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第101話

まるで誰かがわざと文字を消した古い旗のように、みすぼらしい色だった。


塀の向こうには低い倉庫の屋根が何棟も続き、奥には水路のほうへ下りる荷積み用の傾斜路と腐った板橋がぼんやり見えていた。


エリンが目を細めた。


「呪術の跡がある。」


マヤが屋根の縁に身を上げた。


「人もいる。」


「何人?」


「外に三人。」


「中はもっといるだろうね。」


セラが足を止めた。


川辺の霧の向こう、低い倉庫の屋根と崩れた塀、荷積み用の傾斜路まで一度に見渡してから、ごく短く言った。


「切り裂く。」


「マヤ、私と右の屋根。」


「リナは正門。」


「エリンは中の呪術線から断て。」


そして彼女は一拍置いて付け加えた。


「レオンが見えてもすぐ飛び込むな。」


「先に呪術線、その次に警備、最後が灰色手袋だ。」


マヤが短く笑った。


「いいね。」


セラは答えなかった。


代わりに、ごく短く言った。


「行く。」


それは事実だった。


彼女はいま怒っていたが、怒りに呑まれている状態ではなかった。


むしろ、あまりにも冷たく整理された状態だった。


怒りが炎ではなく、剣の峰の内側に入り込んだような感覚。


だからこそ、より危険で、より正確だった。


一方その頃、レオンはまだ椅子に縛られていた。


そして、まだ痛かった。


とても。


よくない形で。


それでも、やけに律儀に。


濡れた布は一度取り払われてまた被せられ、また取り払われて、今度は首元に緩くかけられた。


息そのものはできたが、その間も灰色手袋が埋め込んだ痛覚増幅の呪術は少しも消えていなかった。


いや、むしろ時間が経つほど、体がその鮮明さをさらに嫌うようになっている気がした。


最初は「痛い」だった感覚が、今では「ここ、ここ、ここも」と一つ一つ暴かれていく気分に変わっていた。


レオンはゆっくり目を開けた。


マルセラは部屋の片隅の棚にもたれていた。


灰色手袋はテーブルの上に何かを広げており、外では一定の足音が行き来していた。


三つ、いや四つ。


少し前より一つ増えた。


誰かが到着したらしい。


倉庫の上階なのか、外の傾斜路なのかははっきりしない。


ただ、木が踏まれる音が規則的に近づいたり遠ざかったりしている。


水路側へ続く道が確かにある。


いい。


一つはさらに拾えた。


彼は濡れた髪の間から目を動かし、部屋の中をもう一度見回した。


左の棚の下、釘が一本ちょこんと突き出ている。


テーブルの脚が一本だけほかより短く、ぐらついている。


排水溝は部屋の右の壁下に沿って進み、扉のほうへ折れている。


扉は鉄板を打ち付けた分厚い木製。


蝶番は外側。


よくない。


だが釘はいい。


とても、ではない。


少し。


レオンはごくゆっくり手首をひねった。


革帯が皮膚を擦った。


痛い。


当然だ。


けれど少し前より、手首の骨の角度がさらに感じ取れる。


革はきつく締まっていたが、金属の輪とつながる部分がごくわずかに遊んでいる。


椅子ごと壊すのは難しくても、ひねり続ければ片側が擦り減るかもしれない。


もちろん、その前に腕のほうが先に痺れる可能性が高かった。


それでもやるしかない。


じっとしているのは、ここでは損だ。


灰色手袋が彼を見て言った。


「また計算中ですか。」


レオンは今度は答えず、笑った。


マルセラが眉をひそめた。


「その笑い、本当に。」


「わかります。」


レオンがかすれた声で言った。


「私もたまに、自分の表情がむかつくときがあります。」


灰色手袋がふっと笑った。


「その余裕がまだ残っているんですね。ないのに無理やり絞り出しているのでしょう。」


「いいですね。」


「そういうほうが興味深い。」


興味深いって言葉、本当に好きだな。


灰色手袋は今度、テーブルの上の灰色の金属箱からまた別の物を取り出した。


爪ほどの黒い結晶片だった。


夜を刻む棺の破片には見えなかったが、その親戚くらいには見えた。


見ているだけで、部屋の空気が少し押し潰された。


エリンがいたら、ものすごく嫌がっただろう。


たぶん罵るところから始めたはずだ。


「これは別の封印物から剥ぎ取った残りかすです。」


灰色手袋が言った。


「それ自体は弱い。ですが、すでに敏感になった人間に向けると、内側がどれほど耐えるかを見ることができます。」


レオンは目を細めた。


「説明を聞けば聞くほど嫌悪させる才能がおありですね。」


「ありがとうございます。」


「褒めていません。」


「知っています。」


灰色手袋はその黒い結晶を、レオンの額の前、目からやっと一握りほど離れた場所に吊るすように掲げた。


最初は何も起こらなかった。


ところが三度目の息のあたりで、視界の端がほんの少し暗くなった。


部屋ではなく、別の場所が重なって見える。


濡れた地下室ではない。


低い天井でもない。


代わりに、ずっと昔の盗賊穴の天井。


濡れた藁。


気の抜けた麦酒の匂い。


禿頭。


干物みたいなやつ。


蹴り。


「おい。」


誰かの声が重なって聞こえた。


「こいつ、売れるんじゃないか?」


レオンの指が背中の後ろで大きく震えた。


よくない。


記憶を掻き回す種類だ。


彼は目を閉じようとした。


だが灰色手袋が低く言った。


「感知抵抗が速いですね。」


マルセラが嫌な興味を帯びた目でレオンを見た。


「何が見えますか?」


レオンは答えなかった。


答えたくなかったし、何より今口を開けば声が少し震えそうだった。


それは嫌だった。


だから彼は代わりに歯を食いしばった。


盗賊穴の匂いは本物じゃない。

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