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異世界転生後は自分らしく  作者: zawa
第三章 クラス対抗戦編
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パーティー戦一回戦

「二人とも準備はいいか?作戦は覚えているか?」


「ルナは本当に心配性だなぁ~。作戦って言ったって、どうせほとんど臨機応変にでしょ」

 

 俺たちの作戦は基本的に臨機応変だ。なぜなら、冒険者をしている以上アクシデントはつきものだからだ。例えばゴブリン討伐に行って盗賊とエンカウントしてしまったり、天気が晴れから雨になったり、いきなりデータがないような魔物と戦わねばならない状況になったりだ。


 スポーツのように事前に戦う相手が決まっているわけでも、戦いのルールが決まっているわけでもないのだ。当然不正を監視して判定を下すような審判もいない。冒険者の勝利はなんにせよ生き残ることである。そのため、あらかじめ作戦を決めてもその通りにならないことが多いのだ。


 もちろんある程度の戦術というか陣形みたいなものはあるのだが、俺達は組んでまだ日が浅いことと普段は学校に行っているので練習する時間が少ないことで、全然成熟していないのだ。なので、俺達の作戦は自分たちが戦いやすいような陣形を組んでからあとは各自の判断にお任せである。


 今回はスポーツと同じで相手もルールも決まっている上に審判もいるので、本来なら普段よりも綿密に作戦を決めたりそれを練習したりするのだが、そんなことをするくらいなら冒険者として依頼をこなす方が個人の成長はできるし金も稼げる。

 それにパーティーには違うクラスのニニャだっている。俺達が練習をするとニニャは依頼を受けることができなくなる。


 なので作戦と言っても簡単なものでしかないので、改めて確認するまでもないものなのだ。


「それでも念のため作戦は確認しておくべきだろう。相手は下馬評では格下のEクラスとはいえ、油断は禁物なんだぞ」


「そうは言うけどさ~。相手だってどうせそんなに綿密な練習とかはしてないでしょ」


「それが油断だというに。それにウォルコットもだ。いつも冒険の時は私たちよりもずいぶん慎重なくせに、なんで今回はそんなに気楽なんだ」


「なんでって言われてもなー、だって命の危険がないんだからな。いつもよりも気楽でもしょうがないだろ」


 戦場では一つの油断や判断ミスが死に直結する。そんなところではいやでも慎重にならざるを得ない。それに比べたら今回のような死につながらないというのは、それだけで気が抜けてもしょうがないだろう。もちろん賭けのこともあるので負ける気はないが。


「パーティー戦に出る一年Aクラスの皆さん、前の試合が終わったのでそろそろ会場入りしてください」


「はい!それじゃあ二人とも行くぞ!」


「ああわかった」


「はーい。ていうか、なんか普段と違ってルナがリーダみたいだね」


「確かに。普段からルナがリーダーでもいいんだがな」


「それはどうかな~。僕としてはウォルのリーダーがいいと思うけどね」


「お前たち、馬鹿なことを言ってないでいくぞ。ちなみに私もリーダーはウォルコットがいいと思うぞ」


 俺たちは普段通りで、ある意味リラックスしながら会場に向かった。





「ではパーティー戦一回戦第三試合、Aクラス対Eクラスを始めます!」


 試合が始まった。パーティー戦のルールは至ってシンプルだ。審判に戦闘不能とみなされるか、自主的にギブアップするかだ。これはバトルキングとマジックキングでも同じである。ちなみに、本当にごくまれに死者が出ることがある。


 今回使う武器は当然刃をつぶしてある安全なものである。当たり所が悪くても死ぬことは普通ない。だが、魔法の場合は制限することができない。そして、死者や大けがというのは一年生や二年生などの低学年に起こりやすいのである。

 

 その理由としては、防御力と加減である。まず当然のことながら、下級生になればなるほど防御力が低い。いわば同じ攻撃でも、下級生のほうが負うダメージは多いのである。

 そして、下級生になればなるほど加減も下手である。実力差のある者どうしの戦いになってしまった場合に、強いほうが力を入れすぎて大惨事に、ということが何度かあったらしい。


 俺もその辺は当然気を付けなければならない。間違えて魔力を込めすぎたり、殺傷能力の高すぎる魔法は控えるつもりである。故意でなければ罪にはならないとはいえ、さすがに殺したくはない。この後の学校生活とかも面倒になりそうだ。


「相手は女の魔法使い二人に男の剣士一人か」


 パーティー戦でも武器に対しての制限が入るために、魔法を中心に戦うチームも多い。もちろん近接戦闘型をゼロにするパーティーはものすごく珍しい(まったくいないわけではなく、全学年通して毎年一チームいるかどうか位である)が、魔法中心の場合大抵は今の相手のように魔法使い、というか魔法中心の奴二人に近接戦闘型一人の三人である。


 また、当然ではあるがマジックアイテムにも規制が入る。俺の場合は直接戦闘力にかかわるアイテムは持ってないのでいいが、マジックアイテムに規制がかからなかった場合、金にものを言わせたもん勝ちになってしまうことになるかもしれないからだ。


 相手の三人を見たところ魔力を少し増強させる杖くらいしか持っていないので、まあ許容範囲だろう。


「向こうは完全に遠距離タイプの構成だな。そうなると接近戦で仕留めた方がいいか。ルナが言っていた通り下のクラスだからと言って油断はするべきではないからな。それに学校の基準上、ニニャのような一芸特化型は比較的下のクラスになりやすい。クラスの代表である以上、彼らもそれに当てはまる可能性は高いからな」


「おー急に普段通りになったね」


「それでこそウォルコットだ」


「そういうのいいから。剣士のほうは俺がやるから、二人は近接戦で魔法使い二人はつぶしてくれ。〈鑑定〉で見たところ大したことはなさそうだから、二人のスピードで楽勝だろ?」


「僕が見たところでも、それで問題ないと思うよ」


「私もそれでいい」


「始め!!」


「〈ウォーターボール〉」


 試合の開始と同時に俺が先制の〈ウォーターボール〉を放ち、それを合図に二人が敵の魔法使いに向けて突っ込んでいった。


「やらせるか!」


 剣士の男(いや年齢的に男の子といった方がいいのか?それとも少年といった方がいいのか?まあめんどくさいから男にしとくか)は、後衛の魔法使い二人に向かったアーシャとルナを止めようと動き出した。だが、当然俺がそんなことをさせるわけがない。


「おっと、ここは通行止めだよ」


 二人よりも後に動き出した俺が、自分の仲間をフォローしようとした男の動きを止めた。


「魔法使いに剣で負けてたまるか」


「何を言っている。剣だってある程度使えるさ」


 俺は男に向かって剣を振るう。


「お前を倒してすぐにみんなのフォローに行ってやる!」


「お前にそれができるかな?」


 あれ?なんか俺悪役っぽくない?全然悪いことはしていないはずなのに、なんか悪いことしている気分になってきたんだけど。


「くそっ!負けてたまるか」


 男の実力は普通だ。もっと正確に言うなら、Aクラスでは普通レベルだ。俺は父さんに鍛えられたおかげで、Aクラスでも剣はうまいほうに入る。だが、ここで彼を俺が倒す必要はない。俺がしたいのはあくまで時間稼ぎである。


「頑張れEクラス!」


「負けるなー!」


「Aクラスもがんばれー」


「Eクラスいけー」


 Eクラスの応援のほうが多く感じる。観客もどちらが優勢かわかっているんだろう。俺も負けている方を応援したいという気持ちはわからないでもない。


「おいそこの剣士、そこにいる生意気な魔法使いを早く倒せ」


 てめえブーダ!何敵の応援してやがんだ。別にお前に応援されたくはないが、敵のクラスの応援はおかしいだろ。


「剣も使えるとはいえ、魔法使いなんかに剣で負けてたまるかー!」


「その意気込みは買うが、残念だったな。周りを見てみろ」


「へ?」


 男が周りを見ると、彼の仲間の魔法使い二人が倒れており、敵の仲間の二人がすでに自分を囲んでいる状態であった。


「それでどうする?三対一だが、まだ続けるか?」


「可能性がある限り諦めない!と言いたいところだけど、俺にはほかにも出場する競技はある上に、ここは戦場じゃないしな。俺達の負けだ!ギブアップする!」


「勝者Aクラス!」


「やったー」


「よし」


「まあこんなもんだな」


 わかっているかもしれないが、今回俺は剣士相手に時間稼ぎして三対一の状況にすることが目的だった。そのため基本的には攻勢に出ず、向こうの攻撃を防御したり躱したりしていた。

 もちろん向こうも何回か俺から逃げて仲間のところに行こうとしていたが、当然そういう時に限って俺は攻撃する。


 ルナたちも俺の狙いを察しており、なるべく早く相手を倒そうとしていた。


「やっぱり俺たちは分断されて負けたんだな」


「まあそういうことだ。作戦が上手くいってくれてよかったよ」


「すごいな。俺の名前はナッツだ。冒険者をしている。お前の名前は?」


「俺か?俺の名前はウォルコットだ。俺も冒険者だから、冒険者ギルドで会うこともあるかもな」


「ああ、その時はよろしく頼む」


 俺は彼にはある程度好印象を抱いている。それはギブアップしてくれたからだ。無駄に抵抗されなくて俺が楽だったからというわけではなく、熱くならずに自分の置かれている状況を冷静に判断していたからだ。


 また、ここは戦場ではないという言葉と、自分が出るほかの種目に支障がないようにという意見には共感できた。ちゃんと先を見ているし、彼の言葉はもしここが戦場だったら全力で抵抗していたと取ることもできる。


 俺は彼にある程度の好感を持った。なので、


「ああ。こちらこそよろしく頼む」


 俺とナッツはお互いの手をがっしりと握り合った。





 


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