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シークレット・ブラッド  作者: うさぎさん⭐︎
【アンコール】 デイダーク・エコー

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40/42

②ラブソング〜雪夜の奇跡

 

 テレビから伝わるニュースが、「今夜は雪になるでしょう」と告げている。

 牙が、リモコンでチャンネルを変えようとしたとき。

「ね〜、牙。なんか食べるものない?」

 上から美紅が降りてきた。

「また? ダイエットはどうしたんだよ」

「ん〜。骨でも、肉でも、なんでもいいから!」

「はぁ? ねーちゃん、犬でも飼ってるの?」

「たとえよ。た・と・え!」

 美紅が、プリティイエティー立花に、目をやる。

 赤羽家に居座り、家計を圧迫させる立花は、今日も、マシュマロを頬張っていた。しかも、カフェオレ片手に本を読みながらだ。

「立花ちゃん、読書中のとこ悪いけど、マシュマロ分けてくれない?」

「……はーい?」

「いや、だから、マシュマロ」

「あぁ」

 本から目を移し、

「どうぞ」

 立花は、袋を放った。

「あ。あら、よ!」

 ダンス気味にキャッチし、美紅は訊いた。

「何、読んでるの?」


「魔術書ですわ」


「はぁ?」

 首を傾げ、美紅は出て言った。


 その日の夜。

 牙が自分の部屋の窓から外を見ると、

「雪だ!」

 雪が降っていた。

 嬉しくて外に出ると、庭の木陰に誰か、いる。

「ねーちゃん?」

 女の人っぽい影だった。

「……せ、聖魔さま?」

 立花の声だった。

「なんだ、り……」

「っき、きちゃダメぇ!」

「え? なんで」

「わたくし、いま、その……

 は、裸なんです!」

「裸? なんだ、いつも、裸じゃん」

 気にせず、牙は歩を進めた。


 真っ裸の女の子がそこにいた。

「な、な……!」

「やん、聖魔さま〜〜〜!」

 胸を両腕で隠し、お約束に長い髪が大事なとこを隠していたが……。

「ぶわぁぁぁ‼︎」

 鼻血を滝のように噴いて、牙が気絶した。


「……もうしわけありませんでした」

 リビングで、美紅のギャル服を着た女の子が、謝る。

「その声、その喋り方……本当に立花さんみたいな??」

「立花本人ですわ」

 人間の女の子だった。外見は、15〜16歳くらいか。

「い、一体どうして、」

 ティッシュを大量に鼻に詰めた牙が言う。

 吸血モードになりそうなのを、必死に抑えている。

「わたくし、もともとは、ウェアウルフやグリフォンと同じく、ポップ様のお供でした。

 しかし、銀次の呪いであんな姿にされていました。

 でも、めげずに12年、独学で、人間に戻る方法を探していたのです」

「へぇ、それはすごいわね!」

 美紅が目を輝かす。

「どっかのワがつく誰かにも、見習ってほしいわ」

「だーかーらー、なんで、ねーちゃんはそう……う”」

 牙が口を抑える。

 その手の隙間から、白い牙が見え━━そなところで、牙はダッシュして、家を出て行った。

「あ、聖魔様⁈」


 少年が目を開くと……

 そこに、濁った血のような瞳。

 口端くちはから、鋭い牙が覗く。

「ハーハーハー! ついにオレの登場だぜぃ! 今日のハニーは、どこかなどこかな……って、なんだこの貧血感……」

 息切れしながら、獲物を探す。

「あ、赤羽くん?」

 目の前から、双葉と喜美枝が仲良くやってくる。

「牙くん?」

「小娘たちに構ってる暇なし!」

 牙は、二人の横を駆け抜ける。

「ま、待て! 赤羽‼︎」

 踵を返そうとする双葉。

 それを、喜美枝が腕を取って制する。

「ちょと、双葉! ミクに逢わせるって約束は?」

「うん。こんな雪の日じゃなくても……ね、帰ろう」

 と、二人の横を誰かが通り抜けて行った。

「あれ?」

 双葉が首を傾げる。  

 流行りのギャル服を着た、年下? の女の子だった。


「聖魔様?」

 男の首に齧りついた牙を見て、立花の足が止まった。

 牙がフリーズした。

 見る見る、顔が青ざめる。

 見開かれた瞳が瞬き、黒い、いつもの目に戻る。

「み、見ないで……!」

 牙はいきなり、逃げ出した。

 

 トラウマが蘇る。

 小学生の時の両思いだった、あの子。

 噛みついてしまった、親友。

 黒板に書かれた、忘れたい文字。

「あ……」

 牙は転んだ。

 瞳から、涙が溢れる。

「聖魔様……」

 立花の声が近づいてくる。

 牙は両手で耳を塞ぎ、目を硬く閉じた。

「どうなさいましたの?」

 立花が、倒れたままの牙の前にしゃがむ。

「? だって……気持ち悪くないの? 怖くないの?」

 恐る恐る座り直した牙に、

「まさか! ポップ様ので慣れてますわ!」

 満面の笑みを浮かべる、立花。

 無垢な笑みだった。

 その笑顔に、牙は、みとれた。

 

 二人に、優しく、雪が降っていた。












 








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