第105話
レオンは一瞬、喉の奥から笑いが漏れた。
「見てください。」
彼が言った。
「私がなぜ信じているのか、少しはおわかりですか。」
マルセラが振り返った瞬間、レオンは残っていた手首も最後にひねった。
皮膚が擦れて剥ける感覚。
指がほとんど麻痺する感覚。
そして、
するり。
右手一本が金属の輪から抜け出た。
いい。
本当に。
いい。
代わりに手首はめちゃくちゃだった。
皮膚は剥がれ、赤く擦れた肉が濡れたままてらてら光っていた。
指にはまともに力が入らなかった。
それでも自由だ。
椅子の後ろに隠れた自由。
この片方で十分だ。
マルセラがもう一度顔を向けた時、レオンはまだ手を引き抜いたことを見破られていなかった。
彼はわざと体をさらにぐったりさせた。
手は椅子の背もたれの後ろ、影の中に隠した。
いい。
これで一つくらいは大きく壊す。
扉の外では、セラの低く短い声が聞こえた。
「リナ。」
「左の柱から。」
そしてリナの荒い返事。
「今やってる!」
すぐ続いて、地下の床全体に薄い振動が走った。
呪術線が切られていた。
エリンが倉庫全体に絡んだ監視術式を外側から引き裂いているところだ。
その影響が地下室の床にも届いた。
排水溝を伝って広がっていたかすかな赤い線が一度明るくなり、またぷつりと消えた。
灰色手袋の罵声が、上階のどこかで初めてとても低く漏れた。
いい。
焦ったな。
それは初めて聞く音だった。
マルセラもそれを聞いたのか、今度はさらに露骨に焦り出した。
彼女は腰のベルトをすべて調整し終えるやいなや、椅子を後ろから引こうとした。
その瞬間、レオンが動いた。
ありったけの力で。
残った左手はまだ縛られていた。
足首も同じだった。
だから彼は立ち上がれなかった。
代わりに右手を後ろから抜いたまま、椅子の背もたれをつかんで体全体をひねった。
狙いは一つだった。
倒れること。
ただし、ただ倒れるのではなく、
マルセラのほうへ。
どん。
椅子が横倒しになり、マルセラの脛をまともに打ちつけた。
木の角が非常に悪い角度で食い込んだ。
「くっ!」
彼女の脚が一瞬折れた。
レオンも一緒に床へ叩きつけられた。
肋骨が破裂しそうに痛かった。
息が詰まった。
目の前が真っ白になった。
それでも止まらなかった。
彼は倒れた椅子ごと、体をもう一度転がした。
床の排水溝のほう、そしてさっき見ておいた短い釘が突き出た棚の下へ。
マルセラが罵声とともに追ってきた。
「この犬みたいな……」
彼女がレオンの髪をつかもうと手を伸ばした瞬間、レオンの自由な右手が床に転がっていた金属ピンを一本つかんだ。
うまくつかめたわけではなかった。
濡れた手だから滑ったし、指の力もまだ戻りきっていなかった。
それでも握るには握った。
そしてそのまま、
刺したというより、掻き上げた。
マルセラの手の甲を。
浅く。
だが正確に。
「あっ。」
血は大きく出なかった。
そんな暇もなかった。
重要なのは痛みよりタイミングだった。
彼女の手がびくりと引いた。
その一拍。
レオンはその隙に椅子の脚を棚の下の釘へ押し込んだ。
無理やり。
ひねって。
木材が削れた。
革紐が一本、摩擦で裂け始めた。
いい。
もう少しだけ。
扉の外で突然、人の体が飛んできてぶつかる音がした。
がたん。
そしてすぐに、リナの声。
「セラ!」
「下で合ってるよね!?」
正解だ。
本当にありがたいことに。
セラの返事は短かった。
「合っている。」
そしてすぐ次の瞬間、地下室の扉の取っ手が回った。
一度。
鍵がかかっている。
二度。
内側の掛け金のせいで完全には開かない。
三度目には、
扉そのものが悲鳴を上げた。
どん。
セラが外から蹴ったのだ。
鉄板が鳴り、木枠が歪んだ。
マルセラが歯を食いしばった。
もう選択肢が減った。
彼女は腰から短い刃を抜いた。
光が短くひらめいた。
レオンはその刃先が自分のほうではなく、自分と扉の間の角度を測っているのを見た。
よくない。
人質の構えだ。
セラが入ってきたら首に当てるつもりだ。
いい。
予想できる。
なら、もっといい。
レオンは床に倒れたまま荒く息をした。
マルセラは脛を一度押さえて立ち上がり、レオンの髪をねじるようにつかんだ。
力が乱暴だった。
さっきよりずっと露骨だった。
焦りが混じった手だった。
「起きなさい。」
「嫌です。」
刃先が首の横をかすかに掠めた。
ちくり。
浅い赤い線が一つ。
「今は選択肢がありません。」
レオンは息を飲んだ。
怖い。
当然だ。
だがまさにその時、彼がさっき釘で削っておいた革紐が、もう一度裂けた。
びりっ。
腰のベルトが一本、ほとんど半分ほど切れた。
いい。
まだだ。
もう少しだけ。
扉の外でセラが言った。
「マルセラ。」
その名を呼ぶ声が扉越しに入ってきた瞬間、空気の温度が変わった。
本当に。
静かな氷が扉の隙間から染み込むようだった。
「開けろ。」
マルセラは笑った。
だがその笑いは少し前までとは違っていた。
薄く、神経質で、からからに乾いていた。
「遅いです。」
セラが扉の外でもう一度言った。
「最後に言う。」
その短い宣告のあと、ごく薄い静寂があった。
リナも、エリンも、マヤも、その瞬間だけは言葉を殺したようだった。
マルセラがレオンの髪をさらに強く握った。
刃先が本当に首のすぐ下へ触れた。
赤い線が刃先からレオンの首を伝い、下へ流れ始めた。
「入ってきてみなさい。」
彼女が囁いた。




