8 解呪なるか
「痛ッ‼︎」
グールに血を吸われている。
美紅は思う。
(わからない。これが、愛なの?)
でも。
気づけば、何度も、この<グール>に助けられてきた。
「ググググ、グググググ?」
「『すみません、俺、吸いすぎました?』」
「い、いや、大丈夫、私、増血体質だから……」
「若木?」
牙が言う。
「……戻らないね」
「ググググ」
「『ほんとだ』」
《ふん》
「じゃ、ねーちゃん、吸うしか……」
「ええぇ〜やだよ〜。
男の血なんか、吸いたくない!」
「美紅!」
牙が美紅の頬を叩く。
「美紅ねー(ちゃん)。それは、ないだろ⁈」
怒りに目が染まっている。
「牙……あんた、知ってるっしょ?
男の血を吸うと……私……」
「だからどうした? 僕の友達を━━美紅ねーのために、こんな姿にまでなったこいつを、見捨てるのかっ!」
「牙……」
美紅がグールを見る。
グールが美紅を見つめている。
「しかたない、吸うわよ!」
「グ、グググ……ググググググ……」
「『痛くしないでくださいね。俺、実は噛まれると……』」
美紅は着ていたベビドンコートを脱ぎ捨てる。
チャイナ服は置いてきた。
いまは、ミニドレスにコルセット。
髪をハーフツインに。
そして、いつもの厚底ブーツで、グールに歩み寄る。
「男なんて考えられないど、仕方ない。
許して、スウィーティ」
美紅は半ば強引にグールの体を傾け、首筋に牙を立てた!
「グググ…いやだぁぁぁぁ‼︎ ごめんなさ、やっぱ噛まれるのダメぇぇっぇ!!!」
途中から、少女の声になる。
双葉は落涙すさまじく、泣きじゃくった。
「成功⁈」
牙の顔が明るくなる。
「赤羽……」
だが、なぜか、左手だけ、グールのときのまま、鋭い爪が生えている。
「どういうことだ?」
《ざんねーん。愛が足りなかったみたいだよーん》
「そ、そんな、俺はこんなに美紅さんを」
《君、諦めなさい、片恋だ》
「かタコ??」
「若木……」
つらそうに、牙が見ている。
《完全封印には愛が足りないよーん。ざまぁ!》
「とーちゃん! じゃあまた泣いたら、どうなるんだ? この子の体質はかくかくしかじかで」
《ふむ。
グールにまたなるね》
「そんな」
《奇跡的その少女の姿の時は、左手以外はちゃんと解呪されたよーん》
「左手以外?」
双葉は囁いた。
「あの、赤羽……見ないふりしてたけど、美紅さんが……」
「あぁ、ねーちゃんは、男の血を吸うと、急性ダンス中毒になるんだ」
「な……」
美紅の急性ダンス中毒。それは……別名<YXZ>。
①Y字上戸。
「ヒャッハー!!!」
テンション・アルティメット爆上がり!
両手をYの字に広げ、
「ヒャッハー!!!」状態(Y‼︎)
②X上戸。
まるで、ドジョウすくい。(X‼︎)
「ヒャッホー!」
③Z上戸。天空描画モード。
「キャツハー!」(Z‼︎)
「み、美紅さん……」
双葉、泣きそう。
「な、泣くな、若木!」
「だって、俺の上行くよ、これ」
「?」
「赤羽、仲良くなったら教えるって言った、泣ける方法があるって言ったの、覚えてる?」
「おう」
「実は……」
双葉が口元を牙に近づける。
牙はさりげ、赤くなる。
「え〜〜〜?! くまのぬいぐるみと踊ると、秒で泣ける〜〜〜⁉︎」
「あぁ、ばらしてんじゃねー!」
「どゆこと??」
「だーかーらー。ぬいぐるみを<青空園>でもらったんだ。一緒に踊ると、みんなのことを思い出すんだよ」
「変なのー」
「あぁ⁈ てめーみたいな、二重人吸血鬼には言われたかない!」
「そうかな?? て、あれ? くまのぬいぐるみって、どこかで見たような??」
「……みなさん、キャラ濃すぎですわ」
立花が呟いた。




