第106話
「そうしたら、この人の喉元から開きますから。」
よくない。
かなり。
だがレオンは、その瞬間セラの顔を思い浮かべた。
怒るときも声を荒げない顔。
剣を構える時より、構える直前のほうが怖い顔。
そして自分の側ではなく、敵の側がその顔と向き合っているという事実が少しおかしかった。
彼は血のにじんだ唇をほんの少し上げた。
マルセラが歯ぎしりした。
「この状況でまた笑うんですか?」
レオンはかすれた声で答えた。
「はい。」
そしてすぐ続けて、
「あなた……」
「大変なことになりましたね。」
その言葉が落ちた瞬間、
地下室の扉の蝶番側から、ぱきり、と氷が割れる音がした。
エリンが外から扉枠の下部を凍らせてしまったのだ。
同時にマヤの矢が一本、扉板をまた貫いて入ってきて、内側の掛け金のすぐ横にある金属ピンを射た。
かちり。
掛け金が外れた。
そしてリナが外で、笑いもせずに言った。
「開けてあげる。」
どん。
扉が内側へ弾けた。
鉄板と木と氷の破片が一緒に飛び込んだ。
朝の光が地下室の中へ長く差し込んだ。
そしてその光の真ん中に、
セラが立っていた。
黒いマントの裾から霧の雫が落ち、眼差しは夜より冷たく沈んでいた。
彼女の背後には壊れた扉枠と氷の残骸、その外のかすかな夜明けの光が重なって見えた。
まるで街の灰色の朝が一人の人間の形を借り、剣を持って下りてきたようだった。
マルセラの息が初めてはっきり揺れた。
レオンはそれを見ながら思った。
いい。
これで本当に、
盤面がひっくり返る。
そしてセラの視線が、レオンの首に触れた刃先と、濡れた顔と、裂けた手首を順に撫でた瞬間。
彼女はとても静かに言った。
「そこから手を離せ。」
その一言が、
地下室の中のどんな音よりも鋭かった。
その一言のあと、本当に短い静寂があった。
セラはそれ以上前へ来なかった。
一歩なら届く距離だった。
二歩なら斬り捨てられる距離だった。
それでも彼女は止まった。
地下室の中へ注いだ夜明けの光が刃のように長く床を引っ掻いており、壊れた扉板の破片と氷の欠片がその光を細かく割って、四方へ散らしていた。
マルセラの刃先はまだレオンの首のすぐ下に触れており、その先に溜まった血はとてもゆっくり線を描いて下へ流れていた。
濡れた布の匂い、染料の匂い、冷たい石の匂い、血の匂い。
部屋の中のすべてがあまりにもくっきりしていた。
セラはそのすべてを一度に見ていた。
レオンにもそれはわかった。
いい。
なら合っている。
今はセラが時間を稼ぐ。
私は内側から盤面を歪める。
それが一番合っている役割分担だ。
マルセラが先に口を開いた。
「一歩でも近づいてみなさい。」
彼女の声は震えまいとしていた。
だから余計にわかった。
「そうしたら、この人の喉元から先に開きますから。」
セラはまばたき一つしなかった。
「できない。」
マルセラの口元がきつく引きつった。
「私ができないと思いますか?」
「ああ。」
「なぜです?」
セラの声は相変わらず低く、平らで、驚くほど落ち着いていた。
「お前はいつも最後の瞬間に他人の力を借りた。」
その言葉は剣より深く入った。
マルセラの目の色が大きく揺れた。
いい。
引っかいた。
大きく。
レオンはその隙を逃さなかった。
彼はまだ床に倒れた椅子ごと縛られた状態だった。
右手だけが抜け、左手と足首、そして腰ベルトの一部はまだ彼を捕らえていた。
だがマルセラがセラのほうへ意識を注いでいる間、さっき釘で削っておいた腰の革紐が少しずつさらに裂けていた。
びりっ。
本当に小さな音。
だがレオンの耳には確かだった。
いい。
もう少しだけ。
マルセラはセラを睨みながら言った。
「あなたたちはいつもそうです。」
「最後まで人を自分の物差しだけで裁くんです。」
「私はいつも誰かの後ろに立つ人間、世話をする人間、片づける人間、始末する人間、鍵を持って扉だけを開ける人間。」
「そうでしょう?」
「あなたたちの目には、私なんてその程度だったのでしょうね。」
セラは答えなかった。
その沈黙が、かえってマルセラをさらに刺激した。
「でも金庫も、家門も、系譜も、応接室も、使用人も、侍従も、リリアも、辺境伯も。」
「誰が何を恐れ、誰がどこで崩れるのか、一番よく知っていたのは私でした。」
「あなたたちが北部に入ってきた時も、あなたたちが勝ったと信じた時も、最後まで内側の構造を知っていたのは私で。」
セラがそこでようやく口を開いた。
「だから負けた。」
マルセラの瞳が大きく開いた。
「何ですって?」
「すべて知っていても負けた。」
セラは少しも揺らがなかった。
「だからお前は今、余計に怒っている。」
それは本当に、残酷なほど正確な言葉だった。
マルセラの呼吸がついに大きく揺れた。
刃先も、ほんの少しだけ。
本当にほんの少しだけ。
レオンはその刹那に体を動かした。
腰のベルトを右手でつかみ、残る力を集めてひねった。
びりっ。
革紐は半分どころか、ほとんど最後まで裂けた。
いい。
これでいける。
だが完全に外れる前に、地下室の外から別の声が割り込んだ。
灰色手袋だった。
彼は階段の上のどこかで状況を見ていた。
「感傷はそこまでにしましょう。」
その声はまだ落ち着いていたが、その落ち着きが少し薄くなっていた。
「マルセラ、今すぐ首を切りなさい。」
「そうでなければ、すべて失いますよ。」
地下室の空気が一瞬凍りついた。




