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異世界転生後は自分らしく  作者: zawa
第一章 幼少期
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けんがく

 俺はパーティーでたらふく飯を食った後、少し早めに帰宅した。

 

 これはあんな所にいたくはなかった気持ちと、パーティーで出てくる料理がおいしかったことにより、早く帰りたいのに帰れないというジレンマに陥ったためだ。

 

 途中でどこぞの男爵家のデブが来なければ、もっと早めに帰ることができたはずだ。


 おそらくパーティでの俺の評判は最悪だろうが、そもそも名誉貴族の息子だし、俺は今のところどこかの家の家臣になるつもりも、商人になるつもりもないので、まあいいだろう。幸か不幸か俺がなるつもりの冒険者は、実力主義なので今回のパーティーは特に関係ないだろう。


 唯一の心配は母さんたちに怒られることだが、そもそも大して教育もしていない五歳の子供を一人でパーティーに送り出すほうが悪い。


 そんなことを考えているうちに家についた俺は、ゆっくりと家のドアを開けた。


「ただいまー」


 俺がドアを開けると、家族三人が食事をしている最中だった。


「「おかえりー」」


「ふぉふぁえうぃー」


「こらシオン、ちゃんと口のものなくなってからしゃべりなさい」


 今日の晩御飯は少し豪勢なようだった。


「ねえ母さん、今日の晩御飯いつもよりも豪華じゃない?」


「そうよ。今日はウォルがパーティに出席しておいしいもの食べてるだろうから、私たちもおいしいもの食べようということになったのよ」


 母さんめ、パーティには参加したくないけど、おいしいものは食べたいってか。

 

「おいしいものが食べたければ、パーティに来ればよかったじゃないか」


「嫌よ、あんなつまらないところ」


「まあそれには同感だったけどね」


 心底同感だ。料理はおいしかったが、おいしく食べるには味だけじゃなく、環境も大事だと改めて認識させられた。


「あらウォル、なにか嫌なことでもあったの?」


「少しね。でも基本的に料理食べてるだけだから、どちらかといえばつまらないという感じだね」


「それで少し帰ってくるのが早かったのね」


「そうだよ。あっ、父さんにお願いされたことがあったんだった」


「僕にお願いされたこととはなんだい?」


 アイツの伝言を伝えるのはしゃくだが、約束してしまったものはしょうがない。


「父さんに剣を教えてほしいんだって」


「僕に剣を?その人は貴族の子供かい?」


「そうだよ。ラーラ男爵家のブーダ・ラーラだって」


「ラーラ男爵家か・・・」


 父さんは何か考えているようだ。ラーラ男爵家にはなにかあるのか?


「思い出した。あの領地の家か」


 訂正、特に何もなかった。父さんもすぐに思い出せないなんて、よっぽど田舎なんだな。

 俺は田舎すぎて逆に覚えていたが。


「あの家の子は確かウォルと同じくらいだったよね?」


「そうだよ。今年で五歳だって言ってた」


「まあ!ウォルがパーティで友達を作ってくるなんて」


 いや違う、母さん、あいつは違う。あいつを友達とは呼べないはずだ。


「そんなんじゃないよ」


「そうなの?それで、いつ稽古するの?」


「それを父さんに聞きたいんだ。あいつは明日の午後に来るみたいだから、それまでに予定を教えてくれればいいんだけど」


 父さんは考え込んでいるようだった。


「そうだなあー。うん、明日の午後ならいいよ。ちょうどシオンの剣の修行もするところだったしね。でもその子はいつ来るのかな?」


「詳しくはわからないけど、ご飯を食べ終わってからなのは確実だよ」


 今考えれば、具体的な時間を指定しておくべきだった。


「そうか、ならこうしよう。僕とシオンで午後から修業してるから、その子が来たら庭に通してあげてよ。

 そこでその子の剣を見ることにするよ」


「わかった。ならあいつが来たら庭に行くように言っておくよ」


 そう言ってから俺は風呂に入ろうとした。


「ウォル、ちょっと待って。明日の修業はウォルも参加すること」


 俺が?俺はまだ一度も剣の修業はしたことがない。いつかは修業することをわかっていたのだが、まさかこのタイミングで始めるとは思わなかった。


「俺はまだ剣を握ったこともないんだよ。初めての修業がこのタイミングなの?」


「すまない、勘違いさせたようだね。何もいきなり実戦なんてことはしないよ。

 明日のウォルの仕事は見学さ」


「見学?」


「そうだよ。僕とシオン、それにウォルの友達の三人でいろいろやるから、それを見るんだ。

 本格的な修業は五歳になってからと思っていたんだけど、もうすぐ五歳になるんだから、いい機会だし明後日から始めることにしよう」


 それなら納得だ。つまり明日は三人の剣を見ていればいいんだな。


「言いたいことはわかったけど、あいつは友達なんていいもんじゃないよ」


 甚だ心外である。


「はいはい、わかったよ。そういうことにしとくね」


 父さんの顔が優しげだ。おそらくほほえましいと思っているんだろう。


「ウォル君、明日はお姉ちゃんの剣を見ててね!」


 姉ちゃんはどことなくうれしそうだ。得意なものが見せられるとあってうれしいんだろう。

 

「それじゃあ、明日楽しみにしてるよ」





 そして翌日になった。今は昼ご飯の最中だ。


「ウォル君!これが終わったら私の剣を見てね」


 俺に自分の剣が見せられるというだけあって、姉ちゃんはご機嫌だ。


「うん、わかったよ。あいつが来たら一緒に行くから」


「すいませーん。ウォルと約束しているブーダ・ラーラです」


 ブーダがもう来た。だが、さすがに早すぎる。


「あれ?ウォル君、昼ご飯が終わる時間に来るように言ってたんだよね。ちょっと早くない?まだ13時前だよ」


 この世界の時間の表記は、前世とまったく一緒だ。わかりやすくて助かる。


「確かに早いよね。でも来ちゃったし、一応行ってくるよ」





「おい、さすがに早くないか?」


「ああ、すまないな。待ちきれなくて少し早く来てしまった。

 でも大丈夫だ。ちゃんと昼ご飯を食べてから来たからな。」


 やっぱり悪びれない。というか、飯時というのはお前だけではなく、俺たちのことも含むに決まってるだろ。

 13時前は確実に飯時だ。


「少しどころじゃないだろ。俺たちはまだ食事中だ」


「そうか・・・ならどこで待っていればいい?」


「はぁー、庭で待っててくれ。それと、木刀は持ってきているか?」


 剣の修業といっても、もちろん真剣でするわけではない。


「大丈夫だ。毎日使っている木刀を持ってきている」


「それなら安心だ。庭で体を軽く動かしておいてくれ」


「当然だ。いきなり体を動かすと危ないからな」


 この世界にも、準備運動という概念はある。

 筋肉をほぐして動きやすくするなんて知識はないが、体を軽く動かした後のほうが動きやすく怪我しにくいということが証明されている。


「じゃあ、俺たちも昼ご飯を食べたら行くよ」


「うむ、待っているぞ」


「それじゃあな、ブタ」


「ブーダだ!」






 そして庭での稽古が始まった。


「今日はシオンのほかにもう二人いるようだね。ウォルはともかく、もう一人の男の子には自己紹介してもらおうかな」


「はい。私の名前はブーダ・ラーラです。今日はよろしくお願いします。一応男爵家の嫡男ですが、あまり気にせずにやってください」


 こいつ、完全に猫かぶってるな。


「おいブータ、なに猫かぶってるんだ」


「ブーダだ!それに猫かぶっているわけではない。これが俺の正しいしゃべり方だ」


「何が正しいしゃべり方だ。それに、一人称がもう私から俺に代わってるぞ」


「うっうるさい。別に猫かぶったっていいだろ」


 ブーダは猫被りがばれて顔が真っ赤だ。


「しょうがないだろ。なんか気持ち悪かったからな」


「気持ち悪いとは何だ!せっかくルーク殿に会えたのに、好印象を抱かせられないではないか」


 人間は第一印象で九割は決まるという。こいつが猫を被った気持ちはわかるが、それにしたって気持ち悪すぎた。


「あはは、二人とも仲がいいね」


「「どこが(ですか)」」


「やっぱり仲がいいじゃないか。それと、ブーダ君だったね。そんなにかしこまらなくてもいいよ。普段どおりでいいんだよ。今日はよろしくね」


「わっわかりました。それでは私、いや、俺のほうこそよろしくお願いします」


「あなたがウォル君の友達ね。私は姉のシオン、よろしくねブータ君」


「はっはい、よろしくお願いします。それと、僕の名前はブーダです」


 ブーダの顔が赤い。惚れたとまではいわないが、年上の女の子である姉ちゃんに緊張しているんだろう。

 姉ちゃんは弟の俺から見ても、だいぶかわいいからな。俺も弟として生まれたときから一緒にいなかったら、ブーダのような反応をしていたかもしれない。


「そっか、ごめんね。つい間違えちゃった」


「大丈夫です!よくあることですから」


「おい、俺の時とずいぶん反応が違うじゃないか」 


 俺が間違えたときはもっと怒っていたはずだ。


「当たり前だ。お前の時は悪意があったからな」


「確かに悪意があるときもあるが、ない時もあるぞ。それに、最初の印象のせいもあるんだからな」


 そうだ。そもそも、最初の横取りのせいが大きいはずだ。


「たしかにそれは認める。まあ、この人がお前の姉とは思えないくらいきれいというのもあるがな」


「ほとんどそれだろ!」


「何を言う、八割くらいだ」


「十分すぎるわ!だが、相手がきれいな女の子だから許したくなるという気持ちは大いにわかるがな」


「そうだろ」


「「これは当然だな」」


 初めて二人の意見が一致した瞬間であった。


「わかりあっているところ悪いけど、二人とも準備はいいかい?」


「「大丈夫です」」


「それじゃあまずは素振りから。ウォルはそこで見学してるように。ブーダ君は初めて見るからね。とりあえずやってみてくれ」


「ルーク殿、ウォルは参加しないのですか?」


「ウォルはまだ剣を握ったことがないからね。今日は君との合同稽古の形になるから、初心者のウォルは明日から始めようと思うんだ」


「なるほど。わかりました」


 そう言って、ブーダは剣を振り始めた。

 父さんの言った通り、俺は剣をよくわからない素人なので、ブーダの素振りが良いのかどうかわからないが、傍目から見ているからか、ずいぶん簡単そうに見えた。


「うん、悪くはないかな。でも、腕で振りすぎてるね。もっと体全体を使わないと」


「はい!」


 なるほど、あれでは腕だけで振りすぎているとみなされるのか。


「君は五歳にしては腕の力があるようだけど、早いうちから腕力だけに頼っていても、いい剣士にはなれないよ」


「わかりました」


 確かに、五歳にしては腕力が強そうだ。

 父さんに注意されているが、ブーダの表情は嬉しそうだ。きっと、憧れている父さんに教えてもらえるのがうれしいんだろう。


 ちなみに、姉ちゃんのほうの素振りはブーダよりもかなり鋭く、俺から見ても違いが一目瞭然だ。


「よし、これで素振りは終了だ。これから打ち合いに入る。まずは僕とブーダ君から」


「「はい」」


 やっと打ち合いか。これで面白くなってきた。


「ルーク殿、よろしくお願いします」


「こちらこそよろしく。自由にかかってきていいからね」


「では、行きます!」


 そう言ってブーダが父さんに斬りかかった。しかし、父さんはいとも簡単にそれを防いだ。


「遠慮なく打ち込んでごらん」


 父さんがそう言うと、ブーダは何度も打ち込んでいった。だが、それらもすべて防がれている。


「ハア、ハア」


「もう終わりかい?」


 ブーダは、父さんへの連続の打ち込みで疲れてしまったようだ。ブーダは何度も打ち込んでいたが、いまだに一発も当たっていない。

 ブーダはだいぶ疲れているようで意気が上がっているが、父さんはまだまだ余裕そうだ。


「まだ、まだです」


「気のすむまでかかってごらん」


 ブーダはまだやる気のようだ。しかし、見る限り限界が近い。五歳児にしては持ったほうだとは思うが、さすがにもう無理だろう。


 その後、ブーダは体力切れで倒れた。

 

 

 結局父さんには一撃も与えられなかったが、見るべきところはあった。魔法アリならともかく、魔法なしの純粋な近接戦闘では、今の俺はブーダにはかなわないだろう。なんだかんだ言って、これから近接戦を学ぶ上でいい刺激になったな。


「ブーダ君は筋がいいね。まだ幼いんだから、基礎を中心に練習していけば、将来もっと強くなると思うよ」


「ありがとうございます」


 ブーダはかなりにやけている。父さんに褒められたことがよっぽどうれしいんだろう。


「じゃあ次はシオンの番だね。ウォルは時々シオンと戦っているようだから知ってるかもしれないけど、シオンは結構強いんだ。年齢差もあるから、ブーダ君よりも確実に強い。今後のためにも二人ともよく見ておくように」


 そう、俺はたまに戦っているので知っているが、姉ちゃんは強い。父さんはマイルドに表現しているが、ブーダとは比べ物にならないくらいの強さだ。


 ちなみに、俺と姉ちゃんの戦績は五分五分だ。


 俺としては普段戦っている姉ちゃんよりも、父さんがどうやって姉ちゃんと戦うのかというほうが気になる。


「おいウォル、シオンさんはどのくらい強いんだ」


 ブーダも気になるようだ。


「見ていればわかるよ」


 そして、二人の戦いが始まった。

 今回のルールは魔法なしのようだ。ブーダも使っていなかったので、なんとなくそういう雰囲気になったのかもしれない。


 二人の戦いはなんといっても速かった。二人とも身体強化魔法を使っていないにもかかわらず、まるで使っているかのようなスピードだ。これにはブーダも驚いている。


「二人ともあれで身体強化魔法を使っていないのか」


 驚いて当然だ。父さんはともかく、姉ちゃんはおかしい。


「また強くなったね。でも、まだまだかな」


 父さんの攻撃が少しずつ入り始めている。スピードやパワーに差は見られない。やはり技術の差なんだろう。

 姉ちゃんもそれがわかっているのか、さらに剣速を上げることで対処しようとしているが、逆にその隙を突かれてしまっている。


「ハア、いくらお父さん相手とはいえ、ウォル君の前で負けられないわ」


 姉ちゃんとしてのプライドなのかもしれないが、そもそも俺に負けているのはいいのか?と問いたい。


 姉ちゃんも健闘していたと思うが、やはり父さんにはまだまだ敵わないみたいだ。父さんは同じ振りで違う軌道にしたり、意図的に剣速を変えてみたりといった、様々なフェイントで姉ちゃんを翻弄していた。


「やっぱりまだまだかー。お父さんの本気も出させられなかったしね」


 やはりというか、父さんはまだまだ本気ではなかったようだ。


「さすがに八歳の娘には負けられないよ。シオンはもう少し柔軟な戦いができるといいね。動きが直線的過ぎて、ある程度の相手なら読まれると思うよ」


「わかったわ、お父さん」


「それじゃあ、今日の合同稽古はこれで終わりだ。ブーダ君は気を付けて帰ってね」


「わかりました。今日はありがとうございました」


「いいんだよ。同年代の剣士は、ウォルにも刺激になっただろうからね」


「それじゃあ、終わりの挨拶だ。せーの!」


「「「「ありがとうございました。」」」」





 


 







 


 




見学と剣学です。

剣学は少し強引ですが

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