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反斜面

 さらに数度の索敵を経て、主計中佐は橋の近くの隆起に敵空挺部隊が陣地を構えていることを掴んだ。


 そして、増援として急派された歩兵一個大隊が到着。大隊を率いる少佐は攻撃を主張し、主計中佐も同意。爾後中佐は町の防禦に専念する。


 大隊を率いる少佐は即座の攻撃こそ最良の選択と考えた。敵空挺部隊は降下から5時間が経過してなお動かないことに着目した。元々は町の防禦のための戦力としての増援だったが、敵が動かないのならこちらから打って出ても良いだろう。


 それに動かないと言え、街道という大動脈を塞ぐ形で存在している以上無視はできない。


 加えて、敵の目的も詳細な戦力も判明していない。もし敵が動いていないだけなら良いが、仮に何か──例えば後続の空挺部隊──を待っているとしたら、静観は事態を悪化させる。


 現在の敵の戦力を暴く意味でも攻撃は望ましい選択肢である。本日の日没は20:50。まだまだ時間はある。


 それに少佐は楽観的な考えを持っていた。確かに空挺部隊は精鋭である。過酷な訓練に旺盛な士気、それらが生み出す高い戦闘能力。一方で、物質的には重装備を持たない軽歩兵である。


 少佐は国防軍が個人で携行可能な対戦車火器を有していることは知っている。同時に、有効射程が60メートルであることも知っている。つまり、敵陣地から100メートルも離れていれば全く安全。


 この時点で、少佐は空挺部隊が降着したとは聞いていたが、グライダーが降着したとは聞いていなかった。急遽の増援だったこともあり、およそ1,000人と思われる敵空挺部隊が降下した、との情報しか渡されていなかった。


 一応、知識として降下猟兵が37mm対戦車砲を運搬することは知っている。しかし前述の通り、グライダー降着の情報を少佐は知らなかった。結果として、少佐は軽戦車一個小隊4両に支援を受けての攻撃を決断した。


 対戦車砲を持たないならば1,000人の敵兵でも鎧袖一触であろう。


 こうして生じた戦場の霧により50mm対戦車砲の存在は隠された。


 

×××××



 攻撃は最初から蹉跌さてつをきたした。陣地へ向け迫撃砲の雨を降らせた。そこまでは良かった。


 一個中隊を予備として後方に控えさせ、一個軽戦車小隊と二個歩兵中隊で正面から突撃する。


 接近経路が一本の橋に限られるという問題こそあったが、そこは軽戦車の援護下に渡橋することで解決されるだろう。西岸に2両を展開させ、この銃砲撃による火制下に川を橋を渡る。


 大隊は戦闘体形を整え攻撃前進を開始。おおよそ橋から500メートルの位置で迫撃砲による攻撃前進阻止射撃を浴びた。


 しかし絶対数が、足りていない。乏しい火力では戦意旺盛な帝国兵は止められない。


 橋を渡ると敵陣から機関銃の射撃が始まった。熾烈な機関銃火力は歩兵へ向けられた。


 軽戦車は陣地の南西方向にある隆起の間へと突進する。そこから一息に敵陣地の裏へ回り込み、敵の防御を瓦解させる腹積りだった。


 二両が回り込み、残り二両は正面から敵陣を覆滅する算段である。


 シュタイナー大尉はこの事態を十分予測していた。むしろ、こうして戦車を火力集中点、キルゾーンへと誘い込んだ。


 各辺およそ1km、1km四方の馬蹄形陣地の内側には入念な偽装が施された50mm対戦車砲二門が潜んでいた。


 そしてこの地形。隆起の傾斜は内側こそ緩いものの、外側──敵に相対する側──は急で、戦車は登攀不能と思われた。少なくとも軽戦車では馬力不足だろうし、仮に可能だとしても初見で登ろうとは思えないだろう。


 そして今、シュタイナーの読み通り、二両の軽戦車が随伴歩兵少数を伴って隆起の間から前進してきていた。


 対戦車砲は南と西に隆起に配備されており、南西から接近する敵戦車に対し十字砲火を浴びせられるようになっている。


 南西から接近する軽戦車と随伴歩兵はこの火網に頭から入り込んだ。対戦車砲、機関銃、歩兵、さらには迫撃砲の一部の激烈な火力が指向される。


 軽戦車二両は瞬く間に命中弾を受け炎上し、歩兵もバタバタと薙ぎ倒された。何せ隆起と隆起の間に突撃したわけだから、帝国兵からみれば左右の高地から猛射され、さらに地形的に身を隠す場所もない。頼みの戦車はあっと言う間も無く撃破され、傍に燃える戦車兵の死体が転がっている。


 攻撃は頓挫。指揮官も戦死し、熾烈な攻撃の中で誰が次級者で指揮を継承するのかすら、わからなくなった。指揮の継承がスムーズに行われなかったことは結果的に随伴歩兵はキルゾーンの中に留め置くことになり更なる死傷者の増大を生じさせた。


 この随伴歩兵は壊走し、第一次攻撃は撃退された。

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