなり。
リナはパンを食べていた。
三個目だった。
セラは壁際に立ち、腕を組んでいた。
彼女はじっとしているだけでも、部屋の空気が一層整う種類の人間だった。
今日はその整い方が普段よりさらに冷たかった。
アデリアはレオンを見るなり言った。
「座れ」
レオンは反射的に言った。
「私はまだ……」
「座れ」
「はい」
言い終わる前に座った。
椅子はやはり素晴らしかった。
本当に。
世の中に信頼できるものはあまりないが、背もたれのある椅子はかなり上位だ。
レオンはとても慎重に息を吐いた。
マヤがぷっと笑った。
「表情が素直すぎるんだけど」
「今の私の体には、嘘を支える余力がありません」
リナがパンをもぐもぐしながら手を上げた。
「私、わかる気がする」
「私もめちゃくちゃ殴られた後だと、椅子がすごくいいんだよね」
エリンが乾いた声で言った。
「それをこんな温かい共感でまとめるのも才能だね」
アデリアはペン先で卓を二度叩いた。
「雑談は終わり」
「報告はもう受けた」
「次を決める」
部屋の空気が、目に見えないまま狭まった。
アデリアは紙を一枚前へ押し出した。
そこには今日一日のうちに整理された内容が、短く明確に書かれていた。
マルセラ生け捕り。
灰色眼球会の手先一人生け捕り。
灰色手袋逃走。
北部辺境伯家の内通の形跡多数。
誘拐および倉庫拠点使用確認。
レオンはその一覧を見ながら思った。
文字にするとさらに嫌だな。
本当に。
アデリアが口を開いた。
「問題はマルセラだ」
リナがすぐに言った。
「うん」
「むかつくほうで」
「それは基本だ」
アデリアは少しも揺らがなかった。
「私が言っているのは価値の問題だ」
「あの女は今、三つだ」
彼女が指を一つずつ折った。
「北部辺境伯家の内情に詳しい」
二本目の指。
「灰色眼球会と接点を持った」
三本目の指。
「レオン誘拐の直接の加担者だ」
マヤが椅子にもたれながら舌打ちした。
「要するに、喉に刺さった骨だね」
エリンが付け足した。
「それに、向こうの立場では腐った毒でもある」
セラが短く尋ねた。
「次の手は」
アデリアは少しも迷わなかった。
「口封じ」
その一語が部屋の床に冷たく落ちた。
リナがパンを止めた。
「助けに来るんじゃなくて?」
アデリアは首を横に振った。
「取り戻すふりはできる」
「だが目的は救出じゃない」




