6 闇夜の子供にご用心?
「はぁ」
ヴァンパイア・アイズの最新巻を読みえた牙は、いきなり、思いっきり髪を掻き乱した。
「あー‼︎ 僕、なんで、あんなこと言っちゃったんだろう……」
<やめろ、ねーちゃん! この子は、僕の、僕の大切な……>
<僕の大切な、女の子なんだぁぁぁっぁ>
「最悪! 最悪! 特上(?)最悪‼︎」
ごろごろ床の上を転げ回る。
「だ、だいたい、若木も若木だ!」
あぐら組む。
「ねーちゃんがいいとか、いみふ!」
拳で床をどんどん叩く。
美桜さんに怒られそうな光景だ。
「双葉さんの姿で、僕のベッドに上ったり、双葉さんの姿で、吸血版ねーちゃんといちゃいちゃ(?)したり…」
牙は叫んだ。
「お前のアイデンティティはどうなってるんだ⁈」
床に横向きに寝、涙を流す。
「ッ……、僕は、どうなってるんだ??
若木が双葉さんで、双葉さんにはとっくににフラれて、
僕たちは━━いいダチのはずなのに……」
***
そいつは、高層ビルの上にいた。
屋上の手すりに腰かけている。
銀の髪と、白いマントが風に舞う。
「ふん」
手元の写真に目を落とす。
「これが奴の……」
どこからか取り出した、赤い薔薇を顔に近づける。
甘い匂いに、そいつは笑んだ。
***
「はぁ」
まだしつこく、ため息攻撃かます、牙。
だれかいたら、イライラするの必死だ。
━━予告もなく、窓ガラスが割れた。
「は、はい?」
自分の部屋の窓辺から、見知らぬ影が侵入してくる!
「な、な⁈」
床に散らばった窓ガラスの破片も気にせず、牙に近づいてくる。
「おまえが、シークレット・ブラッドの血を引く者か」
「え? シ、シークレット・ブラッドって、あの、伝説の吸血鬼の?」
そいつが片手を上げ……
「ま、まって、君は僕に恨みでもあるの? だとしても、これ以上の破壊はマズい。修理代、かーちゃんに請求される!」
牙は迷いながら、部屋を飛び出す。
たった今閃いた、階段転がりで、下り着段をクリアする。
姉は大学。母はパートで居ななかった。
侵入者は、部屋の外までは追わず、窓からジャンプした。
(どうしよう)
胸が不安に騒ぐ。野性の勘が告げていた。
(僕じゃ、勝てない……かも)
脳裏に誰かの大きな背中がよぎった。
(?)
とらえどころもなく、消える。
「……赤羽?」
床磨いたり、手すり拭いたり、病院清掃をしていた若木の手が止まる。
第六感的な何かが、知らせている。
「赤羽が危ない!」
お決まりの太陽公園の夜。
駆けつけた若木は見た。
ボロ雑巾のように倒れている牙を。
背中には、なぜか、赤い薔薇が一輪刺さっている……。
「どゆこと??」
気になったが、薔薇に構っている暇はなかった。
「あ、あかばね、おい、赤羽‼︎ し、死ぬな……‼︎」
若木の頬を、一筋の涙が伝う。
瞬く間もなく、双葉に変わる。
「おまえ、変態吸血鬼だけど、いい奴だったのに‼︎」
「……だれが、変態だぁぁぁぁぁ‼︎」
死の淵から、牙がカムバックしてきた。
「わ、若木……子供に気をつけろ。
ねーちゃんと、かーちゃんを、守ってくれ……ぐふ」
牙は気絶した。
「こ、子供……?」




