バトルキング代表決定
「決勝戦を行う。決勝は、ブーダ対ルナ」
バトルキングクラストーナメント決勝は、ブーダ対ルナだ。
二人はほかの生徒たちよりもかなり強く、圧倒的とまではいわないが、危なげなく勝ち上がってきた。
戦いの様子、それに前評判からしても、この二人が勝ち上がるのは順当だと言える。
ちなみにアーシャは、ルナに準決勝で敗北した。スピードを活かしたいい攻めだったが、残念ながらルナに軍配があがった。道具などをたくさん使った、からめ手アリのルールならばもう少し戦えたのだろうが、それは今回のルールでは使えない。
今回のルールはまさに、正々堂々正面から戦えと言わんばかりであり、魔法が得意な俺はもちろん、トリッキーな戦い方を好むアーシャには相性が悪かったといえる。
ともあれ大方の予想通り、正面から相手を打ち倒すタイプの二人が順当に決勝まで進んだ。
「やはりルナが来たか」
「こちらも手加減はしないぞ」
「当然だ。本気でかかってこい。こちらも、本気でいかせてもらう!」
二人が向かい合うことで、周りには緊張感が生まれる。
「試合開始!」
開始と同時にルナが飛び出した。やはりルナもブーダの弱点ともいえるスピードで戦うつもりだ。
ブーダも決して遅いわけではないのだが、当然ルナのほうが早い。それに、ブーダのパワーはクラスで断トツトップなので、パワー勝負では勝ち目がない。スピードとテクニックで勝負するしかないのだ。
パワータイプのブーダと、バランスタイプのルナ、どちらが勝つのか見物だな。
「ハァ!」
意外なことに、ルナと同時にブーダも飛び出した。これまでのブーダは基本的に、相手の攻撃を一度防いでから攻撃していたのだが、今回は始まって早々に動いた。
俺からすれば十分奇襲だったのだが、ルナは最初から予想していたらしく、ルナはブーダまで移動しながらも攻撃を右に難なくかわし、スムーズな動きで反撃に転じる。
「グワッ」
ブーダにルナの一撃が入る。
ブーダは今回のトーナメントではずっと、右に木剣、左に木の盾の装備だ。ルナはブーダの攻撃を右にかわすことで、盾に防がれることなく攻撃を行えたのだ。
これだけ聞くと、自分の装備の弱点を簡単に突かれたブーダが間抜けに思えるかもしれないが、ブーダだって当然そのことは考えている。現に俺も何度かそこを突こうと試みたが、あまり上手くいかなかった。
ブーダは攻撃や防御、回避の仕方を工夫して、そういったところを突かれないようにしていたし、ルナ以外には問題なく成功していた。
あくまでルナの動きがいいのが原因なのだ。俺が見たところ、ルナ以外の今回のメンバーで上手くそこをつけそうなのは、スピードがあるアーシャくらいだろう。
「それだけか?」
「なに!」
ブーダがルナに反撃する。木剣とはいえ、ルナの一撃を食らってもすぐに動けるようになるのだから、ブーダの耐久力にはやはり目を見張るものがある。
「くらえ」
「そうはいかない」
ルナはブーダの攻撃から逃れるために、素早いバックステップで攻撃を躱した。
「今のタイミングでかわされるとはな」
「ぎりぎりだったがな。それより、私の攻撃を食らったのになんともないのか?」
「そうだ。と言いたいところだが、ちゃんとダメージは食らっているさ。ただ、耐えきれる範囲は超えていなかったというだけさ」
「身体強化などの魔法は使えなかったとはいえ、それ以外では全力の、渾身の一撃だったのだがな」
ルナは悔しそうな顔をしている。だが無理もない。スキルを使えるならともかく、そうでなければあれが今のルナの全力の一撃ということだ。それを生身で耐えられたのだから、戦士として悔しく思っても不思議じゃないし、当たり前のことだ。
「こちらの攻撃には耐えられるか!?」
ブーダがまた仕掛ける。今までは受け身のことが多かったのに、ルナ相手の時は自分から仕掛けにいっている。
「まともに受けさえしなければいい」
ルナはブーダの攻撃に、上手く対処している。時には躱し、時には防ぐ。そして、チャンスがあれば攻撃にも転じている。
ブーダはルナに比べると力で押しまくっているイメージだが、力だけでなく技術も垣間見える。
二人の戦いはまさに戦士の戦いといった感じで、俺たちと同じ十歳とは思えない。才能もあるだろうが、それだけでなく二人とも努力もしてきたのだろう。
技術とスピードはルナのほうが上だが、パワーや耐久力はブーダのほうが上だ。攻撃自体はルナのほうが通っているが、耐久力のあるブーダはまだ動けている。
反対にブーダの攻撃は全然通っていないが、ブーダの重い攻撃は、木剣で防ぐだけでも体力を大きく消費する。
また、無駄な動きが多いわけではないが、ルナだってまだまだ未熟だ。防ぐだけでなく、躱すことでもそこそこの体力を消費する。
何度も攻撃を食らっているが、持ち前の耐久力によって動けているブーダと、技術とスピードによって直撃は避けられているが、運動量やブーダのパワーによって体力が減ってきているルナ。
レベルの高い二人の戦いは今日一番の長期戦になったが、どちらが勝つにせよ、そろそろ決着がつくだろう。
「「これで終わらせる!」」
二人とも、これが最後とばかりにぶつかり合う。激しい剣戟の中、ついに決着がついた。
「勝者、ブーダ!」
「よっしゃー!」
勝者はブーダになった。ブーダのパワーと耐久力が、ルナを上回ったのだ。
もしもこれが真剣の戦いだったら、ルナが勝っていたかもしれない。木剣によって、ルナが与えられるダメージが軽減されたことが原因の一つだろう。
また、ルナはブーダよりも魔法に関しては上だ。真剣を使い、魔法を含めたすべての力を使っていいのならば、ルナが勝っていたかもしれない。今回の勝敗は、ルナよりもブーダに有利なルールだったことも大きいだろう。
「これで俺が代表決定だな」
ブーダが代表に決まった。ブーダはこのルールではすごく有利なので、賭けるのはブーダでもいいかもしれない。もちろん他のクラスの出場者も見るべきだが、優勝候補の一角であることは確かだ。
「ブーダには人気が集まるかもね~」
「アーシャの言う通りだな。もちろん、念のため他のクラスも見ておくべきだろうがな」
「その通り!ニニャも出るかもしれないしね」
「ニニャも出るかもしれないのか……」
ニニャはかなり強い。あの小さな体から放たれる強力なパワーは、本当にどうなっているのか。さすがファンタジーと言わざるを得ない。
ニニャは身体強化魔法を使わなくても強い。俺の見たところでは、ブーダに勝ってもおかしくないくらいの力を持っている。
そんなニニャがバトルキングトーナメントに出るとなれば、結構荒れるかもしれない。
「もしニニャが出れのであれば、そっちに賭けてみてもいいかもしれないな」
「そうだね。まあそこは、これから要相談にしようよ」
賭けの受付が始まるまでは、まだ時間がある。当然のことだが、出る選手が決まらないことには賭けようがない。
まだ時間はあるので、ゆっくり相談していけばいい。
トーナメントが終わった後、食堂では上機嫌で晩御飯を食べているブーダの姿があった。




