バトルキングクラストーナメント
「これから、バトルキングのクラス代表となる出場者を決めるトーナメントを行う」
俺は結局、バトルキングのトーナメントに参加することにした。どっちに参加しようか少し迷ったが、あえて苦手な方に参加することにした。
俺としてはどちらに参加してもよかったのだが、手を抜いて負けるのではなく、本気で戦える方にした。
もちろんもし優勝したとしたら、本番に出ても構わない。俺の本領は魔法戦なので、自分の実力を隠すのにはちょうどいいし、苦手な戦闘スタイルでも本気で戦うことによって、何か得られるかもしれない。
少なくとも、魔法戦で手を抜いてわざと負けるよりはよっぽど身になるはずである。
「ウォルはこっちに来たんだ。実力を見せない気満々だね」
アーシャは当然俺の実力をある程度知っているので、俺の狙いがわかるのだろう。
「まったく、そんなに実力を隠したいのか」
ルナも当然、俺が魔法のほうが得意なことは知っている。ルナはやれやれといった風な顔をしている。
「そうは言うが二人とも、本当に俺に勝てる確信はあるのか?」
身体能力や戦闘に関しての才能では負けているかもしれないが、俺だって両親に魔法だけじゃなく近接戦闘も鍛えられているんだ。頭を使えばそう簡単に負ける気はしない。
「確かに手ごわいかもしれないけど、このルールなら僕のほうが上だと思うよ」
「私も負ける気はしないな。ミスにさえ気を付ければ私が負けはしないだろう。もちろん、魔法を使われた瞬間に私の負けになるだろうがな」
二人とは時々模擬戦をしている。パーティーの結束を固めることと技術向上の目的で、ニニャも含めた四人でよく特訓しているのだ。
三人ともどちらかと言えば近接型なので、魔法の場合は俺一人で特訓することが多いのだが、剣や格闘などは四人で特訓している。そのため、ルナとアーシャは俺の近接戦闘の一力や戦い方を知っているのだ。
「ふん!貴様では俺には勝てんぞ。というか、魔法なしでさえ貴様に負けてたまるか」
「ブーダか……」
ブーダは今回の優勝候補の一角だ。スピードはあまりないが、巨体を生かしたそのパワーは、クラスでもトップだろう。
「言っておくが、いくら魔法なしでも、魔力は使っていいんだからな」
魔法はなしだが魔力はあり。少しややこしいが、要するに体と武器に魔力をまとわせることだけは許されているのだ。
たまにわざとなのか勘違いしてなのか、身体強化魔法を使うやつもいるのだが、そいつは容赦なく失格にされる。魔法に優れた先生たちが、選手が魔法を使わないように常に見張っているのだ。
だが魔力は使える。というより、戦闘では無意識に魔力を使うということは珍しくないので、それすらも禁止にしてしまっては、違反者が続出してしまうのだ。特に一流の戦士になればなるほどその傾向が強く、六年生になると全員が無意識のうちに違反してしまってもおかしくなくなるのだ。
俺は肉体能力や技術ではブーダに負けるが、魔力では当然勝っているので、そう簡単には負けないだろうし、上手く戦えば勝てるかもしれない。魔力だけでなく、頭でもブーダよりも上という自信はある。
「もし仮に当たっても容赦しないぞ」
「それはこっちのセリフだ」
俺たちはお互いににらみ合った。
「「ふん!」」
俺とブーダはそう言って別れた。
「ウォルよかったの?あんな挑発するみたいな真似して」
「いつものことだから構わないよ。それに、どちらかと言えば向こうから仕掛けてきたからな」
「それもそうだね。じゃあ僕も、ウォルには負けないよ」
「私もウォルには負けんぞ。というか、ブーダと同じく本職の戦闘で、魔法使いのウォルには負けたくないのだ」
「三人とも、いや、全員返り討ちだ」
やはり互角だったりちょっと上だったりといった相手と戦うのは、勉強になる上に少しわくわくする。
マジックキングの方に行っちゃうと、かなり格下とやるだけになるのでつまらないのだ。普段の授業でやっているみたいに、あえて負荷をかけた状態で勝負してもよかったが、今日はそっちではなく近接戦闘でやりたい気分だったのだ。
もしかしたら、最近冒険者パーティーではずっと後衛なので、久しぶりに前衛としてガチで戦ってみたいと思ったのかもしれない。
普段ルナたちと組手することもあるが、他のクラスメイトとはガチでしたことがなかった人がほとんどなので、この機会に何人かと戦っておきたい。
俺は少し楽しみにしながら、他者の試合を見て自分の順番まで待った。
「次、ウォル対ブーダ」
「ふん!お前ごとき、俺の敵ではないわ」
「勝負だブタ!」
「ブーダだ!」
いきなりブーダとの対決になるとは思っていなかった。俺のほうが不利なのだろうが、それでも勝算はいくつかある。簡単に負けてやるつもりはない。
「勝負開始!」
『ダッ!』
先手必勝!俺のほうがスピードは上なので、その利点を生かしてやる。
「それくらい予測できていたぞ!」
ブーダは俺の攻撃を木の盾で受け止める。
ちなみに俺の装備は木剣一本、ブーダの装備は右に木剣、左に木の盾だ。
「まだだ」
俺はブーダに蹴りを入れる。
ブーダはけりの痛みには耐えているが、そのせいで少し動きが鈍ったところに、連撃を仕掛ける。
「盾強打!」
ブーダが俺の剣を防ごうと、盾を思いっきり出してくる
『カン!』
「は?」
ブーダの盾が、俺の剣をものすごい勢いではじいた。そのせいで、俺の体勢が崩れてしまう。
「終わりだ」
ブーダが剣を振り下ろしてくる。
「やばい!」
俺は間一髪体をひねって躱し、ブーダから距離をとって体勢を立て直した。
「あの状態でやられぬとは、身のこなしについてはかなり鍛えられたようだな」
「今のはスキルか?」
「当然その通りだ」
ブーダの使ったスキルである盾強打は、その名の通り盾で強打するスキルだ。
バトルキングでは、スキルの使用は認められている。魔法は魔力を使って発動されるが、スキルは魔力を使わない。体力や精神力を使うものや、一日に使用回数の制限があるものなど、代償は様々だが、魔力を代償に使うものは基本的にない。
そのため、バトルキングではスキルの使用は許されているのだ。
「お前がスキルを使えるとはな」
スキルを覚えるのは簡単ではなく、ある程度の才能が必要である。この学校にも使える人は当然いるが、まさかブーダが使えるとは思っていなかった。
そこまで強力というわけではないが、今の俺にとっては厄介なスキルだ。
「かかってこないのか?」
仕掛けたいのはやまやまなのだが、考えなしに仕掛けるとまた同じ結果になる。
「どうだろうな」
俺は心境を悟られぬように不敵に笑う。
「来ないなら、こっちから行くぞ」
ブーダがこちらに向かって突進してくる。早くはないが遅くもない。だが、こちらが考えをまとめるには短すぎる。
「やるしかないか」
策は特に考えられていない。せめて魔法が使えればとは思うが、それは言い訳に過ぎない。というか、何で身体強化魔法も使っちゃダメなんだ?スキルはいいのに身体強化魔法はだめって、どれだけ魔法を排除した戦いをさせたいんだ?入試の近接戦闘では使用できたのに、バトルキングではだめなんてなんかおかしくない?
俺は有効な策も考えられないまま、ブーダに向かっていった。
「勝者、ブーダ」
俺は敗北してしまった。あの後スピード差を活かしてブーダに何発か入れることはできたのだが、ブーダが倒れることは無かった。
ブーダの耐久力、そして一撃の重さは、俺よりも数段上だった。
魔法の使用禁止というルールはあったが、それは最初から承知の上だ。今回は素直に負けを認めるしかない。
「おい、次は魔法ありの本気の勝負でも勝つからな」
ブーダは勝ったのだが、複雑そうな顔をしている。
まあ、本気ではあるが全力ではない相手と戦ったのだ。俺たちはあくまでルールの中で全力を尽くしたので、喜んでも問題はないし俺が全力でないことを責めることもできない。
だが、どこか引っかかっているという顔だ。
その気持ちはわからないでもない。俺が言うのもなんだが、ここは素直に喜んでおけばいいと思う。
「それはさせない」
俺とブーダはお互いに健闘を称えあい?お互いに握手して締めくくった。




