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異世界転生後は自分らしく  作者: zawa
第一章 幼少期
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パーティー2

 俺がおいしいものを食べようといろいろ回っていると、後ろからずっと付きまとってくる奴がいる。

 無視してもよかったのだが、しつこく付きまとってくるのも面倒なうえに不快なので、しょうがないから声をかけてやることにする。


「おい、いい加減付きまとわれるのは迷惑なんだが」


「なんだ、気づいてたのか。てっきり気づいていないものかと思ったぞ」


 こいつ・・・なにも悪びれずに平然と認めやがった。

 たしかに下手にごまかされてもムカつくが、これはこれでムカつく。

 

 どっちにしろ俺の後を付きまとっていたことがムカつくだけなんだが。


「とっくに気づいてたよ。というか、いい加減うざいからやめてくれるか?」


「まあ落ち着け。俺が後を付けていたのは、なにも嫌がらせのためだけではあるまい。」


「嫌がらせのためもあるんだな」


「・・・半分だけだ」


「てめえ、ふざっけんなよ。半分もありゃ十分だわ」


 これは完全にギルティだろ。半分っておかしいだろ。四捨五入したら嫌がらせじゃねえか。


「悪かった。だがこれにはしょうがない面もあるのだ」

 

 半分は嫌がらせのくせになんていいようだ。


 ムカつく気持ちは変わらないが、あと半分の理由を聞いてやろうじゃないか。


「で、その理由はなんだ」


「おお、聞いてくれるか」


「いいからとっとと話せ」


「実はな、お前がフロスト伯爵家の次男であるカール・フロストの誘いを断ったのを聞いていてな。ここだけの話、俺も誘われたんだが断ったんだ」


「確かにそれは事実だが、それがどうかしたのか?」


「いやなに、なぜお前が断ったのか気になってな」


「それなら後をつける前に、さっき言えばよかったじゃないか」


「すまん、タイミングが合わなくてな」


 タイミングは確実にあったはずだ。

 まあ、あんなやり取りの後に言えないかも知れないが、あの時に言えなかったのは完全に自業自得だろう。


「はぁ、このことで言い合いしてもしょうがないからな。

 とりあえずお前の質問に対する答えだが、簡単だよ。俺の力が足りないのと、貴族の権力闘争に巻き込まれたくないからさ。これで満足か?」


「なるほど。確かに名誉貴族の息子であるお前からすればそうかもな。だが、一応お前は誘われたんだ。うまくいけば将来甘い汁を吸えたんじゃないか?」


「そうだとしてもさ。それに必ずしもうまくいくとは限らないだろ。親が仕えているとかならともかく、これまで関係性がなかったんだ。どっちもの意味でどうなるかわからないだろ」


「まあ、そういうことなら」


 そもそも成功する可能性はそんなに高くないだろうし、よっぽどの働きをしなければすぐ切り捨てられそうだったからな。好き好んで関係を持ちたいとは思わないタイプだ。


 しかもあいつが失敗したら、伯爵家に目を付けられる可能性もあるからな。


 それに甘い汁を吸えるというが、それがどの程度甘いのかということもある。つまり、仮にあいつが伯爵家当主になったとしても、どうせ名誉貴族にしてなにかの役職に入れるくらいだろう。

 それくらいなら、自由に冒険者でもしていたほうがましだ。


 結局あいつに協力したところで、リスクに対してリターンが少なすぎる。しかも成功の見込みはそこまでないように思える。

 賭けとしたら間違いなく不人気だろう。


 まあ一番の理由は、アイツが単純に気に食わなかったことだがな。このことはこいつに言う必要はないだろう。


「そういうことだ。ほかに付け加えるならば親がロークス子爵の部下であり、俺が勝手にそんなことすれば迷惑がかかることくらいだな。ところでデ・・・ブータ。お前はなんで断ったんだ」


「おいてめえ、今デブって言おうとしただろ。というか俺はブータじゃねえ、ブーダだ」


 デブはともかく、ブータでもブーダでもそんなに変わらないと思うが。

 まあ本人がそう言うなら、少なくともアイツの中では大事なことなんだろう。


「わかったわかった。ブータじゃなくてブーダな。それで話は戻るけど、どうしてお前も断ったんだ」


「俺はそういうの好きじゃないんだよ」


「はぁ?お前の親は男爵だろ。アイツの下につくかどうかはともかく、ああいうことはこれからも起こるだろ」


「大丈夫さ。どうせうちなんてほとんどの貴族は眼中にないだろ。それにああいうことは親父がやればいいことだ」


 こいつ・・・完全に悟ってやがる。


 だが、あいつはそんなに簡単にこいつをあきらめるのか?

 

 見たところアイツの取り巻きには、今日は名誉貴族の子供くらいしかいなかった。

 部下だったり、家中での権力争いとしてなら使えるかもしれないが、当主になるために兄に勝ちたいなら、他の貴族の子弟を味方につけることも重要なはずだ。

 

 貴族を幾つか味方につけておけば、金銭面、軍事面、政治面などで援助してくれるだろう。

 本当は王族を味方につけたいだろうが、さすがにそれは無理だとわかっているだろうし、上級貴族でも同じ立ち位置の者ならともかく、次期当主とかだといいように利用されるかもしれないしな。


 フロスト家は伯爵家だから、どこぞで恨みを買っていてもおかしくないし、他の貴族は伯爵家のお家騒動を利用する可能性は高い。

 

 シルフォード王国内にだって派閥があるのだ。敵対派閥からすればいいネタだろう。


 そういったことを踏まえて、次期男爵家当主であるブーダは悪くないだろう。

 ブーダからしても、ラーラ男爵家とフロスト伯爵家に縁ができるのだ。リスクは大きいが、俺と違ってリターンも大きいだろう。

 ラーラ男爵家が既にほかの上級貴族と仲がいいならともかく、そうじゃないならそこまで悪い話ではないはずだ。カール・フロストの力はともかく・・・


「でもお前は次期当主だろ」


「まあ・・・そうだけどな」


 こいつは爵位を継ぐ気がないのか?貴族なら大抵自分の家を大きくしたいはずだが。


「まあ俺には関係ないことだな。それで、話は終わりか?」


「いや待て、まだ終わりじゃない。お前の父親を紹介してくれないか?」


「お断りします。それじゃあこれで」


「ちょっ、ちょっと待てくれ。話くらい聞いてくれ」


 考えてみれば、なぜ俺がこいつの話をこんなに長々と聞かなければならないのだ。というか、さっきからこいつはなんなんだ。

 俺は早くおいしい料理が食べたいんだ。


「今度はなんだ!わかってるとは思うが、俺の父親は貴族の血縁じゃないぞ!」


 イライラからか、少し強い口調で言ってしまった。


「それは当然知っている。お前の父親はルーク殿だろう」


 こいつはさっきもそうだったが、意外と肝が太いのだろうか?なにも気にした様子がない。図々しくてマイペースなだけかもしれないが。いや、きっとそうだろう。


「まあ俺の父さんの名前はそれであっているが、だからどうした?」


「剣を教えてほしいのだ。うちの領内では、そんなに教われないからな」


「本人が了承するか知らないが、父さんに話だけはしておいてやってもいい。

 だがなぜ父さんなんだ。お前の領内にはお前よりも腕の立つ奴だっているだろ」


 そうだ。さすがに五歳の子供よりも腕の立つ奴くらいるだろう。

 仮にこいつがよっぽどの天才で、マジもんのチート野郎とかだったらともかく、こいつからはそんな感じがしない。


 念のため言っておくが、俺は何もこいつの見た目だけで判断しているわけではない。


 確かにこいつの見た目はよくはない。ブサイクという意味ではなく、この体で剣をするもんじゃないだろう。

 重戦士とかならともかく、普通の剣士じゃないだろうし、それに重戦士だとしても、それならそれでもっと大きくないといけない。

 また、こいつから感じる魔力は高くない。俺に《鑑定》は使えないので、大体しかわからないが、おそらく普通くらいだ。

 こいつが《偽装》を使っている可能性はあるが、おそらく使っていないと思う。


 まだ五歳であることを考慮するにしても、実力的に父さんに習うのはもう少し後だろう。 


「お前は重戦士か?」


「いや違う。俺のやっているのは騎士の剣だ」


「よしわかった。痩せてから出直してこい」


 その体で騎士はきついだろう。五歳の筋力にその脂肪は負担が大きすぎる。


「何を言っている。俺は動けるデブなのだ」


「お前、自分がデブだって認めたろ」


「自分で言うぶんにはいいのだ」


 こいつ、やっぱりいい性格してやがる。


「俺の父さんに教わりたいって気持ちは分かった。だが質問の、お前の領内にお前よりも腕の立つものがいないのかということはどうなんだ」


「確かに俺よりも強いものはいるが、そいつらはそんなに技術はないんだ」


「でも五歳のお前よりはましだろ?」


「たしかにそうだが、俺とそんなに変わりないぞ」


 そんなに変わらないだって!?だってまだ五歳だろ。やっぱりチート野郎なのか?


「お前は・・・実は天才なのか?」


「はぁ?そんなわけないだろ。少なくともそういわれたことは一度もないぞ」


「だよなー。やっぱりそうだったか」


「なんか気に食わない言い方だが、俺は天才ではないな」


 やはり俺の思い過ごしだったようだ。


「それなら、なんでお前の領内の兵士の練度はそんなに低いんだ?」


「おい、それはどういう意味だ」


「だって天才じゃない五歳と同じか、少し上くらいの技術しかないんだろ?それじゃあやばいだろ」


「なるほど。お前は何か勘違いしているようだ」


「勘違い?俺の推測は間違っていないと思うが。」


「確かにお前の推測は正しい。うちの領内の兵士の練度は決して高くない。いや、むしろかなり低いだろう。

 王都はおろか、この町の騎士団よりも確段に弱いと断言できる」


「じゃあ何が勘違いなんだ?」


「うちの兵士のほとんどは村の農民だ。正規の兵士など、両手の指で数え切れるほどしかいない」


 戦国時代の領民兵みたいなものか。だが、この世界で数によってカバーしようなど、愚かしいものだ。


「兵士がそれだけで大丈夫なのか?」


 十人もいないんじゃ、魔物や盗賊などが攻めてきたときに厳しいだろう。それに農民だと大して役に立てないだろう。


「言っておくが、うちの領地は人口数百人の村だぞ。そんなに兵力が持てるわけなかろう」


「町じゃないのか?」


「男爵で町を持っているものなどいないぞ」


「えっ、そうなの?」


「知らんのか!?まあ五歳だから当然ともいえるか。そもそも町を持てるほどになれば、男爵から子爵に陞爵されるのだ」


 つまり、領地をある程度発展させることができたら、爵位が上がるということか。


「つまり男爵はみんなそんなに裕福ではないのか?」


「そうでもない。そもそも今のは領地持ちの話であって、役職持ちのものだっているからな」


 ここシルフォード王国には、領地を持っている貴族とそうでない貴族がいる。


 大抵大きな貴族ほど広い領地を持っているし、王家の直轄領だってある。簡単に言うと、貴族すべてに与えられるほどの領地がないのだ。


 そのため、貴族の中には領地は持っていないものはある程度いる。


 そういう者たちは、王都や上級貴族の領地で何か役職をもらったりするのだ。


「領地を持っていなくても王都で上のほうの地位にあるものならば、同じ男爵でもそちらのほうが裕福ということはよくある」


「つまりこういうことか?普通の村よりは大きくても、そんなに余裕がないから、軍事に割く人手がもったいないということか?」


「そうだ。しかもうちには、特産も貴重な資源もない。それにうちは貧乏だ。正規兵といっても村の力自慢が応募してきただけだ。うちで一番強いのはEランクの兵士だが、そいつは力はあるが技術は低い。逆に技術さえあればDランクは固いみたいだから、戦力としては期待はできるが、教えるのには向いてない」


 忘れてた。こいつは田舎の貧乏貴族の家であった。


「とにかく、父さんに伝えてはみるが、いつなんだ?お前だってずっとここにいるわけじゃないだろ?」


「じゃあこうしよう。今日家に帰ったらルーク殿に聞いておいてくれ。俺は明日の午後にお前の家に行くから、その時話し合おう」


「いいけど、飯時には来るなよ」


「当然だ」


 この世界には電話がない。こういう方法は正直めんどくさいが、断るともっとめんどくさくなりそうなので、了承しておこう。


「よし!ではともに料理を食べに行くとしよう」


 はぁ?なんでこいつと一緒なんだよ。こいつと一緒だと食べたいものが全部食われそうだ。


「嫌だよ。俺たちの出会いを忘れたか?」


 忘れたとは言わせない。


「すまん。忘れた」


「てめえ、いい度胸じゃねえか」


「まったく口が悪いな。冗談だ覚えているさ」


 やはりこいつは悪びれない。それに、口が悪いなんてこいつにだけは言われたくない。


 だが大丈夫だ。今の俺には切り札がある。


「そうか、父さんには何も言わないでおくよ」


「待て、待ってくれ。わかった。今回のことは謝罪しよう。ルーク殿は俺のあこがれなんだ」


 こいつにとって父さんはあこがれだったのか。てっきり父さんがこの町の騎士団長だから、一番腕が立つというだけの理由だと思っていた。


「冒険者志望なのか?」


「いや違う。というか知らんのか?ルーク殿は結構有名だぞ」


「知ってるけど、どっちかというと母さんのほうが有名だろ」


 ブーダは複雑そうな顔をしていた。


「それはそうだが、ルーク殿だって有名なんだ」


「まあそのことはいい。それで、何でついてくるんだ?」


「当然だろ。お前は俺たちがあいさつしている間、ひたすら食べていただろ。つまり、どれがおいしいのかわかっているんだろ?」


 誰も気づかないと思っていたのに。

 あっ、でもそういえばカールにも気づかれてたんだった。


「見られていたのか。目ざとい奴め」


「なるべくおいしい料理をたくさん食べたいからな」


「食い意地の張った奴め」


「お前には言われたくないがな」


 残念ながらこの件に関してはその通りだ。


「わかったが、全部取るなよ」


「残っている量によるな」






 その後、ウォルコットとブーダが食べ物の取り合いを繰り広げたかどうかは、皆さんの想像に委ねたい。





 









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