第110話
「全員生きている、それで終わらせる。」
「灰色手袋は逃したが、マルセラは捕らえ、隠れ家も確保した。」
「今はこれで十分だ。」
リナが呟いた。
「私は捕まえて引き裂きたかったけど。」
「私もだ。」
その返事はセラがした。
本当に意外だった。
リナはその言葉に、一瞬だけ口をつぐんだ。
そしてごく小さくうなずいた。
いい。
今日はみんな、少しずつ変に素直だな。
レオンは壁に背を預け、ゆっくり息を整えた。
地下室の天井の隙間から入る朝の光が、少しずつ鮮明になっていた。
もう夜明けではなく朝だ。
夜は退き、川辺の霧はまだ残っているが、色は薄くなっていた。
外の屋根は相変わらず灰色だが、その灰色の中にも少しずつ金色が混じっていた。
街がまた、何事もなかったという表情をする準備をする時間。
だが少なくとも、この地下室は知っている。
何事もなかったわけではない。
誰かは攫われ、
誰かは必死に探しに来て、
誰かは逃げ、
誰かは捕まった。
そしてそのすべての真ん中で、
結局、自分は戻ってきた。
生きて。
痛みながら。
しつこく。
それでも戻ってきた。
彼の目の前に文言が静かに浮かび上がった。
【状況終了ではありません】
【救出成功】
【主敵一部逃走】
【使用者状態:めちゃくちゃですが生存】
【個人的感想:はい。やはり笑うほうが少し長く持ちます】
レオンはその文言を見て、ごく小さく笑った。
そして呟いた。
「はい。」
「私も同じ考えです。」
セラが隣で尋ねた。
「何が。」
レオンは目を閉じてからまた開いた。
地下室の中の人々、
壊れた扉、
凍りついた水路の入口、
縛られたマルセラ、
そして外で少しずつ明るくなる街を一度に収めるように眺めながら答えた。
「まだ終わっていませんね。」
セラは短く答えた。
「ああ。」
街へ戻る道は、来る時よりずっと長く感じられた。
実際にはそうではないだろう。
川辺の廃染色倉庫地帯からギルドまでは、成人男性が早足で歩けばそれほど時間はかからない。
川岸の斜面を過ぎ、石段を上り、濡れた荷揚げ場の脇道を曲がり、まだすっかり扉を開けていない店が並ぶ灰色の路地を抜ければいい。
距離そのものは変わっていなかった。
それでも人は戦ったあと、血を流したあと、ようやく誰かを取り戻したあとでは、同じ道も長く感じる。
少し前まで死にかけていた体が、ようやく自分がどれほど重いかを遅れて主張し始めるからだ。
今のレオンが、まさにそうだった。
息を吸うたびに肋骨が刺さり、首を動かすたびに浅く切れた線が熱く擦れた。
手首は二つともめちゃくちゃだった。
右は拘束具をひねったせいで皮膚が剥け、左は革を無理やり引き剥がしたせいで赤く擦れていた。
肩もよくなく、後頭部もまだ重かった。
そのうえ灰色手袋が埋め込んだ痛覚増幅の呪術の残滓が完全に抜けていないせいで、体全体が自分の存在を過剰に律儀に主張していた。
よくない。
かなり。
だが生きている。
だから、まだ大丈夫だ。
レオンはそう結論づけた。
その結果が、今のこの有様だった。
彼は歩いていた。
セラの左肩を半分借り、残り半分は自分の意地で支えているところだった。
セラは何も言わなかった。
代わりにレオンが一度ふらつくたび、手が先に反応した。
腕をつかんで立たせるわけでも、露骨に支えるわけでもなく、倒れる方向だけを切り落とすようなやり方だった。
とてもセラらしく無骨で、とてもセラらしく正確だった。
レオンはそれがありがたくはあったが、だからといって黙っているには、やはり口が残っていた。
「いいですね。」
セラが横目も向けずに尋ねた。
「何が。」
「今日の私の生存率が、思ったより高い点です。」
「低かった。」
「それは認めます。」
短いやり取りだった。
それでも妙に落ち着いた。
後ろではリナがマルセラを連れてきていた。
連れていくというより、『逃げる気になったらすぐ床を見せてやる』というやり方で押していた。
マルセラの手は後ろできつく縛られており、腰にも補助の紐が巻かれていた。
北部で侍従長として立っていた時の整った様子はかなり崩れていたが、だからといって完全に壊れた表情ではなかった。
むしろその点が、さらにしぶとかった。
髪は乱れ、首の黒いリボンは半分ほど解けて垂れ、唇は乾いていたが、瞳だけはまだ生きていた。
最後まで負けまいとする人間の目だった。
リナはその視線に気づくたび、さらに気に食わない表情をした。
「ずっとそうやって睨むなら、本当に一発殴るよ。」
マルセラは答えなかった。
言葉の代わりに笑おうとした。
その笑いが半分しか張り付かなかったのを見て、リナはむしろさらに意地悪くなった。
「ああ、本当に嫌。」
マヤが前方の屋根を行き来しながら、ぽんと投げるように言った。
「我慢して。」
「街に入る前でしょ。」
「今顔を壊したら、あとで尋問するとき面白くない。」
「それはそうだけど、それでも嫌。」
「わかる。」
短い返事だったが、その中には味方特有のうんざりした共感があった。
エリンは最後尾を歩いていた。
彼女は相変わらず苛立った表情だった。
水路の崩落を防ぐために一度大きく力を使ったうえ、倉庫地帯全体に敷かれた呪術線と黒い破片の残りかすまで片づけたのだから、そうなるのも当然だった。
銀色の髪の先は湿気を吸って少し重く垂れ、指先にはまだ冷気がたっぷり残っていた。




