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缶切り_2

 前哨陣地として機能していた高地を奪取した大隊は間髪入れず後方、主陣地へと突進した。


 大隊の担当する戦区の帝国軍防衛施設は小規模な集落だった。中央付近に六棟のレンガ、コンクリート作りの建造物が存在する。


 集落の内、教会の塔及び三階建ての建造物が敵の有力な火点になると想定された。


 カールは装甲ハーフトラックに乗車して移動する間、二人の新兵を観察した。ノールとリュグナー、二人とも無事に火と鉄の試練、初戦を潜り抜け戦争処女を卒業した。


 外見から想像される性格に反して陽気なノールは青ざめていて、インテリゲンチャな雰囲気のリュグナーは少し強張っているだけだった。案外とリュグナーは剛毅な性格なのかもしれない。


 大隊は余勢をかって一挙に集落外縁部まで前進した。既に日は高く、暑くなる気配を漂わせていた。


 前進途中、案の定教会の尖塔から銃撃を受けた。突撃砲が即座に反応し、連続した砲撃で尖塔を根本から崩壊させた。粉塵と土煙がさながら墓標のごとくもうもうと立ち昇った。


 「バチ当たりだぜ」


 誰かがぼそりと言った。


 集落に達すると再び下車戦闘。外縁部に於いて、カールの属する小隊は機関銃射撃に釘付けにされてしまった。


 一階建てのレンガ建築物。応射するが手応えはなく、手榴弾が届く距離ではない。しかも小隊は集落に進入途中で中途半端な位置にいるため離脱もできない。


 突撃砲が轟々と頼もしいエンジン音を伴って援護に駆け付けた。鉄軌大地を噛み、柵をなんてことないように踏み潰して現れた。


 射角に制限があるため、砂塵を巻き上げ車体ごと旋回して照準する。高地での経験からカールは咄嗟に耳を両手で塞いだ。


 射撃。一瞬の、網膜を焼き切るかと思わせるほどの大輪の花を思わせるような紅蓮の発砲炎。砲声は耳をつん裂き、射撃の衝撃波がカールを襲う。衝撃波によって舞い上げられた砂塵が視界を悪化させる。


 突撃砲が二発、三発と射撃すると一階建ての当該建築物は粉塵を撒き散らしながら崩れ落ちた。


 突撃砲は生垣を榴弾で吹き飛ばすと表通りへ躍出した。カールの小隊は突撃砲に続き通りへ進出した。


 集落中央部に位置する三階建ての建築物及びその周辺がもっとも強固な陣地になっていた。庭などには塹壕が気付かれ、室内はどうやら土嚢などによる補強を施してある。


 カールは通りを挟んで反対側にある二階建ての建物から陣地の全貌をなんとなく掴んだ。あの三階建て建築物に正面から前進した場合、向かって左、敷地内の一階建ての建物と向かって右手、別の敷地の二階建ての建物から十時砲火を浴びるようになっている。


 カタカタと窓枠が、いや家が揺れた。突撃砲が前進してきた。


 向かって右手の二階建ての一階、角部屋から少し濁った白煙が噴き上がった。砲の、多分対戦車砲の発砲炎だ。


 金属が高速で金属に激突する鋭い音。跳ねた砲弾が飛んでいくヒュルヒュルという音。右履帯が破壊されたらしく、ダラリと垂れた。


 突撃砲は寸時停止し、そして手負いの獣のような、吠えるようなエンジンの唸りを高らかに左の履帯を動かして無理矢理信地旋回、対戦車砲に照準した。


 48口径75ミリ砲が弾頭重量5.74キロ、炸薬量686グラムの榴弾であるSprgr.34を連続射撃。


 遅発にセットされた信管により榴弾は建物内部に飛び込んだ後に炸裂。砲員を薙ぎ倒し、砲を破壊し、最後には別室に置かれていた弾薬に誘爆して、その部屋と対戦車砲の設置されていた部屋二つを丸ごと吹き飛ばした。


 カールは軍曹に率いられて、向かって左側に存在する一階建ての建物を経由して三階建ての建物を攻略することになった。


 右履帯を破壊された突撃砲が鶴瓶撃ちする最中に銃火を冒して窓の死角から接近。壁に張り付くといかなる射線にも入らなかった。


 複数人で息を合わせて手榴弾を投げ込んだ。爆風と粉塵が窓から噴出。炸裂の後室内を覗くと、もうもうと立ち込める粉塵、埃のために視界は悪いがそれでも倒れてる人影複数を視認できた。


 生きているか死んでいるかは関係ない。生きているかもしれないから軍曹ともども射撃して確実に殺した。


 まだ粉塵燻る室内にカールは窓を超えて進入した。ノールとリュグナー、熊のような軍曹も続く。


 廊下からやかましい帝国語が聞こえてきて、小銃を構えるとまだ事情を把握していないらしい帝国兵が室内に入ってこようとした。すかさず四人が射撃し、あっという間にその帝国兵は蜂の巣になった。


 廊下から手のひらほどの大きさの固形物が放られて、ゴトンと硬質な音を立てて転がった。


 「手榴弾!」

 

 小銃のストック部分で廊下へ払い飛ばした。直後に炸裂。破滅的な轟音に反射してきた衝撃波がカールを襲った。炸裂の衝撃に転倒したカールは耳鳴りが酷く、また視界もグラグラ揺れて定まらない。


 「カール!カール!」


 すぐに起き上がらないカールを心配した軍曹が叫び呼びつつ、短機関銃を廊下の奥へ乱射する。リュグナーが合わせて手榴弾を投げた。


 カールが戦闘不能に陥ったのを見て取った軍曹は手早くノールとリュグナー以下数名をまとめると電光石火の勢いで廊下奥に突進。建物内の帝国兵が事態を把握し切れていない内にこれを駆逐した。カールがなんとかフラフラと立ち上がり、戦闘に復帰した時にはこの建物から帝国兵は一人残らず叩き出されていた。

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