航空撃滅
実に細かいことに反撃作戦について、国防軍は航空機の暖機運転開始の時間まで定めていた。
まだ周囲が暗闇に包まれている内からクラウ・シュミット軍曹は愛機のシュヴァルべに乗り込み離陸を待っていた。
迎撃機含む作戦参加機は夜明け前に離陸、朝一番に敵飛行場を叩く。既に四発の戦略爆撃機は離陸、空中集結を果たしている頃か。敵飛行場襲撃の口火を切るのは戦略爆撃機で、これに続いて戦闘機、戦術爆撃機が突入する。
迎撃機で敵飛行場襲撃に参加することに一抹の不安を抱かないこともない。迎撃機は高高度を飛行場するために二段二速の排気タービンを積んでいる。これは高高度用であって、低高度では使わないからデッドウェイトになる。
それでも機体性能は敵戦闘機より優位らしい。祖国の優秀な技術者に感謝。
一応司令部もこの迎撃機の特性は理解していて、積極的に低空での襲撃、爆撃機の護衛には使わない。迎撃機隊には上空5,000メートルほどで爆撃機の護衛、出張って来た敵機の迎撃が命令された。
作戦構想通りに進めば敵機はほとんど離陸できず地上で撃破されるだろう。多分に予備戦力的な面があった。
というのも戦闘機隊のいくつかも爆装して地上攻撃の任務を割り当てられた。これは帝国軍が前線飛行場を複数箇所に建設しており、爆撃機だけでは頭数が不足すると判断されたからだ。
開戦以来、双方が制空権を確立できなかったのはこの前線飛行場の存在による。これは地面を均し固めた程度で、運用も戦闘機に限られる。しかしこれが多数あるおかげで一度に全ての敵機を叩くことは難しく、また場合によっては他の前線飛行場に退避されてしまうこともあった。
指揮や整備を伴う運用は難しくとも、一時的な退避だけなら受け入れ可能だし、燃料の補給、簡単な整備なら行える。
これを一挙に撃滅するために多数の爆撃機と爆装した戦闘機が必要と判断された。
攻撃第一波の各編隊、各機は特に滑走路を集中して攻撃するよう命じられていた。滑走路を叩き敵機が飛び立てなくなったら後は一方的な展開が待っている。
シュトゥルムの編隊がレーダーを避けるために木をかすめる程低空で飛んでいた。これは捜索から漏れたレーダー、破壊に失敗した、または復旧したレーダーを避けるため。さらに人の目からも出来るだけ逃れるために。
編隊内を先行するシュトゥルムは片翼下にロケット弾8発、両翼合計で16発を吊り下げている。
後続の編隊は胴体下に1発、逆ガル翼の翼下に1発づつの計3発の500kg爆弾を懸吊。
編隊は薄明の空を一路帝国軍航空基地へと向かっていた。
この編隊が担当するのは国境からおよそ200kmの帝国空軍飛行場。滑走路は4,000m級のものが三本とかなり大規模なものになる。
まだ明け切らない空。帝国との国境を越えると幾く筋が立ち昇る黒煙を認めた。レーダーサイトが燃えている。
やがて空軍基地。編隊各機、搭乗員は緊張に手に汗が滲む。敵はどの程度待ち構えているだろうか。レーダーサイトが一斉に破壊されたことで警戒は厳重になっているのではないか。下手したら自分達は対空火網に頭から突っ込もうとしているのでは。
考えても仕方ないことではあったが、それでも不安は離れない。それにレーダーサイトは壊せても空軍基地のレーダーまでは潰せないのでは?いくら低空を飛んでいても指呼の距離にまで迫れば発見されるのでは。
編隊は横に広がり襲撃隊形をとった。これは迎撃機の離陸を阻止するため、なるべく短時間に一度の通過で全ての滑走路の破壊を企図してだ。
搭乗員は空軍基地上空を穴が開くほど睨んだ。時間、天候的には上空哨戒のために何機か飛んでいるかもしれない。
幸いにもそうした機影は認められない。僥倖と捉え、そして基地に突入するため上昇に転じた。
上昇する理由、それは投弾のためだ。低空を水平飛行したまま投弾するとコンクリートの滑走路で爆弾が跳ねて刺さらないのでは、との疑念が出て、その対策のため。
高度自体はそこまで必要ない。緩降下での投弾さえできれば良かったから登ったのは700m。
眼下では基地内の人影が慌ただしく走り回る。それを見れば十分だった。奇襲に成功した。
先行した編隊は取り決め通りに滑走路を集中して攻撃、これを使用不能に追いやった。5分後、後続の編隊は対空火器、レーダー、管制塔を潰した。この時対空火器は先行した編隊を追ってまるで正反対の方向の空を指向していた。
作戦初撃はこれ以上無いほど上手く事が運んだ。
爾後、単発、双発、四発爆撃機がおおよそ1時間おきに各基地、前線飛行場を爆撃。滑走路復旧の隙を与えなかった。
自分で書いておいてなんなんですけど、多分今回の話って航空撃滅戦じゃないかもしれない。でもほら、こっちの方がカッコいいから……。




