5 愛が君のアンサーかもよ?
「ハ……」
夜を染める、高笑いが響く。
「ハーハーハッハ! 目覚めたぜ〜‼︎
やっとキタキタ、貴重な出番だぜー‼︎」
牙は赤い目を、双葉に向けた。
「その小娘は、オレの……」
「はん? なによ、弟! スウィーティハントの邪魔をする気⁈」
双葉が「?」顔。
吸血鬼モード(きゅーちゃん)なのにまさか? 正体を??
「オレの……。
オレの、ハントをいつも邪魔する、宿敵小娘なのだ‼︎」
なーんだ、と胸を撫で下ろす双葉。
「小娘、ハニーをどこに隠した?」
「何言ってる? 弟」
双葉は割り込んだ。
「ちょ、待てよ!」
「貴様、邪魔するなら、貴様から消してやる。
━━なんだか、《《それが君のアンサー》》という声が、オレの内から聞こえる?? なんだこのフレーズは? 」
「は??ん 何言ってんの? あんた、また変な深夜番組の見すぎじゃない?
やれるもんならやってみなさい!
ちなみに、スウィーティには指一本触れさせないわ!
ほーらほらほら、私の血でも吸ってみるかしら?」
「何を言ってる、年増!
女の血なんぞ吸ったら、死んでしまうわ!」
美紅の目が怒りでギンギラリンに煌めく。
「誰が年増じゃ! 好き嫌いばっかしてるから、よわっちなのよ!」
「な、だ、誰が弱い? だーれーがー、よわーいー? 誰が弱いだと⁈」
<きゅーちゃん>の拳がものすごく震える。
声も震えまくっている。
じだんだも踏んでいる。
その牙が折れそうなくらい。歯軋りも……以下略。
「ふふん♪ まだまだ、お子様だこと」
「き、貴様だとて、男に噛みついたら、イッテマウくせに!」
「うげ、覚えてたの⁈」
美紅が汗をかきつつ、たじろぐ。
「あぁ。もちろんじゃい! あれは、忘れられん!」
「忘れろ。忘れて〜ぇ! 乙女の秘密よ〜〜〜!」
双葉は相変わらず、不思議モード。
「?? あの、そろそろ、姉弟喧嘩はやめろよ。
俺、初めての献血のせいか、ちょ気分悪くて……
そろそろ、お、おひらきに……」
言ってる側から、双葉は限界に達し、気絶した。
「あぁ。スウィーティ!」
美紅が、慌てて駆け寄る。
「なんてこと!」
心配で真っ青な顔になる美紅。
「ふん。無様だな、小娘」
「なにいってんの、あんた!」
頭に冷たい感触。
双葉は、目を覚ました。
「ここは……?」
なぜか、頭に保冷まくらを載せられている。
そして、服はサイズの合わないパジャマ。
双葉は布団の中にいた。
「どこ?」
起きあがろうとすると、
「まだ、寝てなきゃダメよ!」
いつものメガネ美紅が、ドアを開けて、入ってくる。
「ほら,おかゆ。あ〜……ん」
「あ〜んって美紅さん? 俺………私、別に熱があるとかじゃ……」
「いいから! あ〜ん」
「は、はい……。美紅さんって,てんねん?」
どうやら、ここは美紅の部屋らしい。
「大丈夫よ、すぐ良くなるわよ」
「ふふっ……」
双葉は笑った。
泣きそうなのを堪える。
「美紅さんって、優しいんですね……」
おかゆを食べさせてもらいながら、<青空園>にいた頃のことを、ふと思い出す。
自分は捨て子で、施設で育った。
青空園は大好きだったけど、ときどき感じていたもの。
ホンモノの家族への飢え。
捨て子の劣等感。……
「あ〜ん♡ どう、おいしい?」
「おいしいです」
この人とだったら…もしかして。
幸せな家庭を築けるかもしれない……。本能的にそう思った。
「なんだか元気出てきましたよ、美紅さん」
「よかった。スウィーティまでいなくなっちゃったら、どうしようかと思った……」
美紅が涙ぐみながら、笑う。
その姿に痛みを感じた。
(美紅さんにも、いろいろあるのかもしれない)




