企み
「それで、学校の様子はどうだ」
ここは王都内にある家の一つである。王都内で無数にある家とまったく変わった様子のない、いわば完全に景色に溶け込んだ家である。
その王都内のどこにでもあるような家の中の部屋の一室に、明らかに普通ではない力を持った四人の男たち、そしてそれらをまとめる一人の男がいた。
「やはり警備は厳重そうだ。だが、シルフォード城には到底及ばないし、学校側の警備はライルだけでなく学生たちの警護も兼ねているから、普段よりもライルに対する警護は明らかに薄い」
「しかもあの化け物爺もいないからな。近衛は当然何人かいるが、騎士団はあまり強いのがいない上に数も多くない。また、宮廷魔術師は確認できる範囲では一人もいない。率直に言って大チャンスだな」
王都の主戦力は、主に王のそばを守る近衛と、主に戦争や治安維持などを行う騎士団、そして戦争に出てくることが多い宮廷魔術師だ。他にも影と呼ばれる裏の仕事をするような組織もいるようだが、それらの詳細は明らかになっていないうえに彼らは表に出てくることは基本的にあり得ないので、主戦力とはいえない。
そしてこの中で一番所属数が多いのが騎士団であり、ランクで言うとDランク~Aランクの者が所属している。当然Dランクの者が一番多いので、数は一番多いが平均的な強さは三つのうちで最弱であるとも言える。
次に数が多いのが近衛であり。王のそばを守るという任務の性質上、弱者が選ばれることがない。騎士団から異動してくる者がいれば、逆に騎士団に異動する者もいる。Cランク~Aランクの者が所属しており、平均的な強さは騎士団よりも上である。
そして一番少ないのが宮廷魔術師であり、数は十人前後くらいしかいない。数が少ない分質はトップであり、戦場などでも切り札として扱われることが多い。ランクはBランク~Sランク(Sランクは一人だけ)であり、彼らはほぼ魔法だけでBランク以上にいる。宮廷魔術師という名前からもわかるように、魔法の優秀な者だけが成れる職であり、魔法もできるけど剣も結構できるBランクの者などは入ることができないのである。(これがAランクやSランクの場合は入れる可能性があるが)
今回の護衛は近衛が中心であること、学校側でも例年通りの警備を用意していること、そして学校が王都内にあることへの油断から、近衛以外は警備する強者が少ないのである。
「ああ。それに、生徒たちはまだ所詮一年だ。強い奴がいたとしても、よくてEランクかDランクが関の山だろう」
「上級生になるとEランクやDランクが普通にいるからな。学校側の警備は薄くなるが、その分守られるはずの側が強くなるからな。学年が上がれば上がるほど不利にはなるだろうな」
「しかも来年再来年もライルが見に来るとは限らん。今を逃せば同じようなチャンスは二度と回ってこんかもしれんな」
ここまでくればわかるだろうが、男たちはシルフォードの国王を狙っている。
「できれば捕縛だが、普通に考えてそれは難しいだろう。最初から殺そうとしてもらっても構わんぞ」
男たちのトップである男が、ここで初めて口を開く。
「はっ!我らが主よ。今回の任務は必ずや成功させて見せたいと思います」
男たちは敬った態度をとる。
「任せる。我らが悲願を達成させるべき時は近づいている」
「ライルの娘、そして貴族のガキどもはどうしますか?」
「貴族のガキどもは今回狙わなくていい。向こうの注意を分散させるために狙うのはいいが、特別狙う必要はない。邪魔するなら殺せばいいが、こちらからわざわざ殺しにいくこともないだろう」
「かしこまりました。して、ライルの娘に関しては?」
「それについてはできれば狙うくらいでいい。最優先目標はあくまでライルだ」
「かしこまりました。では余裕があったら狙う、ということでよろしいですか?」
「それでいい。私はこれから王都を出る。後は任せたぞ」
彼らのトップである男はそう言って部屋から出ていった。
「それじゃあ俺はすでに準備させている奴らと合流する。お前らも準備早めにそれぞれの位置に着けよ」
「我らも少ししたら行く。今回の任務は絶対に達成せねばならない。みな、気合を入れるぞ」
ここにいる四人の男たちとその仲間が起こそうとしている事件を、その標的になっている王を含めた会場の者たちはまだ知らないでいた。




