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シークレット・ブラッド  作者: うさぎさん⭐︎
第2章 ムーンライト・ラビリンス

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9/42

2 秘密と嘘(後編)



「……⁈」

 途中から妙に甲高く、少女のそれのようになった悲鳴に、牙は固まった。

 顔を上げ、相手を見つめた。

 ――少女だった。

 首筋から一筋赤い血を流し、目に大粒の涙を浮かべている。 

 背が縮み、肩幅が狭くなり、胸が膨らんでいる。

 顔立ちも、なんだか少し違っている……。

 思わず、太陽学園の制服着せて、ヘアピン持ってきて、でこ出しにしたくなるその姿は……。

「双葉さん⁈」

 黒い瞳に戻った牙の頬を、彼女はグーで殴った。

「うげっ⁈」

 貧血少年はあっけなくひっくり返った。

 彼女は何も言わず、丘をぶち壊す勢いで、下っていった。

 あのオリンピック選手だって目じゃないその丘下り(はしり)は……。

 海山双葉、その人に間違いなかった……。


 月曜日。

 2時間目の途中で登校した牙は、休み時間ごとに双葉と話そうとした。

 しかし、双葉は牙が声をかける前に教室から姿を消し、追いかける牙を振り切り、始業のチャイム間際にならないと教室に戻ってこない。

 結局、何も話せぬまま、放課後になってしまった。

「きりーつ、礼!」

 下校オーケーになると、双葉は背負った緑色のリュックサックと共に、いつものごとく━━しかし自己ベストが出そうな勢いで、下校開始した。

「双葉さん‼︎」

「赤羽、おまえ掃除当番……‼︎」

 というクラスメートの声を振り切って、牙は彼女の後を追った。

 いつもの牙からは想像できないスピードだった。間違いなし。自己新記録だ。

 だが、海山双葉恐るべし! もしかして光よりも速いんじゃないかという勢いで走り、階段も全段飛ばしちゃってそうな程の鮮やかさで駆け下りていく。

「双葉さん!!」

 牙は涙した。

 もう彼女には手が届かないのだろうか?

 このまま彼女は星になってしまうのだろうか……?

 ━━星は、下駄箱前にいた。

「ぜいぜい……ふっ、双葉さん……!!」

 双葉の下駄箱から、これでもかってくらいハートのシールのついた封筒が飛び出し、昇降口中に溢れていた。

 彼女はそれに足止めされていたようだ。

 海山双葉新伝説:下駄箱ラブレター事件‼︎

 あの冷血双葉が実はモテモテ⁈ しかも、本人の驚いた様子からすると、これって今日が初めて? 一体なぜ……?

 しかしホームズを呼んでいる暇はなかった。彼女がブルーでスポーティでおしゃれなシューズ履いてまた走り出したからだ。

「双葉さん待って‼︎」

 牙もデパートの特売で母親が買ってきたブラック運動靴に履き替えて、彼女を追った。

 目から炎が出るものなら、散乱したままの手紙の群れを燃やしつくしたいと思いつつ。

 校庭横切った双葉は、速くも第3コーナー(?)を曲がって、太陽学園名物「嵐の下り坂(⁈)に入った。

 牙は泣きながら、校門を目指した。

 双葉、もうじき下り坂を制覇‼︎

 このまま太陽公園突っ切って、後続(牙)を振り切るか⁈

 牙、それでもいつもからは考えられないスピード(ブースト・オン)で、下り坂を━━転げ落ちた。

「うわぁああああああっ⁈」

 宇宙中響き渡るような悲鳴を上げながら、土を蹴飛ばして、その辺の草なぎ倒して、木の壁にぶち当たって、動かなくなる。

 コーナぁーアウト!

「あぁ双葉さぁん」

 だめだ、この分じゃ双葉はもうゴール(帰宅)しているかもしれない。

「きゅうぅぅ」

 牙はそのまま気絶して、このレース、リタイアした……。


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