第112話
厚い扉、広い階段、朝早くから出入りする使い走り、出入り名簿を整理する受付係、横庭の訓練用の杭。
ここは宿のように人を寝かせる場所ではなく、人を動かす場所なのだと、建物の外観からして表れていた。
街のほかの家々が生活の熱を内側に隠しているのだとすれば、ギルドは逆にそれを外へ出していた。
今日の仕事、今日の疲れ、今日の値、今日の依頼。
そういうものが、もう扉の前の空気の中に掛かっていた。
そしてその空気の中へ、セラたちはそのまま歩いて入った。
門番役をしていた若い職員が、まず目を見開いた。
「セラ様、それは……」
彼の視線はレオンへ行き、マルセラへ行き、またレオンへ戻った。
レオンはかなり苦労しながら手を上げて挨拶した。
「おはようございます」
職員はほとんど青ざめた顔で言った。
「おはようございます、ではないようですが」
「その通りです」
その短い返事とともに、内側が一瞬で騒がしくなった。
誰かが治療師を呼んだ。
誰かが地下調査室の鍵を探しに走った。
誰かが受付カウンターの上の紙をどかして場所を作った。
誰かはマルセラに気づいて息をのんだ。
そしてそのすべての騒ぎの中心で、セラは相変わらず短く言った。
「レオンが先だ」
その言葉は妙なほどよく突き刺さった。
リナはすぐにうなずいた。
「うん」
「これは絶対にそれが先」
エリンも同意した。
「そう」
「あれを今立たせておくこと自体が無理」
マヤは屋根から下り、扉の枠にもたれてため息をついた。
「こうしておいて、また自分は平気だって言い張るに決まってるし」
レオンは心外そうな顔をした。
「いや、私がいつ……」
その瞬間、膝が一度大きく揺れた。
体はいつだって口より正直だった。
セラがすぐに腕をつかんだ。
「もういい」
レオンは結局、乾いた笑いを漏らした。
「……はい」
治療室へ移される間、レオンは肩越しに一度後ろを振り返った。
マルセラはすでに別の道へ引かれていた。
地下調査室のほうだった。
リナが担当し、エリンが横について、マヤは最後まで後ろを見張っていた。
セラはレオンを連れて中へ入ってきながらも、そちらを一度確認した。
皆、持ち場についている。
よし。
それなら少しだけ、本当に少しだけ、体を預けてもいい。
治療室の扉が閉まると、外の音がほんの少し遠のいた。
薬草の匂い。
温かい水の匂い。
清潔な布の匂い。
濡れた地下室とは正反対の匂いだった。
人を生かす側の匂い。
レオンは寝台の端に腰を下ろし、結局そのまま寝かされた。
誰が寝かせたのか見る前に、もう天井が視界に入っていた。
今日だけで何度目の天井かと思ったが、それでもこの天井はずっとましだ。
少なくとも誰かを苦しめるために作られた天井ではない。
治療師が包帯をほどきながら舌打ちした。
「これは、生きて戻ってきたのが不思議なくらいですよ」
レオンは慣れた表情で答えた。
「ありがとうございます」
「褒めていません」
「最近よく聞きます」
セラが隣で低く言った。
「口数を減らせ」
「はい」
短く答えたが、レオンはまだ少し笑っていた。
セラはそれを見た。
そしてしばし何も言わなかった。
やがて治療師が首の浅い傷を拭き取るとき、ごく静かに尋ねた。
「かなり痛むか」
その質問は意外だった。
レオンは答えるタイミングを逃した。
正直に言えば、かなり痛かった。
本当に。
だがセラの顔を見ると、その事実をあまり大げさには言いたくなかった。
だから彼はいつものように少しひねって答えた。
「今日基準では上位です」
セラの口元がごくわずかに動いた。
笑ったわけではなかった。
だが完全に違うとも言い切れない。
「なら休め」
「はい」
その短い返事の後、レオンは少し目を閉じた。
外ではまだ、ギルドの朝が騒がしく回っているはずだ。
マルセラをどこに閉じ込めるか、灰色手袋が逃げた水路をどう追い直すか、川沿いの廃倉庫から何をさらに拾うか、報告は誰が上げるか、北部と今回の誘拐事件をどう一本の線でつなぐか。
やるべきことは間違いなく山ほどあった。
だがそれは少し後のことだ。
今は街へ戻ってきた。
屋根はまた朝の光を受けてつやめき、
路地はまた何事もなかった顔をして、
ギルドはその何事もなかったことを帳簿と包帯と供述書でつなぎ留めるのだろう。
世界はいつもそうやって回る。
誰かは誘拐され、
誰かは取り戻してきて、
街はまたパンを焼き、
ギルドはそのすべてを記録として束ねる。
レオンはその流れの真ん中で、ようやく少し実感した。
ああ。
本当に戻ってきたんだな。
そしてそう思うと、笑いより先に疲れが来た。
まぶたが重くなった。
体が、もういいかと尋ねているようだった。
レオンは唇の内側でつぶやいた。
「いいですね」
セラが隣で尋ねた。
「何が」
レオンは目を閉じたまま答えた。
「街が、です」
「思ったより……」
「あまり、嫌ではありませんね」
セラは一拍置いて、低く言った。
「そうか」
その一言は妙に温かかった。
だからレオンはそれ以上尋ねなかった。
外の騒ぎは閉じた扉の向こうで少しずつ遠ざかり、治療室の空気は温かく、薬草の匂いは眠くなるほど穏やかだった。




