久しぶりの再会
「けっこう楽勝だったね」
「今回はこちらの作戦が上手くはまったからな。やっぱり作戦会議は重要なのだ。二人ともこれで作戦を立てる重要さが分かっただろう?」
「作戦を立てる重要さは元から知ってるよ。それに、今回のも結局臨機応変だっただろ」
「それはそうだが……」
「ウォルあんた、Aクラスでも結構楽しそうね」
「おお久しぶり」
俺に声をかけてきたのは、生まれ故郷であるロークスからずっと幼馴染のロークス子爵家長女のフィーネ・ロークスだ。フィーネとは入学してからクラスが違うこともあって、入学してからは一度も会っていなかったのだ。なので三ヶ月ぶりの再会である。
「おお久しぶり、じゃないわよ!なんで入学してから一度も連絡してこないのよ!」
そういえばフィーネとは幼いころから一緒にいたこともあって、三か月間一度も会わないということは無かったな。
「入学したてで忙しかったんだし仕方ないだろ。クラスも違うし、連絡する機会はなかったんだよ」
「それでも時間はあったっでしょ!」
「まあそうだな。連絡しなくて悪かったな。まさかそこまで寂しがるとは思わなかったもんでな」
「寂しがってなんかないから!勘違いしないでよね!」
うーん、なんか昔のツンデレキャラのようだ。ここでそれをつついても怒られそうだし、ここはおそらくこの学校での精神年齢年長者として素直に受け取っておこう。
「あの、久しぶりですね」
「ユリアさんですか。久しぶりですね」
「ユリアです!」
相変わらずはかなげで丁寧であるが芯は強い子だ。
「そうでしたユリア。そういえば、Sクラスでの生活はどうですか?」
「Sクラスの皆さんは優秀ですので、私ではついていくのに精一杯です」
「Sクラスはやっぱりレベルが高いのか?」
「優秀というよりは、みなさん実家で幼いころから勉強してきた人ばかりなのです」
「才能があるというよりは、経験豊富という感じなのか?」
「もちろん才能がある人もいますが、大体そんな感じです。Aクラスはどうですか?」
「Aクラスもそれと似ているな。Sクラスとの違いは、才能がちがうか、実家でそこまで厳しくやってこなかったかの違いだと思う」
「中には手を抜いたり、授業を聞いていない人もいるけどね」
アーシャはそう言って俺のほうを見る。
「まあ!そういう人もいるのですか!」
「まあ、クラスに一人はいるもんだよな」
「確かにそうだね。うちのクラスの場合はウォルだけどね」
「確かにその通りだな。ウォルコットはもう少し真面目にするべきだな」
「やっぱりウォルはだめね」
「ウォル様、ちゃんとしてください」
「みんなして責めないでくれないか?」
「責められるようなことをしているからでしょ」
「そうそう。僕たちも普段から困ってるよ」
「アーシャが言うことではないがな」
「それも確かだな」
「二人とも!」
「みなさん仲がいいのですね」
「ウォルにちゃんと友達ができるのかどうか心配だったけど、これなら安心できそうね」
「それは余計なお世話だよ。ところで話は変わるけど、二人はなんの競技に出ているんだ?」
「私はバトルキングに出場よ」
フィーネがバトルキングに出場することは当然知っていた。なんたって賭けの材料になるからな。ユリアの出場競技は本当に知らなかったが、フィーネに関してはわかっていたけど、フィーネにだけ聞かないのはよろしくないので、形だけ聞いたのである。
「私は……」
ユリアが恥ずかしそうにしている。
「どうしたユリア?なにか言いにくいことでもあるのか?」
俺の記憶では、おかしな動きをしたり露出度が高い衣装を着たりするような、人によっては恥ずかしいと感じるような競技はなかったはずだ。
「私は玉入れなのです。しかも魔法を使う役ではなく玉を投げるだけの役なので、パーティー戦に出ているような皆さんと比べると少し恥ずかしくなったのです」
「ユリアは戦闘じゃなくて頭脳派だからね。剣と魔法は平均だけど、テストの成績はトップクラスなんだよ」
「Sクラスで平均なら大したものだ。それに、実力はあるのに楽をしたいという理由で玉入れを希望した者もいるからな」
「ウォルあんたね、もう少しやる気を出せないの?」
「なんで俺だって決めつけるんだ!?」
実際はあっているけど。
「幼馴染の勘よ!」
「そんな勘があるのか……」
幼馴染の勘というのはすごいものである。
「それよりあんたたち頑張りなさい。私たちSクラスのパーティー戦代表はザイル・クラスタとその仲間の騎士部の連中よ」
「騎士部ということは、全員が近接戦闘タイプなのか」
ルナは賭けのため事前に情報を集めている俺たちとは違い、他の参加者の実力を下調べしてきていない。順調にいっても決勝まで当たらないSクラスとはいえ、もらえる情報はもらっておきたいのだろう。
「確かに全員剣や槍などの武器を使うけど、三人とも魔法を使えるし、一人は魔法での遠距離攻撃も得意だったはずよ」
事前に下調べ済みの俺から補足させてもらうと、リーダーであるザイル・クラスタは剣を中心に魔法も使うタイプであり、俺の知っている人で言うとルナと似ているタイプだ。俺とアーシャの調査によると、おそらくDランク程度の力を持っていると思われる。
俺の知っている限りで学校の同級生で現在Dランクに達していると思われるのは、今回戦うかもしれないザイル・クラスタと、学年主席であるカール・フロストである。
カールは魔法が得意であり、言うならば俺とタイプが似ているので、マジックキングのほうに出ているのである。彼の実力と、次期当主をまだ狙っているのかは知らないが、学校で優秀さをアピールしようとしている性格からして、おそらくマジックキングで優勝するだろうから、当然彼の優勝に賭けておいた。
そして、ザイルの仲間は俺やカールよりも剣に比重があるが、ザイルやルナよりは魔法に比重があるタイプの剣士と、ブーダと同じく遠距離の魔法を使えない槍使いだ。二人ともEランクの実力である。
一年生では大抵の子がFランクかGランクであり、Eランクまでいくと優秀な部類に入り、Dランクまでいくと将来有望であるとみなされる。
下馬評では完全にSクラス有利であるので、ここに勝ちさえすれば賭けの配当金がかなり大きくなる。
「たしかにSクラスもすごいけど、その前に次の相手であるCクラスのことを考えないとね」
「そうだった済まない。私も気が急いていたようだ」
「Cクラスはシードだから、どっちにしろ戦いを見ることはできないがな」
「だな。私たちにできるのは休んでコンディションを整えるくらいだな」
「そうみたいね。他の競技もそうだけど、三人とも頑張ってね。ウォルの幼馴染のよしみで応援してあげるわ。もしも決勝でSクラスと当たったとしてもね」
「私も助られたことがありますし、ウォル様たちのチームを応援させていただきます」
「それじゃあ応援よろしくね~」
「応援よろしく頼む」
「足手まといにはならないように頑張るよ」
「ウォルはちゃんと頑張れよ」
「ウォル様はちゃんとまじめに頑張ってくださいね」
「私たちがしっかり見張っておくから大丈夫だろう」
「安心してみててね~」
「そんなに信用ないのか」
自業自得とはいえ、ここまで信用がなかったのは少しショックだ。
俺には玉入れもあるので、Aクラスのみんながいるところに一度戻って準備することにした。




