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異世界転生後は自分らしく  作者: zawa
第四章 未熟編
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潜入

「じゃあわしらもそろそろ行くとしようか」


 ほかの班と同じように、俺達の班も向こうのアジトに潜入することになった。ちなみにここは人気のない場所で周囲にほかの家はなく、敵のアジトだと思われる屋敷だけがぽつんとある状態だ。本当にTHE隠れ家みたいな雰囲気である。


「ここからはこちらの指示に従ってください」


 屋敷には当然アースを先頭にして入る。潜入は思ったより簡単に成功した。また、俺達のほかにもすでに二つのグループが潜入をすましている。潜入する人数を増やせば見つかるリスクも大きくなるが、屋敷の広さ、そして屋敷に地下室がある可能性まで踏まえると、どうしてもそこそこの人数がいる。さすがに十何人がひと塊で行動するわけにはいかないので、今回のようにいくつかの班で行動することになったのだ。


 俺たちは先頭のアースの指示に従って、敵に見つからないように屋敷の探索を始める。相手がディアナを誘拐した犯罪者で、国王の依頼という後ろ盾とディアナ救出という大義名分はあるとはいえ、やっていることは他人の家への無断侵入だ。こういう時に言うのはなんだが、なんか悪いことをしている気分になって少しドキドキする。


「……」


「……」


「……」


 仲間はみんな無言である。何か警戒すべきものがあった時などはみんなに注意を促すために声をかけることはあるが、それ以外の無駄話をする者はいない。こんな状況で無駄話してはいけないことはわかっているが、この緊張感でずっと黙ったままでいるのも少しつらい。もちろん、だからといって不用意に話しかけたりはしないが。


「何かおかしい」


 みんなの先頭を歩いているアースが疑問の声を上げた。


「何がおかしいのじゃ?」


「はい。この屋敷にいる人の気配が少なすぎるのです。こちら側の潜入しているはずの人数を差し引いたら、それこそ十人もいないのです。これだけの規模の屋敷で、その上大事な人質を隠している屋敷にしては人が少なすぎます。第一、こんなに簡単に潜入できること自体がおかしいです。これは何かあるかもしれません」


「人が少ない理由か」


 楽観的に考えるなら、敵が人手不足で屋敷に人数を全然割けなかったとか、油断していて屋敷に人を配置していなかったとかだが、さすがにそんなにうまくはいかないだろう。そう考えると、嫌な想像ばかりができてしまう。


 一番最悪なのは、すでに敵がここから逃げていることだ。ここを見つけた後に、交代制で何人かがこの屋敷を監視していたらしい。だが、監視の目が絶対というわけではない。監視の目をごまかす手は何パターンかあるだろうし、見逃しが一切ないとは言い切れない。

 実際、俺なら屋敷への出入りを監視されていたとしても〈テレポーテーション〉なりで逃げることができる。ほかにも荷物に紛れさせてディアナを運ぶとか、秘密の裏口があるとか、監視の目から逃れて運び出したとしても何らおかしくはない。


 もしすでにディアナが別の場所に運び出されているのだとすれば、これはとんだ無駄足になる。そればかりか、この屋敷はもう用済みだと向こうが思っているのだとすれば、この屋敷に何らかの罠を仕掛けている可能性もある。


 俺が敵の立場なら、屋敷に敵を招いてから屋敷を爆発させる。屋敷に何人か敵がいるのは気になるが、それを捨て駒だと考えているのなら十分にあり得る。


「ここは撤退した方がいいかのー?」


 校長もこの状況が罠だと思い始めたのだろう。撤退を視野にいれはじめた。


「しかし、まだそうとは限りません。むしろこの状況が罠でなかったら、千載一遇のチャンスを逃すことになりかねません」


 アースの言い分もわかる。もしこれが罠でなかったら大チャンスだ。撤退したら後で後悔することにだろう。まだこれが罠かどうかの確証は得られていない。罠かもしれないし、罠じゃないかもしれないのだ。


「じゃが、もし罠なら大変なことになるぞ」


「もしも罠だったとしても、それを食い破れば問題ないです。それに、自分の命で済むならば安いものです」


 これは厄介な班に入ってしまったかもしれない。アースは国に仕えている上に忠誠心も厚いのだろう。罠だとしても食い破ればいいというのはわかるが、自分が死んでも安いものだという考えは俺には理解できない。言葉の意味は理解できるが、そんな気持ちは俺の中には欠片ほどもない。あの爺に言われてこの依頼を受けたが、ディアナよりも俺の命が大事だというスタンスは全く変わってはいない。


「それは危険じゃろう。おぬしらはそこのところをどう思っておるのじゃ?」


「私は撤退に賛成です。我々以外にも疑問に思っている潜入組がいるでしょうから、一度そこと合流していろいろ話し合うべきだと考えます。とはいっても、私はこの手の任務の経験は浅いので、基本的には校長とアースさんに任せたいと考えています」


「俺は当然撤退に賛成だ」


「じゃろうな」


「だよね」


「とにかく、これで意見は三対一じゃ。それに、わしはこの班の隊長に当たる。潜入時はアースに任せるとは言ったが、お主以外の三人が撤退を主張しているのじゃ。もしもお主がわしらを納得させられるだけの理由を用意できるならよいが、お主の主張は罠なら食い破れ、そうじゃないならラッキー、もしも罠にかかってやられたとしてもそれはそれでしょうがないといったものじゃ。わしらの立場からすればとても納得できるような理由ではないと思うのじゃが?」


「うぐっ」


 アースも自分のがただの根性論にしかなっていないというのが分かったのか、言葉に詰まっている。


「お主の忠誠心は確かに立派じゃ。じゃが、お主の忠誠の形をわしらにまで強制するのはおかしいじゃろう。他の班がどうするかまではわからんが、もしどこも撤退しなかったとしても後方支援組に報告くらいはしておくべきじゃろう。とにかく一度屋敷から出るぞ」


 俺たちは屋敷に異常を感じ、このことを一度後方支援組に報告するために屋敷から撤退した。撤退したのはよかったのだだが、この時はまさか後方支援組があんなことになっているとは誰も思いもしなかった。





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