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異世界転生後は自分らしく  作者: zawa
第一章 幼少期
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誕生日

 今日は俺の五歳の誕生日だ。

 この国では五歳と十歳、十五歳の誕生日を祝うことになっているので、俺は今日五歳になるから誕生日会が開かれる。もちろん、誕生日会といってもそんなにたいそうなものじゃない。せいぜい家族でちょっとしたごちそうを食べるくらいであり、間違ってもフィーネのお祝いのパーティーと比べてはならない。というか、あれは特別な例であり、普通の庶民は家族内で祝うことが大半だ。


 うちは三年前にも姉ちゃんの五歳の誕生日会を家族でしたので、今回もおそらくそれと大体同じだろう。


 姉ちゃんの誕生日会のときは、母さんが普段よりも張り切って作った料理を食べてから、誕生日プレゼントを渡すという流れだった。

 前世での誕生日会もそんなものだったし、そのことに関しては特に文句はない。むしろ、ちゃんと祝ってくれるだけでありがたいというものだ。


 その誕生日プレゼントだが、特に希望は聞かれなかった。姉ちゃんの時は剣とアクセサリだったので、俺の誕生日プレゼントもそんなに大差ないだろう。だが、もう精神的には二十を超えているので大体どうなるのかわかってはいるが、それでも少しばかり期待してしまうのである。





「それでは、ウォルコットが無事五歳の誕生日を迎えたことを祝しまして、乾杯!」


「「「乾杯」」」


 俺の五歳の誕生日会が始まった。

 三年前にやった姉ちゃんの誕生日会と比べても今のところそんなに大差ないが、それでも大満足である。


 母さんはなかなかの料理上手だ。しかし、もちろん本職の料理人には劣るだろう。実際、フィーネの五歳を祝うパーティーで出された料理のほうが、味は上だった。あの料理は本職の料理人が作っただけではなく、貴族のパーティーということで使われた食材だって高級なものばかりだろう。俺は詳しく知らないし聞いてもいないのだが、あのパーティーにかかった金額は食材だけでもかなりのものだろう。さすが貴族である。

 

 ロークス家はあまりパーティーを開催しない。クライフさんいわく、パーティーに金をかけるぐらいなら、その金でもっと領地をよくしたいということらしい。貴族としてそれはどうなの?とは思うが、領主としては立派な考えだと思うし、この町に生まれてきてよかったとも思う。

 クライフさんの考えは立派ではあるが、貴族である以上最低限しなくてはならないこともあるし、他の貴族と仲良くしておくことで利点が生まれることも多い。

 例えば、領地同士の交流が活発になることで貿易が盛んになり、凶作になった時の食糧支援、モンスターや盗賊、反乱軍や他国の軍などに町が襲われてしまった際の援軍要請、町が襲われて壊れた後の修復の際に、金銭的及び人的支援を求めるなど、他の貴族と仲良くしておくことで、困ったときに助けになってくれるかもしれないということが見込める。そういったこともあり、ああいったパーティーも何度か開いているのである。


 話は少しずれたが、そういったこともあり今日の料理はあの時の料理に味では劣る。しかし、どちらがおいしく感じるかといわれれば、迷いなく今日の料理のほうがおいしく感じるといえる。

 それはやはり、仲のいい家族と食べているからであろう。パーティーの時のように居心地の悪い場所は、少なくともこの世界に生まれてからは初めてだった。それに比べればずいぶんいいものである。もちろん、母さんの料理があの時のパーティーには及ばなくとも、十分においしいということもあるが。


「お母さんの料理、やっぱりおいしいね」


「ありがとうシオン。でも、シオンも剣ばかりやってないで、少しくらい料理もできるようになっておかないと大変よ。嫁の貰い手がなくなるかもね」


「うー、言われなくてもわかってるよ」


 姉ちゃんはどこか困った様子で返事をした。おそらく、料理が苦手なのだろう。俺も前世では学校の調理実習くらいしか経験がないので、あまり人のことは言えないが。


「もちろん、ウォルも料理を学んでおいたほうがいいわ」


「えっ!俺も!?俺は嫁には行かないし行けないよ」


「そんなことは当然わかってるわ!でもね、冒険者などのように野外で活動したり、場合によっては野宿するかもしれないような仕事に就くつもりなら、料理を作れるようになっておくことは重要よ」


 確かにそうだ。野外で活動するならば、携帯食料だけでは心もとないし、なにか調理することが必要なものも持っていく可能性もある。それに、場合によっては現地での食料調達という手段をとる場合も少なくない。そういった場合は、否が応でも自分でそれを調理しなければならない。

 料理ができる仲間と一緒に行けばいいと思うかもしれないが、自分でできるに越したことはないし、その仲間が怪我したりして料理できなくなった時には、他のメンバーでしなくてはならない。それに、料理のできる仲間が運よく見つかるとは限らないし、その仲間だってどれくらいできるのかわからない。

 

 俺には異世界の知識もあるし、技術さえあれば他の人よりもいい料理を作れるだろう。本格的に勉強するかどうかはともかく、簡単なものくらいは作れるようになっておいたほうがいいだろう。


 それはそれとして、この魔法が中心になっている世界では、料理が出来なくても野営でおいしい食事ができる手段が存在している。


「でも母さん、空間系の魔法の一つに《マジックボックス》があるよ」


 そう、この世界には素晴らしい魔法があるのだ。この《マジックボックス》とは、魔法で自分が作り出した空間にものを収納できるというものである。生きているものは収納できないそうだが、空間の中の時間は止めたり進めたりできるそうだ。また、空間を幾つか作って、一つ時間が止まる方、もう一つは時間が進む方というふうに分けたり、こっちは武器でこっちは衣類などといった、種類別に分けることもできるらしい。時間を止められるところに料理を入れておけば、いつでも温かい食事が食べられることになる。


 自分で料理が出来ずとも、どこかの食堂とかで大量に作ってもらい、それを《マジックボックス》に入れておけば、自分で料理が出来なくても大丈夫だ。


「確かにそうだわ、。ウォルの言うようにマジックボックスを使えれば、買ってきた料理を保存したりできるわ。でもね、ウォルは《マジックボックス》が使えるの?」


「それは・・・」


 そう、これが一番の問題だ。《マジックボックス》はほかの魔法と同じように、使用者によって効果の大きさが違う。具体的には、使用者の魔力量によって容量が決まるのだ。その点に関しては特に心配してはいないのだが、問題なのは、《マジックボックス》が将級魔法であることだ。


 将級魔法を使えるものは少ない。宮廷魔術師でも、将級までしか使えないものは多い。そもそもこの国の宮廷魔術師になるには、最低でも将級魔法以上を使えないといけないのだが、将級魔法の上となると聖級魔法になり、習得する難易度が一気に高くなる。それに、宮廷魔術師も何百人といるわけではなく、五十人もいないという。将級魔法を使えるということは、誇らしいことなのだ。

 また、俺が聞いた話では、聖級魔法を使える宮廷魔術師はこの国で三人しかいない。その上となると、建国から生きているとかいう爺さんしかいない。


 そして将級魔法なんて高度なもの、まだ五歳でしかない俺が使えるわけがない。一度軽い気持ちで挑戦してみたのだが、まったく上手くいかなかった。魔力量的にはいけなくもないのかもしれないが、技術的にはまだまだだろう。

 俺にはどうやら魔法の才能があるらしいが、残念ながらラノベのチートように、努力なしにいきなり何でもできるようになるわけではなさそうだ。


「今は使えないかもしれないけど、将来は使えるようになるかもしれないじゃないか。それに、《マジックボックス》は使えないかもしれないけど、マジックバッグがあるじゃないか」


 マジックバックというのは、《マジックボックス》とほぼ同じ効果を持つ魔道具だ。ほぼ同じ効果というのは、マジックバッグは一つのバッグで、時間を止めたり進ませたりすることができないからだ。

 ちなみに、時間を止めるほうのマジックバッグの売り上げのほうがいい。というか、時間を進ませる方はほとんど売れてない。これは、購入者が使う用途が基本的に物を運ぶためか物を保存するためだからである。時間を止めていないほうだと、食べ物なら腐ってしまうし、武器や家具などでも、劣化してしまう。

 そのため、マジックバッグのほとんどが時間を止めるものであり、むしろそうじゃないものが売っているのを探す方が難しい。


 それでも、特に困ることはないのだが・・・


「だめよ。ウォルにだってマジックバッグがいくらするかわかるでしょ。少なくとも、今のウォルだと一番安いものでも無理だわ」


 まさに母さんの言う通り、マジックバッグは非常に高価なのだ。当然、マジックバッグはその容量によって値段が違うのだが、その金額がものすごいのだ。


 マジックバッグは、小、中、大、特大の四種類があるのだが、一般的に『小』でも白金貨一枚、つまり100万R、日本円で1000万円くらいするのである。

 もしかしたらこの値段が高いと思うかもしれないが、マジックバッグと《マジックボックス》には、重さを感じないという利点もある。正確には重さを全く感じないのは《マジックボックス》のほうだけで、マジックバッグのほうはバッグの重さを感じるが、それはあくまで誤差の範囲だ。

 俺にこの値段が妥当かどうかわからないが、中の時間を止めることができて、荷物の重さを全く感じず、バッグの見た目よりもたくさん入るものならば、欲しいとは思う。


「そうだよなー、そんな大金持ってないしからなー。あっ!そうだ、十歳の誕生日プレゼントとかどう?」


「何言ってるの!そんなに高価な誕生日プレゼント、あげるわけがないでしょう」


「そうだね。残念だけど、ウォルの誕生日だとしてもそんなに高価なものはあげられないよ」


 ダメもとではあったけど、やっぱりだめか。


「それに、もしも《マジックボックス》を習得するかマジックバッグを手に入れたとしても、料理は念のため習ったほうがいいわよ」


「どうして?」


「だって、中の料理を食べつくしちゃう可能性があるじゃない。そうしたときとかに簡単なものも作れないと不便よ」


 さっきは失念していたが、そういう可能性もあるな。


「そういえば、僕もミネルバにはそうした面でよく助けられたなぁー」


「そうだったの?」


「そうさ。このマジックバッグに入っていた食料を使い果たしたときなんかは、よく世話になったものだ。僕は料理があまりできなかったからね」


「あらあなた、あまりできなかったじゃなくてまったくできないでしょ」


「あはは、確かにそうだね。僕は今でも料理はからっきしだからね」


 母さんと父さんのパーティーでは、母さんが料理担当だったらしい。もしかしたら、父さんが全くできなくて母さんが苦労したから、俺たちに強く言っているのかもしれない。

 

 それ自体は別にいいのだが、それよりも気になったことがある。


「てっいうか父さんと母さん、マジックバッグ持っているじゃないか!それをかわいい息子に託すとかないの?」


「「ない」」


「そこではもらないでよ!」


 二人の様子を見るに、譲ってくれそうにはない。


「わかったよ、《マジックボックス》が使えるように練習しながら、料理も簡単なのくらいは作れるようにするよ」


「それがいいわ。もちろんシオンもね」


「ぐえっ、ばれた」


「当たり前でしょ。存在感消そうとしたって無駄よ。他では通じても、あなたたちの母親である私には通じないわ」


 途中からずっと黙っていたのは、存在感を消すためだったのか。別にそれはいいが、女の子なのだから『ぐえっ』はやめてほしい。


「そうだ!ウォル君に誕生日プレゼントを渡さないといけないよ」


「うまく話をずらしたわね。なかなかやるじゃない。でもそうね、ウォルに誕生日プレゼントをあげなくちゃね」


 なんだか自分がうまく利用された気がして複雑だが、誕生日プレゼントが欲しいのも事実である。


「そうだね。今日は何をくれるの?」


「ウォルへの誕生日プレゼントは、剣と本よ」


 剣と本かー。剣はともかく、本はどんな内容か楽しみだ。


「そういえば、私の時も剣だったね」


「そうね。これから剣のけいこをするんだから、剣をプレゼントしたわ。といっても、修業は基本的に木剣で行われるのだけどね」


「そういえばそうだったね。でもウォル、安心していいよ。お父さんとの修業では、たまに真剣を使うときもあるから」


「そうだよ。僕の修業は安全のために木剣を使うことが多いけど、実戦は真剣だからね。時々は真剣を使う練習をしないといけないのさ」


 初耳だ。実戦で木剣を使うのはよほど酔狂な奴くらいだろうが、修業でもたまに真剣を使うとは思わなかった。『安心していいよ』なんて言われても、むしろ不安になった。


「それと本だね。僕たちが買ってきたのは、将級魔法と聖級魔法が載っている本だよ」


 それはすごい。是非とも見てみたいものだ。


「ウォルは魔法が大好きだからね。でも一つだけ条件があるわ。将級魔法はともかく、聖級魔法を練習することは禁止するわ。意味はもう分かるわよね」


「わかってるよ」


 俺はしっかりとうなずいた。


 俺だってそろそろ魔法のことが段々とわかってきたころだ。もっとも、魔法を完全に把握したわけでもないし、そもそも魔法を完全に把握できる人がいるのかどうかさえも怪しいが、それでも分不相応すぎる魔法を覚えようとしても、習得できないばかりか、もっと怖いことが起こるかもしれない。それくらいのことはわかる。


「それなら大丈夫そうね。でも、読むだけなら好きなだけ読んでもいいからね」


「ありがとう二人とも」


「ウォル君!私からもプレゼントがあるわ」


「えっ!姉ちゃんからも!?」


「そうよ!この日のためにお小遣いを貯めてきたの」

 

 それはありがたい。どんなものをくれるかはわからないが、俺のためにお小遣いを貯めてまで買ってくれたものだ。その気持ちだけでも嬉しいし、どんなものでもありがたく受け取ろう。


「私からの誕生日プレゼントはこの服よ」


 そう言って姉ちゃんは一枚のシャツを広げて見せた。

 それが別にかっこ悪いとは思わなかったので、これからも着るつもりだ。


 俺は基本的に自分で服を選んでいない。まだ小さいので親に選んでもらってもそんなものだろうとは思うが、姉ちゃんはもうすでに自分で服を選んでいる。さすがは女の子ということだろう。センスも悪くないようだ。


「ありがとう姉ちゃん。大切に着るよ」


 俺はそう言って笑顔を見せた


「キャー!ウォル君かわいい!」


 姉ちゃんはそう言いながら鼻血を流した。


『ドサッ』


 姉ちゃんが鼻血を流しながら倒れてしまった。どれだけ弟が好きなのだと言いたいところだ。父さんも母さんも複雑な顔をしている。


「とりあえずお開きにしましょう。あなた、シオンを部屋のベッドに連れて行って」


「そうだね、わかったよ」


「ウォルもちゃんと歯磨きしてから寝るのよ」


「はーい」



 こうして、俺の五歳の誕生日会は予想だにしない形で終わりを迎えた。


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