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 南北に流れる、幅100メートルの川が東西に走る街道を断ち切っている。シュタイナーの隊はこの川に架かる橋を奪取し、友軍到着まで防衛すること。


 シュタイナーは大隊を掌握すると橋へ邁進まいしんする大隊の先頭に立った。




 橋の警備に就いていたのは一個小隊40人に交通整理のためにいた若干名の憲兵。


 東の空に空挺降下を望見していたこの帝国軍小隊はにわかな事態に混乱し、浮き足だっていた。地上からは空挺降下の落下傘、グライダーは文字通り空を埋め尽くすかに見えた。この様な心理的圧迫は、降下した降下猟兵の数を実態以上に大きくしていた。


 ともかく、小隊長は報告の無線を飛ばさせると同時に小隊員に臨戦体制をとらせた。


 そこへ輸送機を護衛していた戦闘機の一群が襲いかかった。攻撃の露払いとして機銃掃射が浴びせられる。

 

 橋を傷つけないため、そもそも護衛だったことから20mm機関砲の掃射だけだったが、歩兵にとって致命的なのは変わらない。


 直撃を受けた者は肉体が砕けた。例えば成人男性がりんごを力の限り地面に叩き付けたらどうなるか。


 その結果と似た様なことが人体に起きた。腹体に機関砲弾を受けた者は腰部から胸部にかけてが霧散、両足がバラバラに飛び散る惨状を晒した。


 さらにパイロットは橋の近くの土嚢陣地に目を付けた。半円を描く非常に簡易的なものだ。そこに機関銃が据え付けられているのを見ると、これに射撃を加え破壊した。


 防弾装備を有さない降下猟兵には機関銃は厄介極まりないものだろう。


 死傷者の把握と負傷者への処置、土嚢陣地の再構築に上への報告に、そうした混乱が収まらない中、シュタイナーの大隊が到着。600メートル以遠から機関銃による急襲射が浴びせられた。


 三脚に据えられた機関銃は毎分1,200発、毎秒にして20発という高速連射を制御する。


 銃身の加熱を抑えるため、ひいては機関銃の役目である制圧射撃を持続させるため、1秒以上の連射は控えている。


 それでも高い集弾率は高い制圧力を生み出す。三脚は二脚(バイポット)より反動を吸収し、それが高い集弾率に繋がる。そして高精度の射弾は的に脅威を与え、最終的に敵は制圧される。


 警備の一個小隊は有効な反撃手段を持たなかった。先の機銃掃射で機関銃が破壊されたからだ。手持ちの小火器は、カタログスペック上の射程ではなんとか対抗できるものの、狙うことは全く叶わなかった。威嚇が精々。


 大隊の内一個小隊が橋から200メートルの位置にある、比高15メートルの地面の隆起に布陣した。ここから機関銃を橋付近に陣取る帝国兵へ向け撃ち下ろした。


 土嚢陣地は既に用をなさず、河原の土手の傾斜を遮蔽に応戦している有様だった。


 機関銃による射撃は音も加わり凄まじい。そもそも一発一発の間隔が聞こえない。盛大に吹かしたエンジンか、電動ノコギリ、あるいは高速で稼働するミシンか。


 不用意に体を晒した二等兵は1秒ほどの時間で両腕を吹き飛ばされ、胴体にも複数発被弾し一瞬で絶命した。


 なぜ200メートルも離れているからとあの隆起を無視したのか。今に至っては詮無いことだが、小隊長は後悔せずにはいられなかった。


 既に10人を超す帝国兵が東岸にその骸を晒していた。小隊の誰の目にも現在地の維持が不可能であることは明白だった。さらに左手、200メートルほど離れた位置にある隆起からの射撃が厄介極まりなかった。機関銃に加え小銃による射撃も加わっている。小隊は凄まじい勢いで消耗していた。


 小隊長は迷わなかった。


 「後退、後退だ!西岸に渡れ!」


 東岸にはなお20人弱の帝国兵がいる。これが一度に固まって渡るのは良くない。まとまって射撃の的になり薙ぎ払われるだけ。


 一個分隊を先行させる。その一個分隊と、元から西岸にいる一個分隊の支援の下に、小隊長以下残りの一個分隊が渡橋する。


 「行け!」


 橋を渡るためには、当然機関銃の射線に身を晒さなければならない。橋には上部構造者の柱でいくらか身を隠せる。だが橋に至るまでに射線から身を隠せるものはなく、バタバタと倒れていった。


 西岸に無事達したのは5人だけだった。


 「行くぞ!」


 対岸から援護を得て小隊長は残存兵員を連れて地を蹴った。


 西岸からの援護射撃は、数が増したことにより隆起に陣取る敵兵を幾らか牽制しているようだった。


 頼りなかったとはいえ、遮蔽を捨て射線に身を踊り出す焦燥が小隊長の心を焼く。


 「止まるなあぁぁ!」


 絶叫は部下への発破か、それとも自分自身へか。


 橋まで一挙に走り抜けた。柱を遮蔽物に応射、敵を制圧しつつ──もっともできてるかどうかは判じかねる──西岸に渡る。


 「行け!行け!」


 ともすれば足がすくんでいる部下のケツを蹴り飛ばし西岸へと進ませる。


 「ぎゃあっ!」

 

 目の前で部下が撃ち抜かれた。細かく痙攣しているところにさらに複数発が撃ち込まれた。


 「クソ野郎共め!」


 激情に任せて引き金を引いた。


 そして、小隊長は感情に委ねた行動のために身を大きく晒し過ぎた。腹部、そしてヘルメットを貫いて頭部に被弾、即死した。


 小隊は機関銃火力に押し出される形で後退、橋は降下猟兵が制圧した。

 

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